第六章 3
「はぁ、はぁ……終わった、のか……?」
俺は、ビーストフレームを解除し地面に降り立つ。
ぬいぐるみ姿のヴァイロンが、足元にやってきて口を開いた。
「……ああ、風吾。私たちの勝利だ……!」
その言葉に、俺は大きく息を吐き、そして天を仰いだ。
——やったよ、シスター……。
気づけば俺は、大地に寝そべり空を眺めていた。
頭の中に、この長く短い戦いの、その全ての記憶が巡る。
……あの絶望の中で見た白昼夢。あれは一体、なんだったのだろう。夢だろうか、それともブレスギアの知られざる力だろうか……?
——いいや、きっとそのどちらでもない。あれは、人が神と呼ぶ存在が引き起こした奇跡なのだろう。そして、シスターがいつでも側にいてくれている、証そのものなのだと思う。
俺は、あの神秘的な体験を生涯忘れないだろう……。
「お〜い! 風吾さ〜ん‼︎」
見ると、翔助が手を振ってこちらに向かって歩いてきていた。横にはとらもいる。翔助に肩を貸してもらいながら、こちらに向かって笑いかけていた。
「——翔助! とら!」
俺はバッと立ち上がり、二人のもとへ駆け寄った。
「よかった、無事だったか……!」
俺がそう言うと、フラフラのとらが俺に飛びついてきて両腕を俺の背中に回した。俺は驚き、後ろによろける……が、なんとかその体重を受け止め、立ちをキープする。
彼女は俺をギューっと抱きしめてから顔をあげ、泣きそう顔を必死で抑えるように思いっきり笑った。
「……こっちのセリフ。……バカッ!」
俺はフッと笑うと、両腕でその細く強い身体を抱きしめた。
「ありがとう、とら……」
「おやおやおや……、俺が居ない間に、随分仲良しになってるじゃな〜い」
翔助が、いつものおちゃらけたトーンでそう言う。
それを聞いたとらがパッと腕を解き倒れそうになったので、俺は慌ててその腕を取って肩を貸した。それからフッと笑って、俺は翔助の方へ体を向けた。
俺は翔助に右手を差し出し、その目を真っ直ぐ見つめる。
「……奪い返しにきたぜ、翔助。一緒に帰ろう!」
俺の言葉に、翔助は一瞬目を潤ませた。しかしすぐにそれを隠すと、いつもとはまた違った、柔らかい笑顔でその手を取った。
「……ああ! ただいま、風吾さん」
「おかえり、翔助……!」
俺たちは顔を見合わせ、ニコッと笑った。
「……ちょっと、私は?」
「私の存在も、忘れられては困るな……」
名前を呼ばれなかったとらとヴァイロンが、わざとらしく拗ねてみせる。それを受けて、翔助は笑いながら「ごめんごめん」と謝り、二人にも「ただいま」と言った。
俺たちはこの戦闘で変わり果てた周囲を見回し、ハハッと笑った。
それから、この激闘の勝利を祝って互いに拳を合わせたのだった。




