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ギャルを誘拐した。そして監禁した。  作者: 樫村ゆうか
第二章 電波少女が首を吊った。そして探偵が現れた。
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役割の再認識

 突然目が覚めた。映画館を途中で追い出されたかのような中途半端な目覚めだ。


 反射的に窓の外へ視線をやった。驚くほどに晴れていた。昨日とは大違いだ。世界はしっかりと日付を更新したようだ。

 

 それなのに僕は昨日をまだ引きづっていた。霞がかった思考でさえも、夢を反芻している。体は今日へと歩みを進めているのに、思考は昨日に置いてきぼりのままだ。なんだか生きたまま棺桶に入れられたような気分だ。

 

 このままの状態で今日を過ごすのは、よくない。顔を洗っても、歯を磨いても、胃に食事を迎えても、数式を頭に詰めても、僕には何一つ届かないのだから。しかも今日はコマちゃんと捜査の続きをしなければいけない。この状態では足元をすくわれてしまうかもしれない。

 

 なので、置いてきた思考を取り戻すために昨日の夢を、今日の僕が思い出して、結論を出さなければいけない。

 

 夢は由宇ちゃんとの出会いだった。場所は氷川神社。思えば、僕と由宇ちゃんは斐川神社で出会い、斐川神社で別れたことになる。そこに何か意味があるのか考えて見るが、特に思い当たることはなかった。そもそも斐川神社は、ただの神社でしかない。曰くがあるわけでも、特別な場所にあるわけでもない。ただの古びた神社だ。だから重要なのは、斐川神社ではなく、由宇ちゃんとの会話。

 

 初対面時の会話としては、酷いものだった。第三者の視点から見れば、僕も由宇ちゃんも完全に頭のおかしな人間だ。

 

 閑話休題。

 

 斐川神社、出会い、願い、桜、奇跡、お兄ちゃん。重要そうな単語だけを抜き出してみたが、あまりピンとこなかった。

 

 たぶんそれだけでは足りないのだろう。


 首吊り、殺人、自殺、人間の限界、倫理、オカルト、恋人。

 

 そこまで考えたところで思考は、面白いようにまとまった。なんとなくで辿り着いていた結末に、推理が追いついたような感覚だ。

 

 そしてそうなってしまえば、あとは、決められた物語に沿って行動するだけ。


「わかったよ。由宇ちゃん」

 

 僕は自分の役割を再認識した。



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