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義妹とクラスメイトから迫られる~義妹の信頼を積み重ねるために行動していたら、クラスメイトからも好かれました~  作者: 夢見る冒険者


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過去のあれこれ

「そういえば、桜に告白する人、また増えてきたんだよな」


「そうなの。この前なんて、桜に触れそうになってたし」


「あの時は間に入ってくれてありがとう、千夏」


入学当初は冷たかった彼女が、今では優しげな態度を取るようになった。そうなると勘違いする生徒が出てくるのも無理はない。“自分にだけ優しくしてくれる”――そう思い込んでいるんだろうな...


もし、同じクラスメイトじゃなかったら、勘違いしているかもしれないしな...。ただ、さっきの話を聞いて、頑張っている彼女の障害になるなら、何とかしないとだよな。


「もし必要な時は呼んでくれ。頼りないと感じたら、大翔にだって加勢してもらうし」


「......?連君の方が頼りになりますよ」


「お、おう」


素で言っているのだだろう。何の疑いもなく真っ直ぐこちらを見るその瞳でこちらを見つめてくる。そこまで信頼されているのは嬉しくて、思わず顔が熱くなる。つい、照れ隠しに手で口元を覆ってしまった。


「連が照れてるー」


「それは、照れるだろう...直球で言われることなんてないし」


桜の方を見ると、彼女も何故か照れている。けれど千夏が笑い飛ばしてくれたおかげで、場の空気がふっと軽くなったのを感じる。そういった所に安心感を覚えるんだろう。気づけば、自分の肩の力も少し抜けていた。


「私もお兄ちゃんが一番頼りになるよ」


「ありがとな」


突然いわれた言葉に驚きつつも、感謝の気持ちを込めて義妹の頭を撫でる。嬉しそうに少し体を揺らしている姿に癒される。


「連君って本当に義妹さんと仲がいいですよね」


「まぁね。といっても、教わることが多いからどっちが兄で姉なのか分かんないけどね」


「お兄ちゃんはいつも謙遜しすぎだよ。私が信頼する男性なんて、殆どいないんだから」


そう言って、涼花はそっと俺の肩に頭を預けてくる。“ほらね”とでも言いたげ顔で俺を見上げて俺を見つめてくる。それはいつもの距離感なんだけど……みんなの視線が痛い。特に雫の近すぎじゃないかなという視線を感じる。俺は咳ばらいをしつつ口を開いた。


「じゃあ、次は涼花の話について聞いていこうか」


そう話題を逸らす。


「私はお兄ちゃんとセットでいいと思うよ。どうせアルバムにもあるし」


「そうだな」


「じゃあ、アルバム持ってきますね」


そういって涼花が二階に上がっていく姿を遠目に見送った。その姿を見届けると、千夏がこちらを真剣な表情で見つめてくる。


「どうやったら、あんなに懐かれるの?」


「背伸びしないで、まっすぐ向き合うこと、かな」


「それって、どういう?」


「自分が義妹より劣ってるって自覚したうえで、何ができるか考えるってこと。弱音も普通に吐くしね」


そう言うと、千夏は少しだけ柔らかい表情を見せた。


「なるほどね。それは大事だと思う」


みんなも、どこか温かい目でこちらを見てくる。そんな空気の中、階段から足音が聞こえてきた。視線を向けると、涼花がアルバムを胸に抱えて降りてくる――んだけど、待って。なぜか3冊も持ってる……?


そう思いつつも、手伝おうと近づく。あれ、小学生と中学生しかアルバムは存在していない筈なんだけどな、と思いつつ距離を詰めると大きさが分かる。...どうして3冊目が異常に分厚いんだろうか?


「涼花持つよ」


違和感を覚えつつ、階段の中断くらいで声を掛ける。


「ありがとう。じゃあ、手前の2冊持ってくれる」


「わかった」


渡されたのは俺の小学生時代と中学生時代のアルバム。そして、涼花の手に残った3冊目には――


『連の成長日誌』


……不安しかないタイトルだった。部屋に返してもらうべきか一瞬迷うが、ウキウキしている義妹を止めるのも気が引ける。先に立って歩く涼花の背中を見ながら、結局諦めて後を追うことにした。彼女が自分の席に腰を下ろしたのを確認してから、俺もそっと席に着く。


「さっそくで悪いんだけど、3冊目のそれってなに?」


恐る恐る俺が涼花に聞くと嬉しそうにこちらを向く。


「これは私個人で作ったアルバムだよ。お母さんたちに見せたら喜んでくれたから、作り続けているんだ」


「それ、初耳なんだけど」


「うん。恥ずかしいかなって思って、内緒にしてた」


うん。本当にその通りなんだよ。なら、どうして持ってきたのだろうか、それを。でも、嬉しそうにしている涼花を見ていると何も言えなくなる。そうして迷いなく3冊目からアルバムを開いた。それをみんなが見つめるように、テーブルを中心にして覗き込んでいる。


流石に近づけないな共いつつ、俺も遠巻きに確認する。


「これって。もしかして連君と涼花ちゃん?」


「そうですっ!」


「どれどれっ――わっ、かわいい!!」


望未の声につられて千夏も覗き込み、惚けるようにして見つめている。そこには、出会ったばかりの頃の俺と涼花。まだ距離があって、お義母さんを挟むように並んで写っていた。


「これは……望未ちゃんと連君ですか?」


「はい!!」


「え、ちょっと待って。なんで涼花ちゃんがその写真をもってるの?」


驚きながらも、恥かしそうに頬を染めながら望未が尋ねる。


「それはお兄ちゃんが見せてくれたからですね」


どんな写真だっただろうか。視線の先には、くまのぬいぐるみを抱いて、俺の服の裾を掴んでいる幼い望未の姿が写っていた。確かに、ぬいぐるみは今となっては少し恥ずかしいのかもしれない。


でも、今の望未のイメージとそんなにかけ離れていないと思うけど...。そう思いながらも、頬を隠している彼女を見て、これ以上深掘りするのはやめておいた。


その間にも、みんなの手でアルバムのページは次々とめくられていく。


「もしかして、学校に乗っているアルバム写真もこっちにまとめているのか?」


「うん。こっちの方が見やすいから」


「アルバムの意味って...」


そんなことを考えながら、俺は自分が持ってきた写真に視線を落とす。


「クラスメイトとかはアルバムのみ、映っているから」


そう言ってクラスごとの集合写真のページを開く。


「ホントだね。有明君や大翔君がいますね」


「大翔君の方は、小学生から一緒なの?」


「そうだな。運動系でよく競い合ってた。あの頃は毎日が大変だった」


「そうはいっても、お兄ちゃんも楽しんでいたじゃん」


確かにそうだな。大翔に負けた日は悔しくて、夜遅くまで練習していた。勝ったら死ぬほど嬉しくて、でも負けて、また練習して――その繰り返しだった。通算で言うと引き分けだったっけ?通算で言うと引き分け、だったはず。たぶん七百戦くらいはしたんじゃないか。そう思うと、殆ど毎日勝負していたような気がする。


「やっぱり最初っから仲良かったんですね」


「いや、めっちゃ悪かった」


「そうだよね。殴り合いの喧嘩して、二人そろって先生に怒られてたからね」


義妹の発言に驚くように俺の方を見つめてくる。大げさに怯えるのやめてね、千夏。もう、5年前の話だし。


「今の連からは想像できないね」


千夏はそういって俺の方をまじまじと見つめてくる。


「本当、なの?」


桜ですら、俺の方を窺うように見つめてくる。


「恥ずかしながら、本当です」


そんな純粋な目で見つめられたら、真実を話すしかないというか、隠した方がやましいことがあるってなるしな。


「やっぱり大翔君が勝ったの?ガタイよさそうだし」


「いいえ、お兄ちゃんが勝ちましたよ」


「えっ!?意外!!」


その反応に義妹も笑いながら、少し誇らしげに答える。


「武道をならっていましたからね」


「それで、先生には本気で怒られたけどね」


苦笑いを浮かべると、皆は別方向に驚いていそうだった。


「ということは結構強いの、連さん?」


なんで今さら敬語になるんだ、と思いつつも首を振る。


「ジムにかよっている同世代の中だと、四人中三番目くらいだよ」


何か言いたげな涼花の視線をかわしつつ、あくまで淡々と答える。


「大河にも基本は教えてるし。今やったら体格差もあるから、どうなるか分からないかもな」


「いや、それでも大河君と同じくらい強いってことに驚きです」


「でも、上には上がいる。専門的にやってる人には敵わない」


「それもそうですね」


趣味程度という認識には出来ただろう。恐れられないようにするというのも大変である。


「連君が始めたきっかけは何だったの?」


望未がこちらを窺うように聞いてくる。


「えーっと...」


つい、言い淀んでしまう。義妹の前で“理由”を語るのは、やっぱり少し照れくさい。


「ほら、男っていうのは強い人に憧れる時期があるんだよ」


「じゃあ、今も通っていないわけだ」


「週一は必ず顔はだしているよね?」


すかさず義妹とが訂正を入れる。涼花自身も理由が気になっているのか、それとも言わせたいのかは分からないが、期待した目線でこちらを見つめられる。


「そうだね」


結局、否定する理由もなくて、俺は頷いた。これで話も一区切りだろう――そう思った瞬間、なぜか懐疑的な視線がまた一斉に集まってくる。


「連君、嘘ついてますよね?」


いきなりの指摘に、言葉が詰まる。


「流石の私でも嘘だって分かりますよ。」


桜までもがそう言うと、涼花が小さく笑って口を開いた。


「お兄ちゃんが通い出したのって私の為でしょ?せめて盾にはなれるようにって」


「……そうだよ」


「さすがのシスコン具合だね。わからないでもないけど」


千夏が呆れたように苦笑する。


「いやだって涼花可愛いから心配なんだよ。実際に暴力に訴える人もいるし...まぁ、涼花の方が習得スピードは速かったんだけどね...」


そう言うと、涼花は少し困ったように苦笑いを浮かべた。後から入ってきた涼花ではあるが、師匠から君はもう来ない方がいいといわれるまで、たった九ヶ月だったのだから、本当に頭が上がらない。


「さすがに今じゃ、お兄ちゃんにまけるよ。鍛えていないし、体格差もあるから」


「もしかして、兄妹対決とかもしたの?」


「一度だけやったことはあります。けど、私の負けです」


「いや、負けっていうか……体力勝負で押し切った感じだけどね」


先生曰く、俺の目と反応速度はいい方らしくて、何とかよけに徹することができた。防御に徹し、動きが鈍って勝った感じだ。


攻撃する暇すら与えられないのだから我が義妹ながら凄さを実感させられたな。その後もぺらぺらとアルバムを捲っていきながら思い出を振り返る。


「二人の写真が5歳くらいしかないんだけど...別にあるの?見てみたい」


千夏の言葉に、涼花が目をパチパチさせて、表情を柔らかくする。


「そういえば、言ってませんでしたね。私、両親の再婚でできた義理の妹なんです」


「えっ...そうなの!?」


今日一の反応を見せてくれるなと思っていると、俺のことを見ながら何かいいたそうだった。


「最初にギクシャクしたりは?」


「なかったですよ。だって最初に出会った時、お兄ちゃんはちゃんと私の目を見てくれましたから」


「……そうだったかな。最初は警戒心も強かった気もするけど」


「むー、いい話で終わらせたかったのに。でも今は本当に信頼してるんだよ」


そういって涼花は頬を膨らませる。怒っているのだろうが、可愛いだけだ。


「連はその信頼に応えられるように頑張らないとだね」


「それは重々承知してる」


千夏の軽い一言に、思わず苦笑する。皆の方に視線を向けると、何かをジッと見つめる望未の姿が目に入った。


――そんなに真剣な顔して、何を見てるんだ?そう思って彼女の視線の先を追うと、そこには頬にキスをされて照れている俺の姿があった。


(……え?)


思わず思考がフリーズする。なんでそんな写真があるんだ。反射的に義妹の方へ顔を向けると、涼花も「?」を浮かべながら望未を見やる。


あー、そんなのもあったね。と言いたげ口を開き、何かを察したみんなが望未の方に視線をやる。


「やっぱり連はモテるんだね、こんな写真があるくらいだし」


千夏のからかうような声と悪戯っぽい表情で俺を見つめる。


「ほんとですね。連君って、彼女を作らないんじゃなくて――あ・え・て、作らないんですか?複数の女性をキープするために」


そう冷めた目線が俺を突き刺す。


「そう、なの?」


信じやすい桜が、目を丸くして尋ねてくる。……完全に誤解です。


「欲しいと思ったこともないよ。結婚前提なら考えるかもしれないけど」


「重いね」


「重いですね」


「そう、かな?」


「なんか、連君らしいね」


一旦は話題を逸らすことができただろう……胸を一旦なで下ろす。それにしても、雫と千夏の反応が普通だと思っていたのに、意外と半々に分かれるものだな。そんなことを思いながら、俺は深く息を吐く。


思い出を振り返るときってこんなに、緊張するものだったっけ……。若干気疲れしつつ、そんなことを思うのだった。

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