表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ギャルを誘拐した。そして監禁した。  作者: 樫村ゆうか
第二章 電波少女が首を吊った。そして探偵が現れた。
23/36

呪いの正体

 僕らはさっそく斐川神社へと向かった。その道中は久しぶりの再会のため気まずくなるものかと思ったが、実際は会話が途切れることはなかった。まあ、コマちゃんが事件に関する情報をペラペラと一方的にしゃべっていただけだが。

 

 その情報によると、最初の事件が起きたのは今から一週間前。被害者は井原拓。

 二件目の事件が起きたのは、その三日後。被害者は坂野満。

 両者ともに犯行手口が一緒だった。人気のないところで襲われ、出血死によって亡くなった。犯行に使われた凶器も同じだった。さらに被害者両名は同じ高校の同級生で、同じ部活に所属していた。それらのことから警察は、一連の事件が、同一犯による犯行で、連続殺人事件であると判断したそうだ。


 で、なぜこの事件と由宇ちゃんが関連付けられているかというと、由宇ちゃんも被害者たちと同じ、オカルト研究部に所属をしていたからだ。死因や犯行手口は違えど、それは見過ごせないほどの一致であり、警察は由宇ちゃんが三人目の犠牲者と考えているそうだ。


「でもさ、いくらなんでも騒ぎすぎじゃないかな?」

 

 僕がこの事件に関する概要を伝え聞いて、抱いた感想はそれだった。確かにオカルト研究部員が殺されていってるのは奇妙なことだ。ただの連続殺人と呼ぶには、気になる点が多すぎる。しかし殺人とは言っても、ミステリーに出てくるような奇妙な死ではない。密室もなければ、アリバイ破りの必要もない。一つ一つの事件に、解くべき謎などもない。言ってみればただの死だ。探偵を呼ぶほどの事件には思えない。


「それは呪いが関係しているからよ」


 コマちゃんは振り返らずに答えた。

 割れた風鈴のようなカエルの鳴き声が聞こえる。辺りは既に夜に迎合している。道路と畑の教会さえもあやふやだ。空に浮かぶ星だけが人の世を思い出させてくれた。


「呪い?」

 

 僕は日常では口にしないであろう単語に、聞き返した。夜風がビューと吹いて、肌を撫でる。夏の夜風は、虫が這うような感覚だった。


「坂野満は、亡くなる一日前に言っていたそうよ。『呪い』と」

 

 なるほど。それで呪いというわけか。オカルト研究部らしいと言えば、らしい考えだ。


「馬鹿らしいと思うでしょ? 呪いなんてあるわけないのに」

「そうかな?」

「そうよ」

「でも、世の中には呪いのアイテムとかあるよね?」

 

 ホープダイヤモンドやバスピーズチェアなどが代表的だ。


「それは原因と結果が逆なだけ」

 

 僕は首を傾げる。コマちゃんは歩き始めながら口を開く。


「人は何よりも未知を恐れる生き物。未知の災害、未知の事件、未知の不幸などの説明のつかない出来事を恐れるわ」

 

 コマちゃんの口調は出来の悪い生徒に理を解く教師のようだ。


「だからこそ原因を求める。そしてそれは現代の科学である程度論理的に解明できてしまうことが多い。でも、中には科学ですらも説明のできない未知の出来事がある」

 

 僕は遅れて歩き始める。


「そんな時に使われるのが、呪いや幽霊などの非科学的存在なのよ。科学で説明できなければ非科学に頼る。情けない話だけど、逆に言えばそれらの存在は逃げられるだけの力を持っているわ。だからこそあの事件は呪いが原因で起きた、幽霊が憑りついたからだとか、そうやって原因を擦り付けるのよ」


 つまりコマちゃんは、呪いの結果不幸になるのではなく、不幸な結果呪いが生まれていると言いたいのだろう。そして今回の事件にそれを当てはめるなら、呪いの結果事件が起きたのではなく、不可解な事件が起きたから呪いが生まれた。逆に言えば、事件冴え解決できてしまえば呪いもなくなるわけだ。


 なるほど。確かにその通りだ。コマちゃんらしい理路線然とした考えだ。

 ただ僕はこうも思ってしまった。

 もしその原因が悪意から生まれていたのだとしたら、その悪意こそが呪いなのではないだろうかと。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ