第3話 初戦闘
俺は息を荒くしながら辺りを見渡して言う。
「オイ、今すぐ逃げろ! できる限り遠くに!」
「は、はい!」
俺の言葉に姉らしき女性はそう言うと、妹らしき少女を抱えて走る。
俺は逃げて走った姉妹を見て呟く。
「何とか、間に合ったな……」
俺はそう言うと脳内にBGMが鳴って視界にウィンドウが表示する。
〈能力解放:スタミナ強化小・スタミナ回復小・俊敏強化小〉
視界に表示されたウィンドウは気になるが、今は目の前にいる敵を気にしなくては。
そう思いながら倶利伽羅を構えると、緑色の肌をした小鬼・ゴブリンがこん棒を握りながら走る。
ゴブリンは下卑た笑みを浮かべながら叫ぶ。
「邪魔スル奴ハブッ殺ス!」
「殺セバ女ヲ一人貰エル!」
ゴブリンはそう叫びながら俺に襲い掛かる。
俺はその叫びに嫌気を感じつつ、倶利伽羅を強く握って想像する。
想像するのはブレイドクロニクルのAスキル【ソニックスラッシュ】のモーションで、SPを込めて集中する。
ゴブリンがこん棒の間合いに入り、俺は即座に横一文字切りを放つ。
襲い掛かってきたゴブリンの体が上下真っ二つになって絶命する。
すると脳内にBGMが鳴って視界にウィンドウが表示する。
〈能力解放:剣術向上小・斬撃強化小・攻撃力強化小・初級片手剣使い〉
俺はウィンドウを少し見て考える。
どうやら能力樹は特定の行動を行えば自動的に解放されるのだろう。
最初の方も俺が急いで走ったから解放されたのだろう。
そう思っていると、鉄塊が取り付けた杖を持つゴブリンコマンダーが俺をさしながら叫ぶ。
「オ前ラ、一斉ニ掛カレ!」
ゴブリンコマンダーはそう叫ぶと、ゴブリン達はこん棒を握って一斉に襲い掛かる。
数に攻めてきて、連撃や広範囲のスキルを持っていない。
だけど俺は襲い掛かるゴブリン達に俱利伽羅を向け、魔力を込めさせる。
すると倶利伽羅から回路が浮かび上がり、片手剣から小銃に変形する。
俺が愛用している降魔シリーズは魔力を込めれば、どんな武器にもなれる変形機構がある。
例えば小銃モードは魔力を込められた弾丸を放ち、片手剣は近接戦闘に偏っている。
俱利伽羅を襲い掛かるゴブリンに向け、頭部を狙って引き金を引く。
魔力が込められた弾丸はゴブリンの眉間を貫き、俺は一体ずつ狙いながら撃つ。
ある程度数が少なくなれば、片手剣に戻して【ソニックスラッシュ】で切り捨てる。
ゴブリンを一通り片付けたから、残りはゴブリンコマンダーだけだ。
するとゴブリンコマンダーは鉄塊の杖を握りながら叫ぶ。
「オ前タダノ冒険者ジャナイ。一体何者ダ!」
俺はそれを聞いて少し頬を搔きながら答える。
「えっと……通りすがりの旅人だ」
俺は少し頬を掻くが、しばらくして仮〇〇ダーデ○○ドのキメ台詞を借りて言う。
するとさっきのセリフを聞いたゴブリンコマンダーは青筋を立てて言う。
「コノゴブラン様ニフザケタ事ヲヌカセルトハナ!」
ゴブランはそう言うと鉄塊を光らせ、数多の鉄の矢を生み出して放つ。
俺は鉄の矢に当たらない様に全速力で回避する。
鉄の矢は俺に向かって放たれるが、追尾せずに地面や木に刺さる。
あのアイテムは鉱石系のアイテムを放つことができるだけで、特殊なエンチャントを付与するのは出来ないはずだ。
俺はそう思いながら逃走し、再び俱利伽羅を片手剣から小銃に変え、走りながらゴブランに向ける。
ゲームで走りながら撃つことはできるが、あまりリアルで運動したことはないからできるかどうか分からない。
俺はそう思いながら、ゴブランに狙いを定めて引き金を引く。
すると銃口から弾丸が放ってゴブランの右肩を貫く。
ゴブランは右肩を抑え、俺を見て鋭く睨んで叫ぶ。
「人間ノガキメ! 我ガ手下ヲ倒シタダケデハナク、コノ我ニ怪我ヲサセタコトヲ後悔サセテヤロウ!」
ゴブランはそう叫ぶと杖を強く握り、俺に向けて詠唱する。
『鉄よ、剣と化して敵を切り裂け! 鉄剣錬成!』
詠唱し終えると地面から鉄の剣が生み出され、俺に向かって襲い掛かる。
俺は倶利伽羅を小銃から片手剣に変え、襲い掛かってくる鉄の剣を弾き飛ばす。
鉄の剣は縦に回転しながら弾かれるが、急に空中でピタリと止まり、再び真っ直ぐ襲い掛かる。
ブレイドクロニクルは鉄の剣を生み出して、真っ直ぐ進んで攻撃する魔法だった。
だけど現実だと自由に操ることが出来るなんて……!
予想外な厄介さに感じつつ、倶利伽羅を強く握って再び鉄の剣を弾き飛ばそうとする。
しかし今度は倶利伽羅の刃と打ち合い、刃同士ぶつかり合って火花が散る。
鉄の剣と何度も打ち合っているが、鉄の剣は多少ひび割れが起きている。
倶利伽羅は降魔剣だから武器破壊される可能性は低いが、鉄の剣はゲームだと耐久値が中々高い。
現実だと鉄は中々硬いから、破壊するのは中々難しいだろう。
俺はそう思いながら鉄の剣と打ち合っていると、突如太ももから灼熱と濡れた何かを感じ始めた。
「ウゥ……いきなりなんだ?」
俺はそう言いながら太ももを見ると、鉄の矢で深々と刺されて出血していた。
太ももからやってくる傷口の灼熱と激痛、熱が抜かれていく感覚に膝を地面についてしまう。
ウゥ……痛い、苦しい、血が流れて膝を地面に屈してしまう。
俺はそう思いながらなんとか立ち上がろうとするが、出血していることで中々立ち上がる事は出来なかった。
俺は痛みで苦しんでいると、ゴブランが俺の前まで近づいて、腰につけてサーベルを俺の首に当てて言う。
「バカメ、貴様ガ鉄剣錬成デ生ミ出シタ鉄ノ剣ト打チ合ウ間ニ、太モモニ向ケテ鉄ノ矢を食ラワセル。我ノ手ノ内ダナ」
ゴブランはそう言うとサーベルをかざして振り下ろそうとする。
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