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うちのおばあちゃん探しています!持ち物は聖剣と見た目は二十代後半の人族です!見かた方は手伝ってあげてください!

レイアへ

 マーサおばあちゃんは今ちょっと家から遠くにいるの。ごめんね。突然こんな手紙を置いて家を出て。びっくりしているでしょう。でもこれはあなたを、もう私の家族を奪わせない。


 レイア、あなたのお父さんとおじいちゃんが勇者だと知っていましたか。びっくりしているでしょうね。だって勇者に選ばれたものの家はお金持ちや、貴族が多いですから。ずっとかくしていましたから。実は私は剥奪されたとはいえ、大聖女の一人として国の神殿で勤めていましたから。最初から辺境の地の神殿の神官ではなかったのです。


 リアムおじいちゃんが勇者になったのはルークお父さんが13歳になるぐらいでした。世界から国から選ばれたことは名誉なこと。それでも勇者になるということは魔王と相討ちになることをみんな知っていて送り出したのです。聖騎士だったおじいちゃんはそれは勇猛果敢に立ち向かい、魔王に打ち取りました。だけれどだれもかえってこなかった。私は悲しかったけれど、おじいちゃんの分まで生きなければと思っていました。

 それからルークお父さんも大人になって神官として働いていてあなたのお母さんのアリシアさんに出会って結婚してこれから幸せになろうとしていた時だった。私は神託を聞いてしまった。


 ルークが勇者に選ばれた。

 うそだと思いたかった。だからその時は黙っていたの。だけれど昼夜を問わずその神託が降りて来て伝えろ。みんなに伝えろってうるさくて。それでも言わなかった。その内聞こえなくなってもしかして別の誰かが勇者に選ばれたんじゃってずるいけど、最初はそう思った。でもそうじゃなかった。神は全世界の人々に伝えたのよ。ルークが勇者だと。

 なぜ私から夫も息子も奪うのって、ルークには行かないで欲しかった。それでもルークも行ってしまった。その頃にレイアが生まれたんだけどアリシアはルークがいなくなって心労もあったのでしょう。産後の肥立ちが悪くて貴方が3歳になる前に儚くなってしまったの。それから2年くらい後に魔王討伐完了の知らせが入った。私は神を恨んだわ。なんで私の家族なんだ。私の家族から奪うんだって。


 神はもう一つ余計なことをしたのよ。私が神託を黙っていたことをバラした。まあそれからは非難轟々よ。上からも下からも責められたわ。それでも、勇者の妻であり母親であったから情状酌量として地位は落とされた。神殿にはまだいさせて貰えることにはなっていたんだけどルークお父さんの形見の聖剣を地位と引き換えにもっていって辺境の神殿に行ったわ。

 私も安心したのよ。きっとここなら神託も聞こえない。レイア、貴方には平和な人生を送ることができるって。でもできなかった。この前、私宛の手紙がうちのポストにあったでしょう。


 レイアが勇者に選ばれた。

聖剣とレイアを渡さなければ流石の私でも牢に入れるって書いていたわ。


 怒りを通り越すと人ってなんも考えられなくなるのね。レイアあなたはまだ11歳。まだ人生が始まったばかりも良いところの娘を勇者にするなんて酷い話だった。けどふと気が付いたの。勇者を選ぶ間隔早くないかって。

 リアムおじいちゃんは25年ぶりで、ルークお父さんは15年ぶり、それでレイアは5年。おかしいなこんなに魔王って現れるものだっけって昔読んだ書物には大体100年たまに50年ぐらいの間隔があったはず。そこから急に頭がまわり出したわ。思えばルークお父さんが選ばれた時に変に思うべきだった。間隔が早いと。そこからは私は神様に祈りを捧げた。どうしてこんなに頻繁に勇者を選ぶのですかって。勇者を選ぶのは最高神である世界神。普通であれば祈っても簡単に届くはずのない神だけど、私は元とはいえ大聖女、精霊や小さな神のコネを使ってなんとか繋いだわ。そのせいで少し疲れてしまったのだけれど。

 そして真実を知ったわ。実は邪神を抑えるために勇者は要るということ。邪神は世界神が作った世界を壊したくて魔王を作るのだけれど、それを防ぐために世界神の加護に耐えられるものが勇者に選ばれるといもの。昔々は勇者はちゃんと生きて帰れるものだったが、ここ2千年は相討ちになることがほとんどで強い加護を与えたいと求めるうちに先祖代々聖騎士のリアムおじいちゃんに加護を与えて魔王を倒させた。けれどそのわずか15年後にまた魔王が現れてリアムおじいちゃんの息子であるルークお父さんを勇者にした。しかしそのすぐの5年後にレイアを選んだ。

 世界神も邪神の力が増しているから、間隔が短くなっていることを感じてはいたけれど世界神が直接関わることは出来なかった。というのも世界神も邪神を倒したいが、神は自分の兄弟を殺せば邪神に落ちてしまう。

 なんでそんな大事なことを黙っていたって私も怒ったわ!けど神はなんて答えたと思う?人々に心配をかけたくなかったからですって!邪神がいるってバレたら人々が混乱して信仰がなくなるって思っていたらしいのよ。まったく腹が立つわ。だから私は言ったのよ。

 私が邪神を倒しに行くから、加護をくださいなって。そしたら私の今の体じゃ耐えられないし、無理だよと。まったく気が弱い神様だ。じゃあ耐えられるようにしてください。じゃなきゃ邪神のこと全世界にバラしますよ。元大聖女のツテを舐めないでくださいねってお願いしたら快く引き受けてくださいました。


 というわけでおばあちゃんはこれから邪神退治に行って参ります。おばあちゃんはちょっと若返って今はおばちゃんぐらいの見た目になっているけど、レイアなら分かるでしょう。後、聖剣は返さないって偉い人に伝えといてください。勇者としての加護は全て私の身と聖剣に宿ったから。レイアはこのまま私の友達の家でお世話になりなさい。

それでは行ってきます!


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― 新着の感想 ―
[良い点]  面白かったです!発想元を知っていたので、小説になった時は「おっ!」ってなりました。おばあちゃんが勇者になるお話を、複雑だけれども筋の通ったわかりやすい事情にまとめているのはなかなか上手い…
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