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義妹とクラスメイトから迫られる~義妹の信頼を積み重ねるために行動していたら、クラスメイトからも好かれました~  作者: 夢見る冒険者


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連の弱点

「へぇ~、連は結局誰かに何か買ったんだ。私も欲しいな~」


東雲さんは、俺の手に下がっているショッパーへちらりと視線を落とし、悪戯っぽい笑みを浮かべる。……その顔、絶対分かってるだろ。というかさっき


『仮にプレゼントするとして、渡すタイミングも重要だよね。手荷物にもなっちゃうし』


って言っていたの、東雲さんだよね!!……まぁ、その意見に俺も完全に同意だったから、まだ渡していないわけだけど。ほくそ笑む彼女を見ていると、なんだか上手く転がされている気がしてならない。そんな彼女へのささやかな仕返しとして少しだけ、素っ気なく返すことにする。


「彼氏持ちの相手に贈り物しても問題ないなら、何か買うけど?」


彼女に習うように、俺も少しだけ悪戯っぽい笑みを浮かべながら返す。すると彼女は肩をすくめて、


「それは勘弁だな。私の彼氏、そういうところ気にしてくれるから」


なんて女性らしく、「きゃっ」なんて言ってはしゃぐ。その様子に、毒気が抜かれる。彼女は、それを本当に嬉しそうに話していて、ただ純粋に、幸せそうな表情を浮かべていた。


「もしかして、惚気けてる?」

「うん、惚気けてる」


なんて、嬉しそう話す。隠す様子もなく、あっさり肯定する態度に、ついこっちまで微笑ましい気持ちになる。そんな表情で見ていたからか、


「なぁに、羨ましいの?」


なんてからかうような声音で問いかけられる。俺は小さく首を振って応える。


「そうだな……羨ましいっていうより、その関係が微笑ましいって感じかな」


東雲さんは「ふーん」と小さく呟きながらも、どこか満足そうに柔らかな笑みを浮かべている。これ以上話が長引きそうだったので、落ち着ける場所に向かうべく、次の目的地について尋ねる。


「次の予定としては昼食でいいのかな?」

「そうだね……時間的に丁度いいし向かおうか」


そう言って東雲さんはスマホでマップを開いたが、すぐに小さく首を傾げた。


「これってどっちかな?」


画面を見つめながら、スマホと睨めっこしている。望未も「どれどれ」と言いながらその画面を覗き込むが、すぐに小さく苦笑して視線を泳がせた。


……これ、方向が分かってないっぽいな。


「少し見せてもらってもいい?」


と尋ねると、


「うん。いいよ」


そう了承される。許可ももらったことだし、俺も彼女の手元へと身を寄せ、スマホの画面を覗き込んだ。俺たちがいるビルがここで、駅があっち。で、目的地は……


「もしかして、目的地ってこのオウルってお店?」

「えっ……うん。そうだけど」

「そっか、それなら、案内するよ。場所分かるし」

「連君そのお店知ってるんだ!?」


望未は少し驚いたように目を丸くして、俺の方を見つめる。その視線には、東京のお店をたくさん知っているんだろうな、という羨望のようなものが混じっていた。なので誤解がないように首を振って否定する。


「いや、その店自体は行ったことないよ」

「……? じゃあどうしてお店の場所が分かるの?」


不思議そうに首を傾げる望未に、俺は少しだけ視線を逸らしながら答える。


「実はさ————俺も今日がすっごく楽しみだったんだよ。……だから、もし行き先が決まってなかった時のために、いくつか候補を自分なりに調べてて。その中の一つが、このオウルってお店だったってわけ」


言い終わると、なぜか少しだけ胸がくすぐったい。それはきっと望未が、目尻を下げ、柔和な笑みを浮かべていたからだろう。


東雲さんの方も、少し感心したような視線で俺を見つめながら、


「嬉しいこと言ってくれるじゃん」


そう言いながら、肘で軽く俺をつついた。そして、俺の表情を窺いながら尋ねてくる


「それで、他にはどんな場所を考えてたの?」


二人の視線がこちらに向くのを感じて、少しだけ照れくさくなる。俺は調べていた店を思い浮かべながら答える。


「オリーブとか……あとは、カフェ・バリーとかかな」

「あ、そこ私達も候補だった!!」


望未は思わず小さく跳ねそうな勢いで、前屈みになりながら楽しそうに声を上げる。その様子があまりにも嬉しそうで、見ているこちらまでつられて笑みが浮かぶ。


いつでも楽しそうに笑う彼女。きっと俺は、望未のこういう————周りまで明るくしてしまうところが好きなんだろうな。


俺達は今日の候補だった場所について話しながら、太陽に照らされ輝く街を歩く。10分程度歩くと、目的の場所へと辿り着いた。


入口のドアが目の前に来たので、俺は一歩前に出て扉を開く。


「どうぞ」


そういって彼女達の通り道を作ると、東雲さんが驚いたようにこちらを見つめてくる。そしてはっとしたように、瞬きをする。店に入る瞬間、二人とも「ありがとう」といって入っていった。


彼女の反応に、今何か変なことしただろうか?などと少し不安になりつつ俺も店内に入る。


入り口付近にレジが見える。店員さんは……そう店内に視線を向けると、どうやら作業中のようだった。こちらに気付くと申し訳なさそうに軽く会釈をして、皿を持ったままキッチンへと戻っていった。


少し待つことになりそうだな、と思いながら東雲さんに声をかける。


「ちなみにお店は東雲さんが予約してくれた感じ?」

「そうだよ、偉いでしょ」


胸を張ってそう言う彼女に、思わず笑ってしまう。


「うん。助かった。ありがとう」


そう伝えると、彼女は満足そうに頷いた。それから少し雑談をしていると、先ほどの店員さんがこちらに向かって歩いてくる。こちらまで来るのを確認して、俺は口を開いた。


「東雲で予約している者ですが、ご案内をお願いしてもよろしいですか?」

「はい。今確認いたしますので、少々お待ちください」


そう言って店員さんはレジの端末を操作する。すぐに確認が取れたのだろう、俺たちは席へと案内された。そして、席に着くや否や————


「なんか連って、女性の扱いに慣れすぎじゃない?」


東雲さんが、疑うような視線をこちらに向けてくる。


「えっ……そうかな?」

「いやいや、明らかにそうでしょ。待ってる時にスマホ触らないし、歩く速度は合わせてくれて、さっきの店員さんへの対応とかも慣れすぎだし」


そこまで言うと、彼女はもう一度じっと俺を観察するように目を細める。そして、確信したような口調で言った。


「これまで彼女いないって言ってたけど、あれ、嘘でしょ?」


と鋭い視線が向けられる。それに思わず苦笑してしまった。


「嘘じゃないよ。これまで彼女がいたことない」


そう言って、少しだけ肩の力を抜く。変に取り繕う必要もないと思い、できるだけ自然体で答えた。


「……けど、慣れているように見えてるんなら妹のおかげかな。二人で出かけることあるから、多分その時に身についたんだと思う」


会話を楽しめるように事前にお店までのルートを覚えておくとか、上座を譲るとかそういった部分。でも、結局は


「一緒にいるなら、楽しんでほしいからね」


たぶん、その一言に集約される気がする。


「なるほどね……なんとなく連のことを少し理解出来た気がする」


東雲さんは、どこか納得したように柔和な笑みを浮かべる。


「それなら良かった」


そう返すと、彼女はふっと意味ありげに笑った。


「でも……ここまでくると連の弱点を探りたくなってくるよね、望未?」

「えっ……私はそんなことないけど」

「いやいや、苦手なことくらいは知りたくない?」

「それは……そうだね」


上手く誘導される形で望未を乗らせることに成功する。そんな彼女の横で、東雲さんが小さくガッツポーズを取ったのを俺は見逃さなかった。……いや、対面だから普通に見えるからね、俺。


「連君って苦手なことってあるの?」


望未も興味が湧いたのか、少し申し訳なさそうにしながら聞いてくる。


「いや、そりゃあ。数えたらキリがないほどあるよ」


魚を綺麗にさばくこととか。何かに没頭することができないとか……恥ずかしいのだと寝起きが悪いというところだろう。


涼花曰く、寝ぼけると少し幼い頃の自分に戻ったみたいになって、ぼんやりした声で返事をするらしい。それを聞かされた時は、思わず布団をかぶって叫びたくなるくらい恥ずかしかったのを覚えている。


これだけは絶対に言わない、そう心の中で固く決める。けれど、俺が一瞬だけ恥ずかしそうに表情を崩してしまったのを見逃さなかったのだろう。東雲さんが、にやりと口角を吊り上げた。……嫌な予感しかしない。


「教えて欲しいな~、連」


そう言って、わざとらしく上目遣いでこちらを見上げてくる。当然、言うつもりなんてない。口を割るものかと心の中で決意する。すると、


「ちぇ~……さすがに一人じゃ無理か」なんて呟きが聞こえてくる。そして、ゆっくりと望未の方へ顔を向け


「望未も、手伝って」

「……えっ!? もしかして今のやるの!?」


驚いたように目を見開き、思わず東雲さんの方へ勢いよく振り返る。そんな彼女に容赦なく伝える。


「そうだよ。さっき気になるって言ったでしょ」

「その……そこまできになっているわけじゃ……」

「とにかくやって」

「うぅ……わかった」


東雲さんのあまりの迫力に、半ば押し切られる形で、望未は小さく頷いた。少し泣きそうな顔でこちらを見つめてくる。その様子が、なんだか少し不憫でならない。


望未は意を決したようにこちらへ向き直る。そして、潤んだ瞳でこちらを見つめながら、上目遣いで恐る恐る口を開いた。


「お、おしえてほしい、な~、れん、くん?」


そう言った瞬間、望未の頬がみるみる赤く染まっていく。自分の行動が恥ずかしくなったのか、彼女は慌てて両手で顔を覆い、そのまま俯いた。


その仕草があまりにも可愛らしくて、つい抱きしめたくなるような愛らしさもあり、俺の内心はというと——悶絶寸前だった。


これが誰もいない場所だったら、間違いなく机に突っ伏していただろう。一度逸らしていた視線を、そっと望未へ戻す。すると彼女は、まだ耳の先まで真っ赤に染めたまま俯いていた。


普段はあんなに明るくてしっかりしている彼女の、少し崩れた姿。それがやけに新鮮で、つい目を奪われてしまう。そんな俺の視界の端に、東雲さんの視線が映った。


……何か言いたげな顔だ。望未がここまでしてくれたんだから、ね?そんな無言の圧力を感じる。俺はそれに観念したように、小さく肩を落とした。


「えっと、俺の苦手なことは……」


そう口を開くと、望未がそっと顔を上げる。未だに頬が赤く上気させて見つめてくる。……あー、もう。かわいいな。そんなことを思いながら、俺は続きを口にした。


「朝、スッキリ起きること……かな」


東雲さんは一瞬驚いたように目を見開き、ほくそ笑む。そしてニヤニヤしながら口を開く。


「へぇ~、以外にも寝起き悪いんだ。……もしかして、起こしてもらう時に誰かにあたっちゃうとか?」

「いや、そういうのじゃないけど……これ以上は恥ずかしいので言えない」

「あ~、何となく想像がついた。寝ぼけちゃう系かぁ~」


東雲さんが楽しそうにそう言う。その誘導するような言葉には、視線を合わせずに無反応を貫くことにした。これ以上、話を広げられたらたまったものじゃない。


「たしかに、意外だね」


望未まで頷く。……だから言いたくなかったんだよ。俺は小さく息を吐き、強引に話題を切り替える。


「ほら、そろそろメニューを決めて頼まないとだよ。待たせるのも悪いしね」


そう言って話題を打ち切る。東雲さんのニンマリとするような視線を受けながら、その後も食事をするのだった。

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