第13話 喧嘩
すると前から来た男の肩と軽くぶつかってしまった。
ヤベッ、軽くぶつかったとはいえ、こういうのは謝らないといけないな。
そう思いぶつかってしまった男に謝る。
「アッ、すみません」
「アァ……?」
俺は謝ると男は面倒くさそうにしながらにらむ。
ウッ、ぶつかった男が何処か嫌な意味で懐かしい視線で、背筋に悪寒が迸り出す。
ぶつかった男に苦手意識を持つと、相手は鋭く睨みながら叫ぶ。
「ガキが何でこんなところにいるんだよ? ガキは大人しく家に帰れってんだ!」
「アッ……ハイ……」
男は暴言に近い発言に対し、俺は押され気味に答える。
ヤバい……ぶつかった男があのアイツに近くて、まったく反論の余地が出来ない。
このまま相手するのも精神的に疲れるし、早く済ませてあいつから逃げよう。
そう思っていると男は俺の腰にある金貨袋を指さして言う。
「じゃあ、腰にある金全部渡せよ? 慰謝料としてよぉ」
俺はそれを聞いて心の中で驚く。
ハァ!? コイツ何言ってんだ?
その厚かましさやふざけた発言で、元居た世界で俺をいじめてきた先輩の面影が被り、あの時の怒りや憎しみが沸々と沸き上がってくる。
これまでロクな目に合わせられたから、さっきまでの自分に苛立ってくる!
俺はそう思いながら男の手を払いのけて言う。
「ぶつかってしまったことに対して悪かったが、だからって相手に金をせびるのは少々礼儀知らずじゃないか?」
俺は男を鋭く睨みながら言う。
きっちり言えるか分からなかったけど、多少勇気を出せた方がよさそうだ。
そう思っていると男はそれを聞いて叫ぶ。
「ハァ!? ガキが何口答えしてんだ!」
「俺が言ったのは口答えじゃない。心に思ったことを言っただけだ」
俺は男の言葉にツッコミ、都合の良すぎる頭に呆れながら簡易宿泊所へと向かう。
周りにいる人たちは俺の反論を聞いて感心したり、男の言葉に呆れたりしていた。
すると赤っ恥をさらした男は腰にある黒ずんだ斧を抜いて叫ぶ。
「クソガキ、俺を赤っ恥をさらしやがって! この場で有り金全部奪ってやる!」
「ハァ!?」
俺は男の言葉と抜いた黒ずんだ斧を見て驚く。
コイツ、自分の思い通りにならないと知ると武器を使って襲い掛かるのか!? お前は山賊か何かかよ!
俺は男の行動にドン引きするが、男は俺に向かって黒ずんだ斧を構える。
って、今は攻撃に集中しないとこっちがやられる! 急いで撃退しないと!
俺はそう思いながら倶利伽羅を素早く抜刀し、男が持つ黒ずんだ斧をふせぐ。
黒ずんだ斧の刃と倶利伽羅がぶつかり合うと、斧の刃から爆発が起こる。
「ウワッ!?」
俺はいきなり爆発が起きたことに驚き、爆発をもろに受けない様に即座にバックステップで回避する。
黒ずんだ斧の刃から爆発したのに全然刃こぼれしていなかった。
もしかして武器に何かを仕込んでいるのか?
ブレイドクロニクルだと武器にスロットがあり、特殊効果があるアイテム・宝珠を埋め込めれば能力を発動できる。
しかし武器や宝珠のレアリティによってスロットの数が決まっており、決められたスロット以上の数を生めることはできない。
俺の記憶通りなら男が持っている黒ずんだ斧はジェイソン・アックスで、使用している宝珠は爆裂と修復だったはず……。
ブレイドクロニクルの記憶をたどっていると、男はジェイソン・アックスを構えて襲い掛かる。
クッ、とにかく今はあいつを止めないと!
そう思いながら俱利伽羅を握り構え、男はジェイソン・アックスを鋭く振り下ろす。
最初は慌てていたが、今は冷静になっているから相手の太刀筋を軽く読める!
倶利伽羅を構え、ジェイソン・アックスが右肩を狙って振り下ろされる。
ジェイソン・アックスが右肩に近づいていくと、俺は一気に俱利伽羅を切り上げる。
抜刀術の如く高速の一撃を男の手の甲に峰内で打ち込む。
刃から何かが砕け散る触感を感じ、触感から察するに手の甲の骨が折れたんだろう。
それに男が装備している手甲は木製で出来ているから、容易く壊れてしまったんだろう。
そう思っていると男はジェイソン・アックスを手放し、折れた手の甲を抑えながら叫ぶ。
「ギャァァァ! イッテェェェェ!?」
男はそう叫びながらもだえ苦しむ。
さっき放ったのはAスキル〈猟豹切り〉で、チーター並の抜刀速度を持つスキルだ。
しかも職業が侍だとさっきよりも二倍ほどのスピードアップされるスキルだ。
さっき襲ってきたときに思いつきで一か八かでやってみたが、まさか予想以上に威力が強いなんてな。
これは対人制圧するときに使うスキルにしておこう。理由は予想以上に威力が強いからだ。
俺は〈猟豹切り〉の威力に驚きつつ倶利伽羅を収め、泣きわめく男を背にしてこの場から去る。
なんか後ろから「ふざけんな!」とか「治療費と慰謝料を渡せ!」と喚いているが、そっちが奪おうとしたのが悪いから仕方ないだろう。
マァ、〈猟豹切り〉の威力を知らずに使った俺も悪いし、元居た世界だと過剰防衛になりそうだな。
俺はそう思いながら簡易宿泊所に向かう。
ぶつかった相手がまさか元居た世界で俺をいじめてきた先輩にそっくりなんて……。
世界にはそっくりさんが数人いるって聞いたが、まさか性根までそっくりな人間がいるんだなぁ。
その後は簡易宿泊所に置かれてある集金箱に宿泊料の銅貨二枚を収め、武器と防具を近くにある机に置いて寝る。
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