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三題噺もどき3

助け

作者: 狐彪

三題噺もどき―よんひゃくよんじゅうなな。

 


 何かが呼ぶ声が聞こえた。


「……」

 感覚がぼやけている。

「……」

 ここ数日同じような夢を見ては、息苦しさで目覚め。

 瞼を上げても、光がそこにないことがわかるだけで。

 また、一日無駄に過ごしてしまったと分かるだけで。

 何度もそれを繰り返して。

「……」

 また、声が聞こえた。

「……」

 何だろう。

 いま私がいるのは、現実なんだろうか。

 まだ夢の中にいるんだろうか。

 また、希望を見せつけて、落とすんだろうか。

「……」

 また声が聞こえた。

 それに続いて、視界に光が入り込んだ。

「――っ」

 思わず、瞼を閉じた。

 急な光の訪れに、耐えきれなかった。

 暗さに慣れた視界は、光を受け入れるのに時間がかかる。

「――」

 また声が聞こえた。

 ようやく少しはっきりとしてきた。

 声は、聴きなれたものだった。

 どこか、叫び声に聞こえるのは気のせいだろうか。

「……」

 恐る恐る瞼を上げ、ようやく光を受け入れる。

 まだ少し目の奥がチカチカとする。

 視界はぼやけているが、そこに何かの影があることは分かった。

「……」

 鼓膜を叩く音は、少し穏やかになり。

 影から手が伸びたと思えば、ヒヤリと頬を撫でた。

 ようやく、現実に引き戻された感覚がした。

「――」

 視界がはっきりと見えだし。

 声もはっきりと聞こえだした。


「おねえちゃん」


 目の前にあった影は、妹のものだった。

 まだ不安の滲むようなその表情は、どれだけ心配をかけたのか分かってしまう程。

 それでも、どこか安堵が見え隠れする。

「――、?」

 さて、声が出たかどうか。

 会話なんて何日もしていないものだから、喉がキリリと、ねじれたような感覚だった。

 息が漏れただけに終わったかもしれない。

「ん……水飲む?」

 それを察してか、妹は立ち上がり歩いて行った。

 それをみて。

 私は、なぜか、不安を覚えた。

「――ぁ」

 突き動かされるように腕を伸ばし。

 立ち上がった妹の腕を握ってしまった。

 思いのほか強く握ったのか、妹はつんのめるように立ち止まった。

「どうしたの?」

 水を取りに行くだけだよ、と言いながら。

 また顔を覗き込む妹。

 ついさっきまでの不安が嘘のように消え、何かがすとんと落ち着いた。

「―起きれる?」

 ホントに、察しのいい妹だ。

 今、この状態では私は1人にはなれない。

 また、落ちるのではないかと。そう思ってしまうから。

「ん……起きる」

 ゆっくりと体を起こし、床へと足を落とす。

 その間も、妹は手を握ってくれていた。

 その温かさが、今はありがたかった。

 寝室から出て、リビングへと向かう。

 その道中でさえも。

 妹は助けてくれた。




 それから少しして。

 ようやく、色々と落ち着きだした時。

 はたと、今更ながらに。

「―なんでここに居たの?」

 なんてことを聞いてみた。

 あれだけ助けてもらっておきながら、なかなかの聞き方だなと我ながら思うが。

 妹がここに居る理由があまり分かっていない。

「心配したからだよ」

 曰く。

 最近連絡が取れずにいたと。

 それぐらいは今まで何度かあったので、最初は大丈夫だと思っていたらしいのだが。

 今日になって。

 丁度休みだったからと、我が家に訪ねてきたらしいのだが。

 チャイムを鳴らしても返事がなし。

 ポストの中身もいろんなものが入ったまま。

 それで、持っていた合鍵で入ってきたらしい。

 そしたら、部屋の中は暗いし重いし。

 いつもいるはずのリビングにはいないし。

 寝室にかけてみれば、息苦しそうにしていたし。

「だからだよ」

 ―らしい。

 ううん……我ながら、迷惑をかけすぎじゃないのか。

 まだ少し1人でいるには不安だし。

 今は何とか、こうして生きてはいるが。

「……」

「別に気にしなくていいんだって……家族なんだからさ」

「……ん……ありがと…」

 まだ罪悪感に似たような何かが凝っているが。

 今日はいいか。







 お題:寝室・叫ぶ・妹

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