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鉄の王

 地下王国の鍛冶場は、昼夜の区別なく火が灯っていた。

 赤熱した鉄を打つ槌の音が、岩壁に反響している。

 火花が散り、熱気が肌を灼く。

 その中心で、ひときわ大柄なドワーフが、黙々と鉄を打っていた。

 王冠も玉座もない。

 煤に汚れた作業着のまま、腕まくりをした姿で。

 やがて足音に気づいたのか、ドワーフは槌を止め、振り返った。


「……おっ、おいでなすったな」


三人の姿を認めると、手を止めこちらに向き直る。


「ちょいと待ってろ」


 打ちかけの鉄を台に戻し、火の勢いを落とす。

 厚手の布で手を拭った。


「調子はどうだい?セレスト嬢」


ドワーフは聖女を一瞥して聞く。


「お気遣いいただきありがとうございます、バルグリム王」


「ふん、よせやい鍛冶場で堅苦しいのはナシだ」


そしてバルグリムは運び屋を見て。


「おう!あんちゃん元気そうじゃねぇーか!ガッハッハ!」


 腹の底から響く豪快な笑い声。

 鍛冶場の熱気に負けぬ、重厚な声だった。


「お初にお目にかかります、バルグリム王

この数日お部屋と寝床をお貸しいただきありがとうございます」


威圧感に押されながらも、運び屋は何とか返事する。


「構わしねぇタマ

張ったんだ、なかなかできることじゃね」


「知ってるみたいだが改めて

俺はバルグリム・ストーンハートこの国を預かってる」


「ご丁寧にありがとうございます。日向鐵と申します、しがない運び屋です」


「しがない、ねぇ……しがない奴ぁ、飛び出して刃ぁ受けねぇよ」


 鋭いが、どこか愉快そうな目。


「まあいい、よろしくなあんちゃん。」


 バルグリムは顎髭を撫でる。

 そう言いながらも、バルグリムはふと周囲に視線を巡らせた。

 鍛冶場には職人や兵の出入りがある。

 槌音の向こうで、耳を澄ませば会話も拾えるだろう。

王の目が、一瞬だけ冷える。


「おう、おめぇーら俺は客人と話してくる。

あとはまかせるぞ」


「はっ!」


 威勢のいい返答。


 バルグリムは顎で奥を示す。


「こっちだ。少し静かな場所で話そうや」


 火花と熱を背に、四人は鍛冶場の奥へと歩き出した。

 岩壁の向こうには、王の私室兼執務室へ続く通路が口を開けている。

 槌音は、次第に遠ざかっていった。



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