えんぴつ×ランドセル体育祭とポーカフェイス脳筋ツインテール
脳筋ツインテール少女シリーズ第3弾――――!!!
トイレに行きたい。
己がゆく道を阻むものはすべて破壊するだけ。
*
体育祭は進化した
えんぴつ組とランドセル組。大人の象徴・黄金の缶コーヒーを巡り、グラウンドはさらに白熱する。
「くらえ、ロケットミサイルぅ……‼」
「なんのお守り式ランドセルガード‼」
「HB隊、もっと先端を削りなさい!」
二組の団体が衝突し、缶コーヒーが校舎側へと転がっていく。
衝突する軍団の後方から二つの影が飛び出した。高性能中学製シャーペンを輝かせた少年と赤い翼を生やしたランドセルの少女。
各組の委員長だ。
「……ここを譲る訳にはいかないのです」
「こっちこそ! クラスの皆の期待を裏切る訳にはいかないの!」
少年はボタンを連打し四メートルにも及ぶ長物を振りかざした。しかし鉄壁を誇るランドセル組の天才は翼で全身を覆ってなんなく防ぐ。続けざま、ランドセルの蓋が開き、文具型のミニロケットが発射された。シャー芯の弱い部分を狙い、見るも無惨に砕いていく。
少年は冷静に対処した。シャーペンをフリクションし、四メートルものシャー芯を復活させる。
テントのお母さんたちが手に汗握る中、思いがけないアナウンスが流れた。
――――危険ですので、関係のない児童は立ち入らないでください。
視線の中心にいたのはツインテールで髪を結わえた少女だった。彼女の進む道で拮抗する軍団をたった一つの拳で粉砕する。
二人の委員長は顔を見合わせ、手を取り合った。こんなところで台無しにするわけにはいかないと。
バギビギブギベギボギィィ……‼
シャーペンは持ち手の部分から真っ二つにおりまげられ、ランドセルも翼を毟られ原型が残らないほどにボコボコにされる。
「化け物……わたしたちのコーヒーが……」
大人に憧れ切磋琢磨する彼らの夢。突如現れた脳筋ツインテールが独り占めにする――――と思われた。彼女はするりと缶コーヒーを交わし、すぐ後ろにあるトイレに入る。
ややあって。
トイレの扉が内側から蹴破られ、巻き込まれた缶コーヒーがグランドを飛び越えて遥か彼方へと姿を消した。
姿を表した少女は相変わらず無表情。いや、よく見ると口の端がほんの僅かながらつり上がっている。
ぽつりと一言。
「間に合わないと思った……」
◇脳筋ツインテールは覇道を征く――――‼