両思い
優希がプロポーズされてから三日が経った。中学校の放課後、帰ってきてから自室で士郎の言葉を反芻する。
「『妥協する』、か」
分かる、分かるけど納得行かないのが事実だ。結婚したいのは本当なのに真面目に考えてくれないのが嫌だった。
好き好きアピールが逆効果だったんだ。でもしょうがないじゃない。好きなのは本当なんだから。でも軽い気持ちで結婚したくないよ。一生添い遂げたいのも事実だから優希は思い悩む。
(お兄ちゃん、もっと真面目かと思ってたのになあ)
いやいやと思い直す。自分の「好き」が重すぎたからキレちゃったんだからあれは心の底からの発言じゃないよ……多分。
もう考えていてもだめだ。お兄ちゃんに確認しなきゃ! 優希は席を立った。
リビングに士郎はいた。ソファーに座ってぼーっとしている。
「お兄ちゃん」
「なんだよ」
「お試し結婚の話なんだけど……」
「ああ、その気になったか?」
「ち、違うよ! 冗談じゃないの? この話自体が」
「じゃあお前俺と結婚したくないの?」
「したいけど……ノリが」
「まあ、そうだよな。軽すぎると自分でもわかってるよ」
「じゃあなんでこんな事言い出したの?」
「でも俺はもう決めたんだよ。お前から逃げない事にしたんだ」
「逃げないって言われても……なんかやっぱり納得行かない」
「じゃあ言い替えようか。俺はお前を愛してるよ妹としても『女』としても」
「え……お、『女』としても?」
「女としても好きじゃなきゃプロポーズしないだろ。妹のイメージは取れないけどそれでも結婚してもいいよ」
「う、嬉しいけど本音隠してない? あんなに拒絶してたのに」
「しばらく考える時間お前にもらっただろ?」
「う、うん」
「もうこの関係が終わるにはお前と結婚するしかないだろ。面倒なだけじゃなくて未来まで考えた結果の結論なんだよ」
「じゃあお試し結婚って……」
「言い替えるよ、将来結婚しよう、本気で」
「な、なんだ。それなら私受け入れられるよ。お兄ちゃんは私と結婚したいのかぁ……ぐふふ」
優希は天にも昇る気持ちだった。まさか本気で好きになってもらえる日が来るとは。
「『女』として見ようと何度も葛藤したけどやっと出来そうな気がしたから告白した訳だよ」
「じゃ私たち両思いなんだね?」
優希が確認する。
「ああ」
「じゃ、じゃあさ唇にキスして」
「……まあ、いいか」
優希と士郎の二人の唇が重なる。
タイトル通りの展開ではないですが、この話はここで一区切り。
続くかどうかは未定です。
完。