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第六章 「祝福を受けし器」

「……なんということだ。あの女、私にとんでもない隠し事をしていた……!」

 フェニックスがドスの効いた低い声で呟いた。

 感動の再会にひたっていた俺たちは、すぐにその視線を目の前の強敵に向ける。

「……ヴァイロン、まだ終わっていない」

「ああ……」

 俺はヴァイロンをそっと地面に置くと、ビーストフレームを展開した。


「——え?」

 俺はすっとんきょうな声を出して驚く。

 俺の周囲に現れたのは、今までの二倍以上の大きさのビーストフレームだった。さらに驚くべきは、そのビーストフレームの精度である。自分の思うように動く。まるで、自分とヴァイロンが一つにつながっているような感覚だ。尻尾の先からまぶたを動かす筋肉まで、それらが俺の意思に応えて凄まじい精度で動いているのがわかった。

「なんだ? これ……」

 想定外の出来事に困惑する俺を見て、静観していたセバスが先手必勝とばかりに攻撃を仕掛けてくる。

「——うぉ!」

 俺は、目の前に飛んできた蜂を追い払う時のように手を払った。すると、ヴァイロンの鼻は、飛んできたセバスをハエの如く引っ叩き、遥か彼方へと吹っ飛ばした。

 吹き飛ばされたセバスは、一キロほど先の瓦礫の山に突っ込み、そのまま静止した。

 ——ビーストフレームとしての、質が違う。そんな感覚だった。

 そのサイズ、速さ、連動の感覚、全てが異次元。

 あえて言葉にするなら、顕現率百二十パーセント、といった感じだろうか。


 セバスが一瞬でやられたのを見て、他の戦士たちが戸惑っている。そんな中、フェニックスは高らかに笑始めた。

「フフ、フハハハハ! 素晴らしい! 素晴らしいぞ! これが、獣を宿した人間の力か! ……何をしている! お前たち、フレイムに攻撃を仕掛けろ!」

 フェニックスの号令を受けて、残りの配下たちが攻撃を仕掛けてくる。しかし、俺にはその動きがとても歪なものに見えた。

 なんて単調な動き、簡単に振り払える。

「——ぐわぁ!」「——ぎゃぁ!」「——ぐはっ!」

 一瞬にして全ての敵を沈めた俺に、ライプトが襲いかかる。

「ヴァイロン‼︎ 生きていたか。嬉しいぞ、我が宿敵よ……‼︎」

「ずいぶん久しぶりな気がするぞ、ライプト。……残念だ。できれば、この域に達した貴様と戦いたかった」

「——何⁉︎」

 俺たちは鼻を振り、カウンターの一撃でライプトを吹き飛ばした。この攻撃で、ライプトのビーストフレームにヒビが入る。

「……これではいじめになってしまう」

「貴様ぁ……‼」

 遠くへ飛ばされたライプトは、目の色を変えてこちらを睨みつけた。

「……これで、目的の半分は達成したな。風吾よ」

「ああ……」

 俺は、手のように形作った万能粒子を柔らかいスポンジのような物体へ変える。

 そしてその手を使って、宙を舞う翔助をそっと受け止めた。

 先程の一撃で、翔助はフェニックスの手から離れ、ビーストフレームの外へと投げ出されていた。ビーストフレームの発動者はビーストフレームと共に吹き飛ぶが、中にいただけの人間は違う。フェニックスは、翔助を保持しておくことができなかった。

「——何⁉︎ おい、フェニックス‼︎」

 俺は受け止めた翔助を、そっと、とらの側に下ろした。

 ちょうどそのタイミングで、翔助の洗脳が解ける。

「あれ、俺は……」

「翔助! とらを治してやってくれ! 大急ぎだ‼︎」

「え……? うわぁ! 大変だ!」

 翔助はすかさずタスクライトを発動させる。やがて、再生能力によって癒された彼女が目を覚ますのが見えた。

「……よかった。ありがとう!」

「風吾さん! こりゃ一体……?」

「——そこで待っていてくれ。俺は最後の、決着をつける!」

 そう言って、俺はフェニックスの前へと舞い降りた。


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