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義妹とクラスメイトから迫られる~義妹の信頼を積み重ねるために行動していたら、クラスメイトからも好かれました~  作者: 夢見る冒険者


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帰宅

入学式が終わり、クラスに戻る。式典の空気はまだ教室に残っていて、どこか静かな空気が漂っている。教壇に立った担任の教師が、淡々と明日以降の流れや校内施設の説明を始めた。


担任の言葉を聞きながら、俺は斜め前方に座る一人の少女に、視線を向けていた。夢咲 桜――あの、校門でひと際目を引いた少女を見つめる。


凛とした空気を纏いながらも、周囲のどの生徒とも関わろうとしない孤高の存在。無理に避けているというより、彼女のほうが“関わりを持たない”と決めているように見えた。


周囲の生徒たちも、それを感じ取っているのだろう。勉強ができる事が正しいとされるこの学校では彼女に対してライバル心を抱く人の方が多いかもしれない。羨望。そして、嫉妬。


俺以外にも彼女に視線を送る人物が見える。あれは恋愛感情ではないだろうな。同性の女性が睨むように彼女を見つめていてそう思った。


「じゃあ、中野さんまた明日」


「はい。また明日」


そう言って、俺達は挨拶をして別れる。流石に夢咲さんは目立っているな。周りを見渡しても、沢山の人物が彼女に注目しているのがわかる。先程の好奇な目線だけではない。やはり、皆んなが彼女をライバルとしてみているのがわかる。


流石は進学校だな。勉強面で負けたくないという思いが皆から感じられるのが嬉しく感じる。あまり見つめるのも失礼だろうと思い、教室を見渡して二人の姿を探す。


「よっ、大翔」


俺は二人の姿を発見すると近づいて声をかけた。すぐに返事が返ってくる。


「よっ、連。お疲れ様」


「二人ともお疲れ様です」


有明と大翔。気心の知れた二人だ。緊張感に包まれていた教室の中でも彼らと話すだけで、ほんの少しだけ肩の力が抜ける気がする。


「二人とも、今日は両親と帰るよな?」


流石に両親にこの空気感で接するわけにはいかないと、普段通りの話題を振る。


「もちろんそうですね。今頃、僕達を待っている間に、親同士で盛り上がってるでしょうし」


「だな。席の隣同士で座ってたし、相変わらずの仲だよな」


有明も大翔が嬉しそうに話す。入学式の光景を思い返すと確かに親同士が隣に並んでいた。相変わらず仲が良さそうで、楽しそうに小声で話しているのが見てとれた。


「どうする教室の雰囲気とか知りたいだろうし、写真でも撮っていくか?」


「そうですね。ついでに僕達が一緒に写真を撮ると喜びそうですしね」


「なら、撮るしかないな」


他の生徒がいなくなった教室で、三人並んで記念写真を撮る。ただ、それだけなのに何かいけない事をしているようで、特別感を感じて楽しくなる。そんなワクワクした気持ちのまま、両親達と遭遇する。


案の定、校内の撮影可能なスペースで何枚か撮影することになり、何タイマーを駆使して写真を撮った。


「大きくなりましたね」


「昔からの付き合いだったのに、もう高校生だもんな」


有明や大翔の両親たちに、そんなふうに感動される。まだ、学校生活は始まってもいないんだけどなと少し照れ臭くもあり、うれしく感じる。


「いやいや、まだ一ヶ月くらいしか経っていないですよ?」


「それでも人は変わるもんさ。3日会わざればという奴だな」


冗談混じりに言いながら、なんだか未来の自分達を、少しだけ想像してしまう。――もし有明や大翔が大人になったら、こんな感じになるんだろうか。


その後も少し話をして、俺たちはそれぞれ帰路につく。


「昼、どこかで食べてくか?」


「そうですね、リンドカフェとかどうですか?」


「確かにあそこは雰囲気もいいしな。この時間なら空いてるだろ」


そう両親が話し合いながら、駅前へと向かっていった。お腹を満たし、明日以降の予定を話す。両親は半休を取っていたらしく、直ぐに仕事へと戻る必要があるそうだ。


忙しい中、俺のために頑張ってくれているのは嬉しく感じる。


「ありがとう」


俺はできるだけの笑みを浮かべて告げるのだった。両親漏れしそうに笑ってくれる。そのまま別れて、俺は自宅へとついた。


「ただいま」


玄関に向かって呟いても、返事はない。それでも、そうやって言いたくなるような一日だった。制服から着替えて、俺は机に向かう。


家について、予習済ませる。出来るだけ勧めておかないと後で後悔をすると理解しての行動だ。


「おかえりなさい」


そう声が聞こえてきて、時計を見ると既に16時近くなっていた。割と集中して取り組めていたようだ。俺も下に降りていくと、妹は少しだけ残念そうな顔をする。


「お兄ちゃんの晴れ姿見たかったんだけど......制服、もう脱いじゃったんだ」


「朝見ただろ?」


俺がそう疑問を持って問いかけると、そうじゃないのにとどこか納得が言っていないようだった。


「例えば、私が進学して制服で入学するでしょ、そのめでたい日の衣装を見ておきたいって思わない?」


俺は想像をしてみる。義妹が入学をして、帰った時にその制服を着ている姿を。そして、仮に私服に着替えて待っていた時の事を。


確かに、高校の入学式という二度とないイベントに来ていた姿のままを見てみたいと思った。私服だとどこか損したような気分になる。


もちろん、私服姿の義妹はめちゃくちゃカワイイという事を前提に置いた上でだ。


「確かに、これは俺が間違っていた」


「でしょ」


「すまないが、少し待っててもらっていい?」


「うん」


そう言われたのを確認して、俺は再度制服の袖に腕を通す。朝よりも入念にチェックをする。


「どう、かな?」


俺はそう、恐る恐る聞いてみる。


「やっぱりお兄ちゃんにその服が似合うね」


(というか、お兄ちゃんに似合わない服なんてないけど)


何かを小声で呟いているからかよく聞き取れない。顔を近づけて聞いてみたい気持ちもあるが、流石にそこは躊躇すべきだろうという気持ちが湧いてくる。


「お兄ちゃん、どうせ勉強していたんでしょ?」


流石に妹にはお見通しか。そんな風に思いながら、嬉しいと感じた。


「分からないところあった?」


そう無垢な顔で聞いてくる。昔はその事で嫉妬したこともあったなと思う。けど今は違う。


「じゃあ、ここは理解しづらかったから、教えてもらおうかな」


「どれどれ」


などと言いながら、問題集を確認している。難なく読み進めていることから、既にに履修済みな事がわかる。


俺も負けるわけにはいかないな。などと思いながら妹に教わるのだった。

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