第22話 イレギュラー
俺は突然の轟音と振動に驚いて叫ぶ。
「何だ、いきなり轟音が……!」
「リョーマさん! 奥から聞こえました!」
俺の叫びにマリアは奥に指さしながら叫ぶ。
さっきまで顔を赤くしていたが、今は少し青白く緊張していた。
いきなりの轟音に驚いてしまったが、俺は闇夜の洞窟に入った時に思い出す。
『マァ、ダークウルフの上位種を倒せば謝礼金の金貨十枚を手に入れるぜ?』
テンゲンが言った言葉を思い出し、俺はマリアにテンゲンが言った言葉を伝える。
「さっきの轟音と振動は集団統括者が言ってたダークウルフの上位種かもしれない! 別の志願者がダークウルフの上位種に出会ったんだ!」
「なるほど……確かに少し聞きましたが、ダークウルフの上位種は闇系の魔法を扱うらしいです」
俺の言葉にマリアは頷きつつ、ダークウルフの上位種について説明する。
なるほど、さっきの轟音と振動は闇系の魔法の影響なのか?
だけどブレイドクロニクルにある闇系の魔法は拘束や影で攻撃するのが特徴で、爆発を起こす魔法はなかったはず……。
そう思いながら考えていると、再び轟音と振動が起き出す。
ッ……! 今は考えているより、一体どうなっているか確認しないと!
俺はそう思いながらマリアに呼びかける。
「とにかく、今は轟音と振動が起きている方に向かうぞ! このまま考えても分からないし、もしかしたらケガ人がいるかも知れないから急ごう!」
「ハイ!」
俺は嫌な予感を感じながら言うと、マリアはそう言って頷く。
何が起きるか分からないが、とにかく再び激烈な戦闘になるのは間違いないだろう。
俺はそう思いながらマリアと共に轟音が起きた所に向かって走り出す。
もしもの状況に備え、ダークウルフについて走りながら振り返ろう。
ブレイドクロニクルにおけるダークウルフは集団戦闘を得意としており、初心者だとかなり苦戦してしまう。
だけど行動パターンを覚えれば、Lv10代には丁度いい獲物なる。
ダークウルフの上位種・マルコシアスと呼ばれる魔物がいて、そいつは口から青い業火を放つから闇系の魔法とは関係ないと思うぞ?
もしかしてブレイドクロニクルとは別の上位種だろうか? そうすれば闇系の魔法を使えることになるだろう。
そう思いながら走っていると大きく広い場所に着いた。
もしかして闇夜の洞窟の中で広い場所だろうか? 大型動物が悠々と立てることが出来そうだな。
そう思っていると試験参加者の一人である男が剣を構えながら叫ぶ。
「おい、あっちに行ったぞ! 急いで詠唱しろ!」
「分かっているけど、素早くて全然狙えないの!」
男の言葉に杖を持った女は焦りを見せながら叫ぶ。
剣を構える男があっちと言うのは見当たらないが、もしかしてかなり素早いのだろう。
そう思いながら俺は腰に下げてある倶利伽羅を、マリアは背中に背負っているハルバードを構える。
杖を持った女が全然狙えずにいたから、死角から襲い掛かってもおかしくないはずだ。
そう思いながら構えていると、杖を持った女が俺とマリアに向けて叫ぶ。
「二人とも、後ろ!」
女の言葉に俺は瞬時に察し、倶利伽羅を握ったままマリアを突き飛ばす。
マリアは突然突き飛ばされたことに驚く。
「キャァ!?」
マリアはそう叫び、さっきいた場所から離れた所で尻もちをついてしまう。
いきなり突き飛ばしてすまないが、今はこうしないと危険だ!
そう思いながら振り向く。
するとダークウルフとは数倍の巨体をした狼が、大剣に匹敵するほどの爪を振り下ろそうとする。
俺はそれを見てすぐ足に力を込め、襲い掛かる巨狼の爪を横でギリギリ回避する。
回避した時に巨狼の爪が胸当てにかすり、その時に火花が飛び散り出す。
俺はそれを見て顔を青ざめながら冷や汗を流す。
粗鉄の胸当てを買って装備していなかったら、かすったとは言え胸を裂かれる恐れがあったな。
俺はそう思いながら巨狼の爪をギリギリ回避し、無理に回避した反動で倒れてしまう。
巨狼は爪を振り下ろしたまま着地し、数回スキップしてから振り向く。
俺はさっき攻撃してきた巨狼の姿を見て声を失う。
「ナッ……!?」
なんせ目の前に映る巨狼はブレイドクロニクルに出てくるマルコシアスより大きく、口から闇の瘴気をこぼしていた。
***
遠く見える瞳を通じて、今の状況を見たギルド職員は慌ててしまう。
「どういうことだ!? 我々が用意したのは確かダークウルフの上位種・マルコシアスだったはずだぞ!」
「だが今いるのはマルコシアスの変異種・ジェヴォーダン・ベートだぞ!」
「今ココに勇者がいたとしても、この場にいる参加者を守りながら倒すのは中々難しいぞ!」
ギルド職員はそう叫びながら、映っているジェヴォーダン・ベートについてどうするのか話し合っている。
とてつもない慌てように対し、テンゲンはあごに手を当てながら考える。
(闇夜の洞窟にはマルコシアスが好む羊がが少なく、代わりとして鉱石や昆虫などを食したことで変異したのか? これは少しイレギュラーな事態になってしまったな……)
テンゲンはそう思いながら、慌てだす職員に向けて言う。
「落ち着け、確かにイレギュラーだがこの状況を覆すのが勇者だ。もしもの時に備えて光系の上位魔法を発動させる準備をしておけ」
「「ハイ、分かりました!」」
テンゲンは厳かに言うと、ギルド職員はそう答えると持ち場に戻る。
職員たちがもしもの時に備えて光系の上位魔法の魔刻巻物に座標設定している様子に、テンゲンの隣にいたサクヤはテンゲンに質問する。
「あの、本当に大丈夫ですか? 仮に勇者がいても、ギフトが解放されない可能もありますよ?」
冷静に質問するサクヤにテンゲンは苦笑いをしながら言う。
「この状況で質問するなんて、ある意味すごいなぁ……。マァ、ギフトが解放されなかろうが、最後の勇者が現れる事によって世界が救われるんだ」
最初は苦笑いをしていたテンゲンは雰囲気がガラリと変わり、緊急事態な状況に対し勇者候補である竜馬が同するのか見届ける。
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