第1話 チャオ、現実
俺の名前は草薙竜馬。
MMORPGが大好きな引きこもり歴一年の17歳だ。
えっ、何で高校二年生が自室に引きこもっている上に、ゲームしているかだって?
マァ、俺の事情は少し後にして、相手プレイヤー「Bakara」さんがAスキル【紅蓮乱れ突き】の構えをとる。
俺は即座にゲーム画面を開き、上級片手剣使いから近衛騎士に変え、Gスキル【不動の構え】を発動する。
するとBakaraさんが持つ天使の羽を使った槍・エンジェリックスピアに紅蓮の炎を纏わせ、それを俺に向けて連続の突きを放つ。
しかし連続の突きは難攻不落のような大盾・タイタンシールドに防がれ、俺はスキル使用の後に起きる硬直に備え、腰に差してある片手剣・バイティングテイルを抜く。
すると連撃の突きが治まり、Bakaraさんが数秒硬直する。
俺はそれを見て瞬時に接近し、Aスキル【ソニックキル】を発動して喉笛を掻っ切る。
するとBakaraさんのHPが一気に減っていき、全体の八割まで減る。
それと同時にファンファーレがなり、視界のウィンドウには〈Wain、ドラゴンセイバー!〉と表示されている。
勝利した余韻に浸っていると、Bakaraさんがボイスチャットで称賛してくる。
『対戦してくれてありがとうございましたが、まさかここまで強いなんて思いもしませんでした!』
俺はそれを聞いて頬をほころばせながら、ヘッドフォンのボイス機能をオンにして話す。
『いえ、スキルの使い方や硬直時間を狙えば、だれでもできることですよ』
『いえいえ、僕が【紅蓮乱れ突き】の構えを取った時にゲーム画面を開いていましたよね? アレに何か秘密があるのですか?』
Bakaraさんの質問に、俺はあごに手を当てながら考える。
う~ん、俺のアバター・ドラゴンセイバーのジョブは探究者、いわばペ〇〇ナ3から出ているワイルドに似ており、ゲーム画面を開いて別のジョブに自由に変えれる。
もちろんこういう便利な力には制約があり、ジョブを変えるたびにSPを一割消費・ジョブレベルは共通されないのだ。
こうして強くなったのは引きこもったからだけど、Bakaraさんがどうしているのかはわからない。
俺は失礼かもしれないが、Bakaraさんに少し質問する。
『少し失礼ですが、今は何をしているのですか?』
『エッ?』
するとBakaraさんはそう言いながら驚いていた。
俺はそれを聞いて少し見上げながら後悔する。
そりゃそうなるよなぁ~。
俺もいきなり「ご職業は何ですか?」って聞かれたら怪しむぞ。
やらかした感に頭を悩ませていると、Bakaraさんは少し笑いながら言う。
『アハハ、僕は妻を持つサラリーマンで、休日は妻と一緒にゲームをしているんです』
『ヘェ、そうなんですか』
俺はBakaraさんの返答を聞いて頷く。
今日は休日だから、高校生や社会人が来るんじゃないかって思ったが、まさか既婚者だったとは思いもしなかった。
そう思っていると、Bakaraさんから質問される。
『そういうドラゴンセイバーさんは何をしていますか?』
『俺ですか?』
俺はそれを聞いて首を傾げる。
それと同時に脳裏にトラウマがフラッシュバックして、一瞬お昼に食べたラーメンを吐きそうになってしまう。
しかしここで吐くのは汚いので、必死に吐くのを抑える。
何とかここでリバースせずに済むと、Bakaraさんが心配しながら聞いてくる。
『あの、大丈夫ですか? もしかして聞いてはいけませんでしたか?』
『いえ、少しお昼食べ過ぎただけで、少し事情があって引きこもっているのです』
俺はBakaraさんの心配に大丈夫と言いながら、机の上に置いてあるコーラを飲み干す。
口内の酸っぱさをコーラのシュワシュワで洗い流す。
するとBakaraさんは謝りながら言う。
『本当にすみません、それと急用ができたのでここで下ります』
『そうですか、わかりました。また対戦したりしましょう』
俺はそう言うと、Bakaraさんは笑顔の絵文字をチャットで送ってログアウトした。
俺はそれを見届けてから、椅子から立ち上がって体を伸ばす。
その時ふと考える。
そういえば、レアアイテムを売ろうとしていたな。
俺はそう思い、商業エリアでレアアイテムを売ろうとする。
もちろん、ジョブを商人してから売る。
こうした方が売れる金額が高くなれるんだよ。
俺はレアアイテムを売れるのを待つまで、いったんログアウトしてネットサーフィンする。
そういえば、最近異世界系の作品が多いな、特に転生や転移とか。
次に多いのはハーレムや成り上がりだ。
ハーレムかぁ……俺のような引きこもりには縁がなさそうだな。
少し自傷しながら見ていると、気になるサイトが目に止まり、俺はサイト名をつぶやく。
「ゴートゥイセカイ?」
俺はそう呟きながら怪しいサイトに釘付けになる。
異世界ってあの異世界だよな? まさか異世界に行けるようになったのか?
まさかな……そう思いつつURLをクリックする。
すると画面に表示されたのはファンタジーのイラスト付きサイトであった。
なんというか、怪しさがかなり倍になったな。
俺はそう思いながら、サイトに書かれている説明を読む。
えっと、「ゴートゥイセカイへようこそ! このサービスは、あなたが望む世界に行けるようになる夢のサイトです。下記の項目を選択し、選択した終えたら構築を押して、夢の異世界ライフを楽しんでください!」か……。
一応、下記の項目は舞台・要素・チート能力と書かれている。
マァ、ちょっとした遊び程度にしようと思ったが、本格的だからコーラを少し飲みながら項目を打ち込む。
チート能力は自由に書いて良いとされて、俺はさっきプレイしていたMMORPG・ブレイドクロニクルの能力を持ち込めるように打ち込む。
もちろん、ブレイドクロニクルのゲームデータを添えてだ。
そうして打ち込むこと約三十分でこだわった世界が完成した。
●舞台 中世ヨーロッパ中心
●要素 異種族、魔王軍、勇者、ファンタジー、魔物、魔法、スキル
●チート能力 ブレイドクロニクルのゲームデータ
俺はある程度一通り見たら、構築と書かれているところをクリックする。
しかしクリックしてもうんともすんとも言わない。
やっぱり、これはジョークとして使われているんだろうな。
少しがっかりした気持ちもあるが、小腹が空いてきたから戸棚に置いてあるお菓子でもつまむか。
そう思いながらゲーミングチェアから立ち上がると、突如視界が揺らぎ始めた。
なんだ? もしかして休憩時間を取ってないからか?
俺はそう思いながらベッドにダイブしようとする。
しかし足を滑らしてしまい、机の角目掛けて倒れてしまう。
その時に視界がスローになっていく。
これって死ぬ直前でスローになるやつだよな?
まさか足を滑らせて死ぬなんて、笑える話になりそうだな。
俺はそう思っていると頭が机の角に強くぶつかって、そこから意識を失ってしまう。
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