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やきもち

「今日はありがとね、連」


「こちらこそ、ありがとうだよ松崎さん」


「最初は大翔君の方が頼りになるって思ったけど、違った。本当に頼りになるのは君だったんだね」


「急にどうしたの?拾い食いでもした?」


「してないよ!もしかして最初のこと根に持ってる?」


「少しね...というのは冗談。単純に急に評価を変えるから気になっただけ」


松崎さんは返答を考えているのだろうか、そこから数分返答がない。俺は予習を進めながら、通知を待っているとピロンという音がなる。


「個人的な感覚だけど、君の真剣な表情を見たときに、安心感があったからかな。あの時の君はカッコよかったよ」


「松崎さんも、優し気な表情はカッコよかった」


「普通そこは、カワイイでしょ!!」


俺は思わずその文言に笑ってしまう。急に俺が笑いだしたからだろうか、義妹は俺のことを見つめる。


「お兄ちゃん、どうかしたの?」


「いや、仲良くなったクラスメイトとのやり取りが面白くてね」


「馴染めているみたいでよかった」


義妹は嬉しそうに笑ってくれる。やっぱり暗い表情をさせたら心配させてしまうよな...なんて思う。だからこそ、クラスメイトとは仲良くした方がいい。


「お風呂だけど、お兄ちゃん先は行ってきなよ。今日は私ゆっくり入りたいし」


「そうか」


確かに時間的にも風呂に入っておいた方がいいだろう。順番が詰まってしまうといけないしな。


「じゃあ、このやり取りが終わったら入るよ」


「うん」


俺は松崎さんの返答に悩む。同返答をしようか、ここは揶揄う感じで。いや、素直な気持ちを伝える方がいいだろう。


「そうだな、夢咲さんを優し気に見つめる姿は、絵画にしたいほどかわいかったよ」


半分冗談だと伝えるような内容を打つとすぐに既読になる。その後も返信がなく、だんだんと焦ってくる。結構気持ち悪いこと言ってひかれていると。


送信を取り消すべきだろうか?と思うが、ここで消したら、逆に意識しているみたいになってしまうだろう。それにまずはお風呂に入ることが先決かと思って俺はお風呂場へと向かった。


***


お兄ちゃんがお風呂に向かってドアを閉めたあと、部屋に残された私はふぅと小さく息をついた。ソファの上に置かれたお兄ちゃんのスマホ。通知音がひとつ鳴る。


「……さっき“やり取りが面白い”って言ってたやつかな」


ふと気になって視線を落とす。画面はスリープ状態だったが、通知にうっすら名前が見えた。


──千夏「それって、褒めてる?からかってるの?」


その文言に、自分の眉がぴくりと動いたのがわかった。


(……またか……)


なんてことないやり取り。だけど、すぐにわかってしまう。文面の端々から、そこにある“気の許し方”が。


(ほんと、すぐ誰かと仲良くなるんだから……)


私が昨日聞いた二人の名前は夢咲さんに中里さん。また別の女性だと分かった。


(別に、いいんだけど)


心の中でそう繰り返す。でも、それは私自身も本心じゃないことはわかっている。


(……でも……)


義妹として、家族として、一緒に暮らしてきて。誰より近くで見てきたからわかる。お兄ちゃんがああいう顔をしている時は、私を含めて誰かを助けようとしている時だって。


(……なら、私だって止めることはできない)


でも、本当は──私だけを見ていてほしい。そんな思いを抱いてしまう。


***


部屋に戻ると、涼花の姿はなかった。ベットに置かれたスマホには松崎さんの返答が来ていた。


「確かに揶揄う気持ちもあったけど、かわいいって思ったのは本心だよ」


「そ、でもあんまり軽率いうと信頼されなくなるから気を付けてね」


「もちろん」


そのやり取りに思わず笑ってします。素直に楽しいと感じた。


「じゃあ、明日から頼んだよ」


「もちろん、それと俺も松崎さんを頼りにしている」


「うん、頼って」


そんなやり取りをしながら俺は眠りについた。きっと明日からさらに変わっていくようなそんな予感を感じながら、意識を手放した。

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