宇宙からの刺客
むかしのこと。とある星から来た宇宙人たちによる、地球人女性の誘拐が横行していた。
彼らは人間と自分たちの遺伝子を混ぜ合わせた優秀な雑種を作り、指導者に仕立て上げ、人類の支配を目論んだのだ。
孕ませると言っても人間がするような原始的な方法をとらない。彼らに言わせれば反吐が出るといったところ。彼らの星の文明は地球のそれより遥か上を行っており、機器を女の陰部に押し当てるだけ、ものの一分足らずで事が済むのだ。
よって淡々と。そして慣れてくると、念のためにとわざわざ誘拐し船内で処置せずとも寝室に忍び込み、ササッと済ませるようになった。
しかし、人間と猿が子を作るようなもので、彼らの力をもってしても中々思うように行かず、生まれた子は何とも半端な、平たく言うと醜く産まれた。
これでは、いくら賢ろうが特殊な能力があろうが人々の上に立つことなどできぬ。
彼らは調整に調整を重ね、試行錯誤の末についに、それに相応しい子が産まれた。
その子は背が伸びるにつれ、聡明で素晴らしい人格を持った。卓越した頭脳を持ち、また顔、声質等、彼らの望み通りのものとなり、やがて、その子は三十歳の頃、各地を回り始め宇宙人の素晴らしさを説くようになった
始めは皆訝しがったが、病気や怪我を癒すなど不思議な力を見せると人々は涙を流し縋るようになり、弟子までついた。
無論、それも宇宙人が彼の体に埋め込んだ装置の力であり、知識や苦難に遭った際の立ち回りも全て、宇宙船から宇宙人が彼の脳内へ指示を出していたのである。時には自作自演のようなこともした。
ゆえに彼に対し疑念を抱いた多少、賢い者が彼に問いかけても、いともたやすく説き伏せ、弟子にしてしまうのである。
やがて、彼の名が各地へ広まると不出来で醜悪な失敗作たちが、その噂を聞きつけ彼に会いにきた。
失敗作たちも宇宙人が彼に向けて出す指令を不完全ながらキャッチすることができ、自分たちが何者なのかを推測。大まかながらに把握していたのだ。
そして彼らは宇宙人たちを否定、侮蔑するようなことを言い、彼に目覚めるよう自らを解放し自分たちの仲間になるよう言ったが、彼は得意の屁理屈でそれらを退け、そして宇宙人に命じられるまま、仲間たちと一緒になって失敗作たちを罵り殺した。
時に催眠術を使い、彼は人々を誘惑し続け、順調に同志を集めていたが、それを恐れ、また彼の異質さを本能的に感づいた人々によって彼は十字架に貼り付けにされ死に至らしめられるのだが、墓に埋葬された遺体は宇宙人の手により、その三日後に復活。
弟子たちの前に姿を現しそして、またも宇宙人たちの素晴らしさを語った。
だが、人々の追撃の手を恐れた彼は宇宙人に助けを求め、宇宙人たちもここらが潮時。成功品の回収、分析が重要だと考え彼を回収し、宇宙船は地球を離れたのだった。
その後、彼の思想は地球人類に深く根付いた。
機を見て、やがてまた新たな『彼』が送り込まれるであろう。




