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義妹とクラスメイトから迫られる~義妹の信頼を積み重ねるために行動していたら、クラスメイトからも好かれました~  作者: 夢見る冒険者


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成長したその姿に

涼花は俺の様子をそっと伺いながら、少し緊張した声で言った。


「……それじゃあ、お兄ちゃんが着てほしい服、見せてもらってもいい?」


「うん、もちろん」


そう応えて差し出した服を、涼花は両手で大切そうに受け取る。胸元まで持ち上げると、その手触りを確かめるように、指先にほんの少しだけ力がこもる。その感触を確かめて、ふっと表情が和らいだ。まるで宝物を受け取ったみたいに、口元に笑みを浮かべ、静かにカーテンを閉める。


あまりに嬉しそうにするからかな、自然とこちらまで微笑みをこぼしていた。……もし気に入ったのなら、プレゼントしてもいいのだろうか?そんな気持ちが湧いてくる。あぁ、でもそれはエゴかもしれない。一番気に入った服の方がいいよなと思う。


個人的にはどの服が一番似合っているように感じたかな?なんて振り返っていると、カーテンが開かれた。そこに立っていたのは、どこか幼さを残しながらも、少し大人びた可愛らしさをまとった涼花だった。思わず視線が引き寄せられて、慌てて顔を逸らす。自分でも分かるほど、頬が熱い。


「……少し、幼すぎないかな?」


心配そうに言いながら、涼花は自分の着ている服へと視線を落とす。


「そんなことないと思う。似合ってるよ」


そう返すと、涼花は「えへへ」と小さく笑った。照れを隠すような、その笑みがやけに柔らかい。改めて涼花が来ている服に視線を移す。


今回選んだのは白のオフショル風ブラウスに、黒のコルセット風ビスチェを合わせたもの。胸元にひらひらとした装飾はない。動くたびに視線を集めないよう、全体を落ち着かせたつもりで選んだものだった。


また、ネイビーのカーディガンを羽織ることで夏でも肌寒くなる時や男性の視線を軽減できるように、少しゆったりとした濃色のものを選んだ。下は黒のフレアスカートで少し脚が出る分、心配ではあるが、出来るだけ涼花が選んだものに近付けている。


だからだろう、涼花は服装から俺へと視線を移し、きょとんと目を瞬かせる。そのまま、確かめるようにこちらを見つめてきた。


「お兄ちゃんが、オフショルの服を許してくれるなんて意外だったな。……でも、いいの?」


少し不安そうにしているのはきっと俺の発言を気にしてなんだろうな……。


「本当は外でも来てみたいんじゃないかって感じたんだ。涼花が着てみたいって思ったのなら、それを、後押ししたいって思った。……でも、他の男性の前では正直、あんまり見せたくはないからさ。薄手のカーディガンも一緒に選んだけど……どうかな?」


束縛しているように思われないよう言葉を選んだつもりではある。……いや、束縛はしてるんだけど。嫌われはしないかなと、恐る恐る涼花の方を見る。そこには、満開の桜が咲いたような、ぱっと花開く微笑みを浮かべた涼花の姿があった。


一瞬、言葉を失って見つめていると————次の瞬間。勢いよくこちらに飛び込んでくる涼花の姿が視界に入る。


「————っ!?」


予想外の出来事に思わず息を詰めながらも、反射的にその体を受け止める。胸元に伝わる確かな温もりに、心臓が一気に跳ねた。


女性だからだろう。柔らかな感触を感じると共に、ふわりと、甘いフローラルの香りが鼻先をかすめる。突然のことに驚いているせいか、心臓の鼓動が自分でも分かるほどに耳に響いてくる。


せめて呼吸だけは乱さないよう意識していると、涼花が小さく、ぽつりと呟いた。


「……ありがとね、お兄ちゃん」


涼花も恥ずかしいからだろう、耳元が赤く染まっているのが分かる。少腕の中で、少しだけ身体が震えていて————涼花自身も、きっと衝動的だったんだろうと分かった。そのことに気づいて、俺の方も少しずつ落ち着いてくる。


「どういたしまして」


そう返す声は、自分でも驚くほど柔らかかった。しばらくして、涼花は名残惜しそうに俺から離れる。離れた後も、体温の余韻だけが、まだ胸の奥に残っていた。


「お兄ちゃんって、褒めるの上手だよね?他の子にも言ってるんでしょ?」


「いや、直接的に伝えるのは涼花くらいだよ」


「……そう、なんだ」


その一言で、涼花の頬がふっと緩む。その様子を見ていると、自然とこちらまで表情が和らいぐ。


そもそも俺が、他の誰かに向かって積極的に「可愛い」なんて言う姿が想像できない。……いや、想像してみて、普通に気持ち悪いなと思う。


仮に俺が大翔みたいに裏表なく言えるなら、素直に受け入れられんだろうな……。涼花は俺が軽薄な行動を取っていないか気になるんだろうけど、俺の方が心配していると思う。


「涼花の方こそ、男子と距離が近いと、勘違いされるから。そういうのは、本当に好きな人だけにしなよ」


「……しないよ。お兄ちゃんだけ」


そう微笑んで告げる涼花の表情には、さっきまでの幼さがなかった。経験に裏打ちされたみたいな、大人っぽさを感じる。……にしても、お兄ちゃんだけか。最近、直接的に好意を伝えてくれるからこそ、勘違いしそうになる。


その言葉に急に照れくさくなって、少しそっぽを向きながら自分の気持ちを隠すように伝える。


「……涼花は、さ。自分の可愛さもうちょっと自覚したほうがいいよ」


すると涼花は、ぱっと嬉しそうに笑って、また勢いよく抱きついてきた。


「えへへ……もっと言って~」


胸元に頭をすりっと寄せて、嬉しそうに体を揺らす。さっきまで大人っぽく見えていたのに、こういう仕草だけは年相応で、そこに愛らしさを感じる。気づけば、俺は涼花の頭をそっと撫でていた。


一瞬だけ驚いたように目を見開き、それから————————ふにゃっと、嬉しそうに笑う。


「……えへへ」


撫でなれた猫みたいに、気持ちよさそうに、表情を和らげる。その姿に、胸の奥がじんわりと温まる。……あぁ、俺はきっと、この笑顔を見る為に頑張っているのだろうな。胸に抱いた感情を俺は大事に抱え込むのだった。



***



購入しない分を店員に預け、必要なものだけを会計すると、俺たちは服飾店を後にした。涼花の手元には、俺が選んだ服が一式が揃っている。


「にしても、私が買ったのに……。お母さんとかお父さんからも、お小遣いだって貰ってるんだよ?」


「知ってる。……でもさ、自分が選んだ服だから、プレゼントしたかった。……ダメかな?」


「まぁ。それなら……いいけど」


口では不服そうに言いながらも、涼花は服の入った紙袋を胸元に抱き寄せている。こらえきれないみたいに浮かぶ笑みを見て、本当に買えて良かったなと思う。それにしても————


「他にも色々あったけど、今回はその服だけでよかったのか?」


疑問に思っていたことを聞くと、涼花はにっこりと笑て告げる。


「さすがに、沢山買えるとしても悪いから、気に入ったのだけ」


そう言いながら前を向く、その横顔を見て、なんとなく分かった気がした。涼花はきっと自分が、"恵まれている側"だとわかっているから、わきまえているんだろう。他の人と同じように生きたいと。その上で、両親を頼りにしているんだと思う。


……そういうところも好きなんだよな。隣を歩きながら、そんなことを考えていると。


「そろそろお昼じゃない?お兄ちゃんがおすすめしてたお店、行ってみる?」


そう問いかけられる。俺は時刻を確認し頷く。


「そうだな、行くとするか。実は、レビュー見た感じ、結構良さそうだったから、期待してるんだ」


「ね、私も写真見たんだけど、綺麗に盛り付けられていて、美味しそうだと思ってたんだ。だから、私も楽しみにしてる」


二人してお店の写真を見ながら、期待を膨らませてお店の中に入っていく。


昼食は、フレンチコースで、春野菜のテリーヌ、熟成ハムのロールガレット、鶏のグリル。締めには濃厚なガトーショコラだった。


「お兄ちゃん、これ美味しいね!」


楽しそうに食べる涼花を見ていると、胸のあたりが自然とあたたかくなった。だからだろうか、ふと昔のことを思い出した。よくソースなどを口元に着けてそれを拭いていた時のことを。


けど今は、マナーを踏まえて綺麗に食べている。成長したんだな、なんて思いながら、つい涼花を見つめてしまう。


「どうしたの、私の顔を見て?」


「いや、昔は口元を俺が拭いたこともあったと思って」


「うぅ……恥ずかしい過去を思い出させないでよ」


そう言って、むっとした顔でほっぺたを膨らませる。それに「ごめん、ごめん」と言って詫びると、涼花はふっと表情を緩め、こちらに向き直り、微笑みながら口を開いた。


「じゃあさ。仮に、今ソースを口元につけたら……お兄ちゃん、拭いてくれるの?」


「えっ……と……」


首を少し傾けて、じっと見つめてくる。ソースを拭く行為を連想したためか、自然と唇に視線がいってしまう。薄桃色のぷっくりとした艶やかな唇に。思わず唾を飲み込んだ、その瞬間。


「冗談だよ」


なんて言って、無邪気にくすくすと笑う。


……ほんと、心臓に悪い。


それからは楽しく二人で食事をする。その筈なのに、涼花が料理を口に運ぶたびに、ドキッとさせられる。流石に、デザートを食べる時に見詰めるのは、ダメだろ……。なんて思いながら食べたガトーショコラはあまり味がしなかった。


終始ドキドキした、食事を終えて、二人で店を出る。


「にしても、ご飯代出してもらってよかったのか?」


「いいの。だって、お兄ちゃんは洋服の方を出してくれたんだから、こっちは出させてよ」


なんて、屈託のない笑顔で言われ、思わず肩の荷を下ろす。


「ありがとな」


「うん!!」


自然と感謝を口にすると、涼花は嬉しそうに笑う。


「それじゃ、荷物預けて遊園地、行こっか」


「うん!行こう!!」


今日一番と言っていいくらいの笑顔で、涼花は頷くのだった。


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