結婚
頭を休ませる為に士郎が休憩をもらってから一ヶ月が過ぎていた。
そんなとある日の事だ。
リビングでくつろいでる優希に士郎が声をかけた。
「なあ優希」
「何、お兄ちゃん」
「お前が十八歳になったら結婚すっか」
「は、はい!?」
「まあ、そうだろうな。その反応だよな」
「だ、だってお兄ちゃん、あんなに拒否反応起こしてたじゃない!? あれは嘘だったの!?」
「なんか考えるのが面倒になったからな。どうせ俺には好きな人もできないしお前で妥協しとくのもいいかなって」
「お兄ちゃん!!」
「何だよ大声だして」
「『妥協』するなんて考え方で結婚なんてしたくありません!」
優希が気色ばむ。
「だってお前俺の事好きなんだろ」
「す、好きだけどこういう事は両思いじゃないと成り立たないよ」
「面倒じゃないか? 俺考えたくないんだよ、だったらお見合い結婚みたいに結婚してから愛を育てる……どうよ」
「えー、何かヤダ! お兄ちゃんそんな軽い考え方の人だったの……幻滅するんですけど」
「お前が俺をここまで追い詰めたんだろ。本音は面倒なんだから妹から愛の告白は」
「面倒ってさっきから何度も言ってるけど……そんなに迷惑なの?」
「迷惑とかじゃないって。ただお前の望みの究極が結婚なら、そうしてやってから後でどう考えるかは自由じゃないかって」
「……なんか浮気されそうでやなんですけど」
「浮気? しないって」
「なんか納得行かない。軽いノリで結婚したくありません!」
「そっか。じゃこの話はお流れな。そういう事で優希は俺と結婚したくない、と」
士郎がその場を離れようとすると、
「ま、待ってよ! したくない訳じゃないよ。だけど軽すぎるから、納得行かないだけで……」
「でも同じだろ行為はどっちでも」
「うー。お兄ちゃん。そう来るの? こっちが悪いみたいな気分なんですけど」
「うん、お前が悪い」
「……やめる」
「は? 何を?」
「もうお兄ちゃんに好き好き言うの止める」
「……」
「だってひどいよお兄ちゃん。私で『妥協する』って何さ! そんな都合のいい女じゃないよ! 私は!」
「ならそれでいいだろ。俺も自由になるし」
「うー。納得行かない!! 私はお兄ちゃんの愛人じゃないんだからね!」
「俺だってお前の愛人じゃないからおあいこだろ」
「……こんな風に返されるの予想外だった」
「じゃ婚約は無しな」
「ちょっ、ちょっと待ってよ。したい、したいよ。結婚したい」
「どっちなんだよ」
「でも軽い気持ちは嫌なの!」
「俺はどっちでもいいけどな。軽かろうが重かろうが、どうせ一生お前と一緒なんだろうから。添い遂げたいって言ってたろ」
「う、うぅ。まさかこんなブーメランが来るとは……わかったよお兄ちゃんもっと大人になってからにしよっか結婚は」
「よしよし。それがいいぞ」
士郎は優希の頭を撫でてやった。優希は複雑そうな顔をしている。
もう少しだけ士郎と優希のお話は続く。