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義妹とクラスメイトから迫られる~義妹の信頼を積み重ねるために行動していたら、クラスメイトからも好かれました~  作者: 夢見る冒険者


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昔の想い

見惚れていたって、なに?……いつもと違って、じっと見つめられたまま返事がなく、頬が僅かに緩んでいた。まるで、感動的な絵画を前にしたときの、ただ心を打たれたときときの表情そのもので……何より、「他の男の人の前だと、ちょっと心配だな」なんて初めて言われた。


いつも、私のことを信じて任せていたお兄ちゃんが、他の男性には見せたくないって言ってくれた。


(……見せるわけないのに)


……つい、その時の表情を思い出して頬がにやけてしまう。躊躇いがちにこちらを窺っていて、でも私の目を捉えてしっかりと見つめるお兄ちゃんを……気づけば私は着替える服を持ってしゃがみ込んでいた。試着室の鏡に映る自分の顔は、想像していたよりもずっと赤い。頬に触れると、まだ熱が引いていないのが分かる。


(……仕方ないじゃん。初めて、女の子として意識してくれたんだもん)


いつもは軽く、「似合ってる。見惚れるほどにね」って軽く伝えてくる感じなのに、今日は違った。


それに……胸も、見てたよね?気付かないふりをしていたけど、女性はそういう視線に敏感なんだよ。でも、太腿の方はほんの一瞬見ただけだったけど……。。それが余計に、意識しているのが伝わってきて……嬉しかった。


だって、分かりやす過ぎるんだもん!!


……分かったからこそ、私も恥ずかしくなって、いまは少し冷却時間を置いている。……でも、全部が全部、手放しで喜べるわけじゃない。いつもなら絶対に視線がいくことがないのに今日は違った。きっとそれは、桜さんや望未ちゃんも意識してるってことだから。


中学最後の日に本気の告白をされたことが起因してるのかな?それとも高校生になって女性を意識する余裕ができたから?大人になるにつれて、自然と恋愛を考えるようになっただけなのかもしれない。理由は分からない。


でも、私にも可能性があるのなら。少しでも、意識してくれているのなら。私は今できることをする。気持ちを切り替えて、4着持っていた服を籠にいれる。あと、一着は追加で見てほしいから。お兄ちゃんが戻ってくる前に、探さないと。そう思い、慌てて着替える。


私は試着室を出て、目的の棚へと足を向けた。



***



自分でも信じられない程、心臓が煩かった。鼓動が早いというより、落ち着きどころを失っているような感覚だ。


……いやいや、義妹相手に?そう自分に問いかけて、首を振る。これまでだって距離が近いことは何度もあった。隣に並んで勉強したこともあるし、添い寝だってしたこともある。いや、その時も少しドキッとすることは確かにあった。でも優先してくる感情は、甘えてくるのが可愛らしいなって感情で……


だからかな、いつもと違う一面を見たときのギャップに女性らしさを感じたのは……。そう冷静に分析する。息をスッと吐いて、心を落ち着かせる。胸の奥に溜まっていた空気を外に逃がすように。


習慣というのは、馬鹿にならない。何度も繰り返してきた仕草が、思考を引き戻してくれる。鼓動も、少しずつ元のリズムを取り戻していった。


それに、義妹だって望んでいないだろう。俺が恋愛に似た感情を抱くことなんて。今だって、他の男性に対しては話しかけられないように工夫をしているし、触れないようにもしている。唯一許しているのが家族である、父と俺だけだ。


それに父さんにだって、抱き着いたりとか甘えたりをしない。特別信頼しているのはきっと、俺がそういった感情を持たないからだ。……でも、そんな涼花にも好きな人がいたんだよな。


きっと俺に出会うよりも前に好きになったんじゃないかと思う。涼花以上に凄い人なんて、これまでに出会ったことがない。……いや、たった一人だけいたか。涼花の才能ですら霞むと思うほどの人物が。涼花はその人の事を今でも心のどこかにいるのだろうか?涼花を助けてくれたあの少年のことを。


関係ないだろ、俺は首を振って余計な思考を振り払う。俺は涼花の兄でいると決めたんだから。いつも通り、俺らしく振舞えばいい。かつて見た、自分の理想へを進めるように。ただ、前だけを見つめる。


さて、涼花に似合う服を選ぶとしますか。そう内心で呟いて、狙いをつけていた方へと歩みを進めていく。



***



選んだ服を持って戻ると、涼花の方も新たに何着か持っているのが分かる。俺が手に持っているものを見つめると涼花はぱっと表情を明るくする。


「選んできてくれたんだね」


嬉しそうに俺の手元を眺める涼花を見て、選んで良かったなって温かい気持ちが湧いてくる。


「涼花の方も良さそうなの選べた?」


「うん。ばっちりだよ、お兄ちゃん」


大きく頷く様子は、いつもと変わらない。


「早速だけど、試着してもいい?」


こちらを窺いながら、少しだけ前屈みになる。腰を少し突き出すように、身体のラインをくっきり出すように、身体のひねりを意識しているのが分かる。


「うん。楽しみにしてる」


そう答えると、涼花は一瞬だけ不思議そうな顔をしてから、「うん」と小さく返事をして試着室へ向かった。……?そんな変な顔していたか?と思うが、特に異常はないと思う。自分ではいつも通りのつもりだったが、動揺が滲んでいたのかもしれない。


そんな事を想いつつ、涼花が見せてくれたのは、異なる3種の装いだった。一つ目はメイド服風の装いだ。白フリル×黒リボンで王道メイド。黒を基調としつつ、胸元より上部分は白で分かれている。


「こういう服、初めて着たかも。どう、似合ってる?」


「うん。似合ってるよ。まぁ、メイドさんにしては可愛すぎるけどね」


率直にそう伝えると、彼女は少し照れたように笑って、すぐ次の試着へ戻っていく。


「次は、これなんだけど、どうかな?」


次に見せてくれたのは、アイドル風の衣装だった。白のワンピースを基調としつつ、首元と腰にブルーのリボンを添えている。また、濃紺のベルトを付けることで過度にスカートがひらひらしないようになっている点も魅力だった。


「夏の光をそのまま身にまとったような、良家の令嬢を思わせる上品さがあるな。つい視線で追ってしまい、写真を撮りたくなる」


「……ありがとう。じゃあ、最後のに着替えるね」


「うん」


満足そうに頷いた涼花だったが、振り返り際の表情が少し優れない気がして気になる。――褒め方が、足りなかったのか。もっと言葉を選ぶべきだったのかと考えていると、試着室のカーテンが静かに開く。


その姿を見た瞬間、思考が止まった。


「……これ、どうかな?」


不安げに告げる涼花は、まるで物語のお姫様が目の前に顕現したとしか形容できないほど美しかった。ウエスト位置が高く、腰元のフリルが多いからか。それとも、白を基調とし薄手のストールまでしているためか。不安そうにこちらを窺う姿に庇護欲を搔き立てられたからかは分からない。どこか儚さすら感じさせる彼女から目が離せない。


決して露出が多いわけじゃない。肩が出ていても胸元などが強調されているわけじゃない。それなのに――不安そうにこちらを窺うその表情が、胸の奥を強く揺さぶった。


「……こういう衣装、初めて見たからかな」


抑え込んでいた感情は、そこで静かに、しかし確実に決壊した。


「涼花のかわいらしさが詰まっている。見ていると安心するのに、目が離せなくて……頼りにしてほしいって思うんだ」


それは初めに抱いた感情に近かった気がする。ただ、この美しい存在の力になりたい。子供の頃、あの公園で出会ったときに、胸に芽生えた想いと同じだった。


涼花は俺の顔をじっと見つめて、何かを感じ取ったのか、それ以上は何も言わない。ほんの少し間を置いて、ただ一言告げる。


「……嬉しい」


その一言だけで、十分だった。

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