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義妹とクラスメイトから迫られる~義妹の信頼を積み重ねるために行動していたら、クラスメイトからも好かれました~  作者: 夢見る冒険者


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兄としての不安

駅から十分ほど歩いた先に、その遊園地はあった。遠くからでも分かるほど大きな観覧車が、目印みたいにゆっくりと回っている。


入口ゲートの向こうには、色とりどりのアトラクションが程よい間隔で並びんでいる。入場口前に置かれた、案内マップを見ると、半日あれば一通り回れそうな規模感だと分かる。


メリーゴーラウンドや、子ども向けの小さなアトラクションが目に入る一方で、遠くから聞こえてくる歓声が、絶叫系の存在もはっきりと主張している。


少し浮き立つ気持ちを抱えながら、俺たちはチケットを買って入場した。


「ねえ、お兄ちゃん、あれ一緒に乗ろう!」


涼花が指差した先には、園内のほぼ中央にあるメリーゴーラウンドがあった。


淡いパステルカラーで彩られた屋根が、ゆっくりと回転しながら陽の光を受けている。音楽は少し懐かしさを感じる優しい旋律で、木馬たちは派手すぎない装飾ながらも、一つ一つ丁寧に作られているのが分かる。


親子が回転に合わせて手を振っている。その先には母親に抱かれた赤ちゃんが、きょとんとした表情でこちらを見ていた。その光景に微笑ましく思いながら、ふと涼花に視線を向ける。


今日の服装はミニスカートとなっていて、動き方次第では見えてしまうのではないかと心配になる。


ただでさえ、園内に入園してからもチラチラと男性の視線を集めている状態だ。まぁ、本人も気付いているだろうけど……。内心ではそんなことを考えつつ俺は答える。


「うん。久しぶりに乗るのは楽しみだな。昔は二人乗りをしたことあったし」


「私は今でも二人乗りでいいけどね」


「……流石に、それは俺の方が恥ずかしい」


なんて言いながら、涼花を内側に俺を外側にして並んで乗る。腰を下ろして初めて気づいた、こんなに高かったんだなと。位置を調整して、ふと、気になっていたことを尋ねる。


「そういえば、どうしてこれを選んだんだ?てってっきり絶叫系に行くかと思ってたけど……こういう馬に乗りたかったとか?」


俺が問いかけると涼花は首を振ってから俺の方を見る。


「ううん、違うよ」


そのタイミングで、メリーゴーラウンドが静かに回り始め、上下にゆっくり動く。そのたびに、ほんの一瞬————涼花と俺の視線の高さが、ふっと同じになる。涼花は楽しそうに笑いながら、こちらを見て言った。


「ほら、こうやって上下に動くから、目線が同じ高さになるでしょ?……そういうの、なんかいいなって思ったの」


その笑顔が、妙に大人びて見えて、胸の奥がざわつく。反則でしょ……。


学年は一つ違いだけど、年齢で言えば二歳近く離れている。そんな涼花に、不意にドキリとさせられている自分に気づいて、少しだけ視線を逸らした。


普段は年相応に甘えてくるのに、最近はこうして、落ち着いた雰囲気を纏う瞬間がある。だから、つい目が離せなくなるのかもしれない。そんなことを考えながら、再び彼女を見る。


流れる音楽に合わせて体を揺らしたり、無邪気にこちらへ手を振ったり。その姿は微笑ましくて、どこか安心する。


にしても————中学三年、か。


今でこそ落ち着いた雰囲気を醸し出しているが、小学生時代はぶつかることが多かったな。芯も持ってるからこそ、反発することも多くて、男子ともぶつかっていたな。そんな記憶が、懐かしさと一緒に胸に浮かぶ。


陽の光を受けて、涼花の姿がやけに眩しく見えた、その瞬間にふと思う。もし同級生だったらきっと……妹じゃなくて"頼れる姉"だったんじゃないかと。そんな考えが頭をよぎりった。


メリーゴーランドから降りると、涼花が楽しそうに微笑みながら、俺の手を引く。


「じゃあ次、ジェットコースターね!」


「よし、行こうか!!」


「うん!」


そう頷くと、涼花は弾むように走り出す。目的地に着くと、そこにはすでに大勢の人が並んでいた。やっぱり絶叫系は人気らしく、行列は思っていた以上に長い。


それでも並んでいる時間も、涼花と一緒なら退屈しない。だって、いつも一緒にいるのだから自然と会話は続いていく。気づけば順番が回ってきて、二人で座席に乗り込む。カタン、と音を立てながら、ゆっくりと高度を上げていく。


一瞬静止し————勢いよく落下する。


「きゃーーー!!」


涼花の楽しげな悲鳴につられて、俺も思わず声を上げた。風を切る感覚を感じながら、ふと、手を上げてはしゃぐ涼花の笑顔が目に入る。俺もそれに習うように声を上げて、笑いながら楽しんだ。


「楽しかったね、お兄ちゃん!」


「あぁ!勢いのあるスピードとか、体全体で感じる風とか……ああいう"非日常"って癖になるよな」


「うん!絶叫系に乗ると、遊園地に来たんだなって実感する」


そう言って、涼花は満面の笑みを浮かべる。涼花はまた周囲を見渡して、一点に視線を止める。


「ねぇ、次はあれに乗るう!!」


なんて手を引かれながら、園内を巡っていった。別の絶叫系に始まり、お化け屋敷、ゴーカートなど様々なものを楽しむ。気づけば夕方になるまで、俺は涼花に手を引かれるまま、夢中で遊び回っていた。


そして最後に選んだのは————


「やっぱり最後は観覧車だよね」


夕焼けに染まる空の下、二人で観覧車に乗り込んだ。


「本当に楽しい時間って、あっという間だよね」


少し名残惜しそうに、遊園地の方を見きながら涼花は呟いた。


そうだな。なんて返すと、向かい側に座ってる涼花が、俺の方をじっと見つめる。ほんの少し迷うような表情を感じた次の瞬間————


何かを決めたように立ち上がり、俺の隣へと移動してくる。そして、ぴたりと体を寄せた。


「……やっぱり、距離があるの、嫌だなって思っちゃって」


そう呟きながら、腕に抱きついてくる。


「こうして、もっと近くにいたいんだけど、いい?」


「もちろん」


即答する中、俺の胸にはじんわりと熱いものを感じる。信頼されていることが、傍にいたいと思ってくれることが素直に嬉しい。


その気持ちに応えるように、俺はほんの少しだけ体を涼花に傾ける。涼花もそれに反応するように体重を預け返してくれる。


観覧車のゴンドラの中。夕日が差し込んで、二人の影が寄り添うように重なる。


「お兄ちゃんあそこ見て。ほら、あそこ。今日ショッピングモールで買い物した場所だよ」


「ああ、そうだな。涼花の可愛い姿が見られて得した気分だった」


そんなことないよ、なんて照れたように笑いながら、次の場所に涼花は視線を向ける。


「で、あっちがお昼食べたお店で……あっちの方に私たちの家があるんだよね」


嬉しそうに指を差しながら話す涼花。どの風景も、今日の記憶と結びついていて————胸の奥が、静かに満たされていく。だからだろうか。俺は、ずっと心の中にしまっていた疑問を、ふと口にしていた。


「……涼花はさ。俺が兄でよかったって……思ってる?」


言葉を発した瞬間、ゴンドラの中の空気が、少しだけ静まり返る。けれど涼花は、迷うことなく答えた。


「うん。よかったよ。心からそう思ってる」


続く言葉は、いつもより少し弱くて、でも確かな響きだった。


「もしお兄ちゃんじゃなかったらね。私、きっと家の中でもずっと一人で、誰とも関わろうとしなかったと思う」


「……」


「引きこもってたかもしれないし、一人暮らしを無理に早く始めようとしてたかもしれない。でも……お兄ちゃんがいたから、私は毎日が楽しいんだよ」


涼花は俺の腕をぎゅっと抱きしめる。


「お父さんも優しくて頼りになる人だし、お母さんの料理はすごくあったかいし……それでもね、やっぱり一番は――」


一度、言葉を切って。


「"お兄ちゃんが私のために頑張ってくれてる"って分かるから。それがあるから、私も頑張れるの」


……そんなふうに思ってくれていたのか。胸の奥で張り詰めていたものが、ゆっくりとほどけていく。じんわりと温かさに満たされていくことを感じながら、認めてもらえていたことが、ただただ素直に嬉しかった。


「辛いことがあっても家に帰ればお兄ちゃんがいる。それだけで……救われるんだ。それに、辛い時に寄り添ってくれて。いつでも守ってくれる。だから……ありがとう、お兄ちゃん」


静かなゴンドラの中。流れていく景色や夕焼けの光よりも、涼花の言葉の方が強く胸に残る。その横顔は、夕日に照らされて、少し大人っぽく見えた。


「俺も、ありがとう、涼花。涼花がいたから、きっと俺は頑張れたんだ。ここまでこれたんだ。だから、ありがとう」


「なら、良かった」


その声はどこか柔らかくて、涼花自身も肩の力を抜いたように見えた。涼花も涼花で不安に思うことがあったのかもしれない。まだ知らない一面に気付いて嬉しい反面、本音の部分を話して本当に良かったと感じる。


そして、改めて感じた。やっぱり今の俺がやりたいことは涼花のふさわしい兄でいることなんだって。進路に悩んでいた自分に、今はこの道を進もうと改めて決意させる。


いろんな職業を知ったり、選択肢を考えることは必要だろうけど、それでも一番の優先順位はきっと————ずっと変わらないんだって思った。俺のことを見つめる涼花が遠慮がちに口を開く。


「もし、お兄ちゃんが挑戦したいことがあったり、何かで行き詰まったときは、私を頼ってよ」


「もちろん頼らせてもらう。……といっても現状、かなり頼ってるけどな」


「それでも!もっと頼ってほしいんだよ……妹としても、"家族"としてもね」


その言葉に、俺は小さくうなずいた。観覧車がゆっくりと降りていく間、俺たちは寄り添ったまま、静かに景色を見つめ続けていた。


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