第20話 襲った理由
俺はマリアの話を一通り聞き終え、額に手を当てながら言う。
「これまでの状況を一通り聞いたが、人の善意を嘲笑うような行いだな……」
俺はそう言うとマリアは静かにうなずく。
直接騙されたから精神的にかなりダメージを受けてしまったんだろう。
そう思うとマリアはいきなりうとうとしだす。
俺はマリアの肩を支えて質問する。
「大丈夫か? いきなりうとうとしてきたが……」
「実はアルトさんを眠らせた時に、変な煙を少し受けてしまって……」
マリアはそう答え、それを聞いた俺は「アッ!?」とつぶやく。
そう言えば睡魔の吐息の魔刻巻物を使った時、ちょっとマリアにかかってしまったような……。
さっきの状況を思い出して俺は頭を下げて謝罪する。
「すまん! 少しとはいえ、状態異常をかけてしまって!」
「いえ、大丈夫ですよ。でも……少し眠らせてください」
「分かった、しっかり守るために結界を張らせてもらう」
俺の謝罪にマリアは優しく答えつつ頼み、俺はその他の身に快くうなずく。
マリアを石壁によらせてから手をかざして詠唱する。
『火よ。弱き者を守る結界を生みだせ! 火熱の結界!』
詠唱し終えるとマリアの周りに火熱の結界に包まれ、しばらくの間魔物が寄ってこずに済めるな。
そう思いながら、後ろにいる三人の方に向き直る。
アルトとクロノは睡魔の吐息を受けてからずっと寝息を立てながら寝ており、逆に槍を持った男・クレイは体を小刻みに震えながら気絶していた。
さて、マリアの話は聞き終えたし、次はこいつ等から尋問しないとな。
まるでスパイかFBIみたいなことしているな~と思いながら、倒れている三人に向けて詠唱する。
『鉄よ。目の前にいる者を拘束せよ! 拘束する鎖!』
詠唱し終えると地面から鎖が生みだされ、襲い掛かってきた三人を拘束した。
もちろん、闇夜の洞窟の天井につなげて宙に吊らしている。
このまま見下ろしても首が痛そうだし、地味に面倒くさそうだ。
だったら宙に吊らして面と向かって話したほうがいいだろう。
そう思っているとアルトがよだれを垂らしながら起き出す。
「ウァ、ココ……って! なんで拘束された上に宙吊りにされてんだ!?」
アルトはそう叫びながら驚き、俺はあごに手を当てながら考える。
やっぱり誰でも宙吊りにされたら驚くよな。だけど安心するのはまだ先だ。
そう思っているとクロノとクレイが起き出す。
「ウゥ……って、なんじゃこりゃぁ!? 宙吊りにされてやがる!」
「いてて、いきなり何言って……って、本当に宙吊りされてやがる!?」
クロノは目覚めてすぐ今の自分の姿を見て驚き、クレイはそれを聞いて最初は疑っていたが、今の自分の姿を見て本当だと信じた。
さて、どうして無の氏族以外の種族を殺そうとする理由を聞かせてもらおうか。
俺はそう思いながら俱利伽羅を抜刀し、宙吊りになっている三人に刃を向けて言う。
「さて、お前らにはどうして無の氏族以外の種族を殺そうとした理由を話してもらおうか」
俺は倶利伽羅を三人に向けながら言うと、クロノは怒りで顔を赤くして叫ぶ。
「ふざけるな、異種族を守る蛮族め! 貴様のような蛮族はルシエド様から罰を受ける事になるぞ!」
「ルシエド?」
俺はクロノの叫びに首を傾げ、クロノが言うルシエドとやらなんやらさっぱりわからん。
やっぱりこの世界についてあまり知らないし、冒険者試験を終えたらこの世界について調べてみようか。
俺はそう思いながら倶利伽羅をクロノからアルトに向き変え、鋭く睨んで聞く。
「じゃあ、ずっと脂汗を流しているお前に聞く。なんで無の氏族以外の種族を殺そうとした? 早く言わないと耳を切り落とすぞ?」
鋭く睨みながら質問する。
尋問するとはいえ、さすがに拷問するのはあまりしたくないし、できればこの脅しで目的を話してほしい。
そう思っていると、アルトは歪んだ笑みを浮かべながら叫ぶ。
「わ、分かった! 俺らが無の氏族以外の種族を殺そうとした理由を話すから許してくれ!」
「ナッ、貴様! 裏切るというのか!?」
アルトの言葉にクロノは驚愕しながら叫ぶ。
マァ、いきなり裏切られたら驚くのも無理はないだろう。
そう思っているとクロノとクレイはアルトの裏切りに対して、怒り心頭気味で叫ぶ。
「ふざけるな! 我ら素晴らしきルシエド教の教徒なのに、我らの信仰心を侮辱する気か!」
「そうだぞ! 異教徒に命乞いするなんて、ルシエド教を信仰する者として恥ずかしいぞ!」
「ウルセェ、そんな事知るか! 俺はお前らみたいな馬鹿とは違うんだよ!」
クロノとクレイの疑問に対しアルトは鋭く睨みながら叫ぶ。
さっきまで協力していたのに今じゃ醜い言い争いをしているな。
クロノとクレイは狂信者みたいだが、逆にアルトは何かのために協力しているんだろうか?
そう思いながら醜い言い争いを見て呆れ、俺は一旦倶利伽羅を鞘に納刀し、納刀したままアルトに鋭く叩き込む。
アルトは鋭い一撃をもろに受けて叫ぶ。
「ガハッ!?」
「あんまり俺をイラつかせないでくれよ? 次は真剣で切るぞ……!」
俺は醜い言い争いに呆れながらドスの入った声を叫ぶ。
それを聞いたクロノとクレイは青ざめて黙り、アルトはドスの入った声に対して壊れた人形のように頷きだす。
これでまともに話が聞けそうだな。
それにしても俺ってヤクザみたいなドスの入った声を出せるなんて、ある意味すごいな。
我ながらヤクザみたいな声を出したことに驚き、アルトはピンからキリまで異種族を殺そうとした訳を話す。
どうやらルシエド教の上層部が今年の冒険者試験を妨害しようと、元傭兵であるアルトと聖火騎士団の団員であるクロノとクレイが志願者として試験に参加したらしい。
ちなみに何度も言っていたルシエド教はすべてを司る創造主・ルシエドを崇める宗教で、無の氏族以外の種族を見下し、奴隷や殺されても幸せだと思われている。
現にインフェルノ・アガルタ・バミューダには異種族を奴隷として扱っているらしい。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
ちなみに冒険者試験編はもう少し続きます。
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