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第五章 4

 こちらの一撃に驚いたフェニックスが、後退し距離を取る。

「まったく、不思議だな。牙はもぎきったと思ったのに。どうやら躾が必要なようだ……ライプト!」

「当たり前だ。ヴァイロンの野郎を、ぶち殺してやる……‼︎」

 ケルベロス——ライプトは全身の毛を逆立て、牙を向く。

 それと同時に、フェニックスがタスクライトを発動させた。

「来るぞ! とら、奴の能力は覚えているな⁈」

「もちろん! 『洗脳』『圧縮』『ストック』‼︎」

「よし!」

 ——ガキーン

 トラとライプトが激しい音を立てて衝突する。パワーは互角。万能粒子で強化している状態で互角である。やはり、ライプトの基本戦闘能力はとてつもなく高い。

 だが、前とは違う。砕かれずに対抗できているのだ。

 次の瞬間、フェニックスのタスクライトが弾けた。それを見て、俺たちは一気に後退し距離を取る。

 ——しかし、何も起きない。

「……今のは『ストック』だ。ここからは一瞬の油断が命取りになるぞ」

 ライプトは再び距離を詰めてくる。両前足に加えて三つの頭、対してこっちは両前足と頭一つである。ビーストフレーム戦においては、単純な手数で圧倒されてしまう。

 ——次の瞬間、何の前触れもなく、トラの左足に球体の歪みが発生する。

「——まずい!」

 直後その歪みは収縮し、トラの左足が千切れる。バランスを崩したタイミングで、ライプトの爪と牙が襲いかかった。

「くそっ!」

 俺は万能粒子でゴムの壁を作り、間合いを確保する時間を作った。


 ……一瞬でピンチに陥った。それを生み出したのはノーモーションの『圧縮』攻撃、そして『ストック』という厄介な能力だ。

 ドライ・トー・プフントの能力『ストック』は、能力一回分のタスクライトを事前に処理しストックしておくことができる。つまり、予備動作無しで能力を発動できるというわけだ。この能力と、あらゆる物体を空間ごと圧縮してしまう『圧縮』の力の組み合わせが非常に強力。『圧縮』能力の射程はとても広いため、ほぼ回避不可能の攻撃となるのだ。

 ——だがこっちにも!

 万能粒子が時間切れを迎え、とらが『吸引』能力を発動させた。そして、引き込まれたところに合わせるカウンターパンチ、トラパンチを繰り出す。

 ——ガキーン!

 この技が、初見のフェニックスとライプトに直撃する。

「こっちにも、強力なコンビネーション技がある!」

 トラパンチ(仮称)を受けたライプトは、吹き飛ばされながらもしっかり受け身をとっており、地面を一度バウンドした後で四足でしっかりと着地し立ち止まった。

「……よくわかった。格下と侮ったのが我の過ち、もう侮らぬ。徹底的に潰す!」

 この一撃で、ライプトの目の色が変わる。その間にも、フェニックスは手元でタスクライトを処理し『ストック』を終えている。続けての被弾にも冷静さを失わない姿、明らかに今まで相手してきた者とは格が違う。

 それでも、俺たちがやることは変わらない。全力でコイツらを叩き潰すだけだ!

「ここからだ、とら……!」

「ええ……!」

 俺たちは互いに構えた。


「——やめろ〜! もう戦うな〜‼︎」

 突如、下の方から聴き慣れた声が聞こえてきた。

 見ると、足元に翔助がいた。ビーストフレームで走ってきたのか、大汗をかき、息を荒げている。

「「翔助‼︎」」

 探していた対象が自ら姿を現したことに、俺達は驚きながらも叫び、声をかけた。

「——フェニックス、今すぐ戦いをやめろ! 俺がコイツらを帰らせる!」

「ほう……」

 翔助の言葉に、俺たちは互いに動きを止める。

「……翔助、何言ってんだ?」

 俺は驚いたまま翔助に尋ねる。とらも、予想外の一言に困惑している様子だった。

 翔助はそんな俺たちの方を向くと、大声で叫んだ。

「もう帰ってくれ! 俺は自分のブレスギアさえ守れれば、それでいいんだよ! お前らにこられても……め、迷惑なんだ‼︎ とっとと帰ってくれ! 誰も助けてくれなんて頼んでねぇ! とっとと引き返して、どっかいっちまえ〜‼︎」

 翔助は迫真の演技でそう言う。それが演技であることが、俺にはわかった。俺たちをこれ以上フェニックスと戦わせないための嘘だと。


 ……もしかしたら、そうすることが互いにとって良いことなのかもしれない。確かに、翔助にとって一番大事なのは形見のブレスギアを守ることなのだろうし、フェニックスのもとにいればそれが確実に叶うだろう。むしろ、翔助のことを考えれば俺たちがしているのはただの妨害なのかもしれない。

 少し前の俺なら、そう考えただろう……。

 ——だが、そんなことどうだっていい!


「——うるせえ! お前の迷惑とか知ったことか! 俺たちは俺たちの意思でここに来た。俺は、俺の意思でここに来たんだ! お前を取り戻しにきた? 冗談じゃない! 俺はお前を奪いに来たんだ! お前の意思なんてこの際どうだっていい! 俺は……、お前と旅がしたいんだよ! ごちゃごちゃ言ってないでさっさと戻ってこい! お前の居場所は、ここにあんだよ……‼︎」

 俺の言葉に、翔助は膝から崩れ落ちた。その目には涙が溢れ、ぐちゃぐちゃな顔で俺を見つめている。

「フフ、何それ妬けちゃう……。ほら翔助、らしくもない真剣な顔なんかやめて、いつものバカ顔で帰ってきなさい!」

 とらもそう言って、翔助に向かって手を差し伸べる。

 翔助は両腕で涙をぬぐり、俺たちに向かってニカッと笑った。

「……そうか、俺、ずっと探していたんだ。自分の居場所ってやつを……。風吾さん、とらちゃん。こんな俺だけど、また一緒に、旅をしてくれるか?」

 俺ととらは顔を見合わせると、ニッと笑った。

「当たり前だろ! さっさと来い!」

 翔助は花咲いたように笑って、俺たちへと歩み寄った。


「——やれやれ、結局こうなるのか。」

 刹那、フェニックスが翔助の背後に立った。

「——翔助!」

 これまで一度も見せてこなかったほど俊敏な動きに、俺たちの反応も遅れる。

「だがそうはいかない。働いてもらうぞ、私の駒として……」

 直後、フェニックスが翔助の肩にポンッと手を置いた。

 ——その瞬間、翔助の身体が禍々しい光に包まれる。

 俺はこれを知っていた。『洗脳』能力だ。『ストック』によって、洗脳能力がノーモーションで発動されてしまったのだ。

「クソッ、翔助‼︎」

「さあ翔助、ここに倒れている戦士達を『再生』させるんだ…‥」

 フェニックスがそう言うと、翔助はゆっくりと倒れている者達に向かって歩き始める。

「待て翔助!」

 俺たちは翔助を止めようとするが、ライプトによってそれを阻まれてしまう。

 翔助は次々に能力を発動させ、倒れた敵の肉体組織を『再生』——復活させていった。


「……マジかよ」

 俺たちの前に、先ほど倒したビーストフレームが次々と立ちはだかる。そしてその中心には、一対一でも苦戦していたライプトとフェニックスが立っていた。

「素晴らしい、素晴らしい力だ! これは是が非でも我が手中に収めておきたい……」

 フェニックスは翔助を自身のビーストフレームの内側に入れ、その肩に手を置いた。

 絶望的状況である。しかし、それでも俺はまだ諦めていなかった。

「風吾……」

「大丈夫だ、とら。まだ手はある。洗脳能力は、一分で切れるようになっている。再びかけるにはもう一度直に触れる必要があるんだ。翔助がいる限り、いくら相手を倒しても復活されてしまう。だからまず、どうにかして翔助とフェニックスを切り離すんだ……!」

 俺の言葉に、とらはうなずく。俺はすかさず、大量のタスクライトを出現させた。

 ——諦めるわけにはいかない! 俺は、この男を倒さなければならない。たとえそれが、どんなに困難なことであろうとも……‼︎

 俺は万能粒子で作った爆弾を駆使して、煙幕を発生させた。そうして視界を遮った隙に、一体ずつ攻撃を仕掛け撃破していく。

 しかし、敵のフクロウのビーストフレームの起こす『竜巻』によって、煙幕を吹き散らされてしまう。さらには訓練された連携攻撃に被弾を繰り返し、とてもフェニックスのもとまで辿り着けない。

 そのまま最初の一分を迎え、一瞬翔助の洗脳が解けるが、すぐに再び洗脳にかけられてしまう。

 幸いだったのは、『ストック』を再洗脳のためにキープしているおかげで、ノーモーション『圧縮』攻撃が来ないことだった。

 しかし、それでもなお余りあるライプトの戦闘能力、周りの配下達による援護、倒してもすぐに復活させてしまう翔助の再生によって、俺たちは確実に追い詰められていった。


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