あぁ、俺って。
もう、縦書きの方でみて頂いたほうがいいのかもしんないですね。
「ぅん……?」
痛みは消えはしなかった。
ある意味、痛すぎて起きてしまったのだ。
窮屈な顔、体。包帯で自由を失っている。
「ここ……」
どこだろうか?
目も包帯でふさがれている。
家にいるのか…。
でも、何か違和感。……あぁ。俺の部屋じゃない。
こんな匂い、俺の家のどこの部屋にもない。
「どこだ……?」
「おお、おお。一人言か。結構結構」
男…いや、女? よくわからない微妙な、アニメ声だ。
「そうだ俺、殴られて……」
まず顔、話している奴の顔をみたい。
不器用かよ。
「じゃ、今から質問するから、ちゃんと答えるように」
「ん? 質問? なんで今……」
「記憶質問、第一問」
ジャラン。と、そいつはふざけたように効果音をつけた。
「君の友達は何人?」
友達? ……友達なんかいない、俺はいつも一人ぼっちだし。
「0人」
「第二問、今は何月?」
正月をあけてるから、今は、
「……一月」
記憶質問といえば、確かにそうなのだが、質問が軽すぎやしないか? もっとこう、『これは誰ですか』とか、もうちょい格好良いのがいい。
「第三問」
……。
あれ? 質問がでない。肝心な質問。
間がたって間がたち間がたちすぎ。
えーと、ざっと50秒くらいたった後に、そいつは口を開いた。
本当、目が見えないと状況が把握できないな。
「君の、名前は?」
名前か。
簡単すぎ。
俺の名前は、
「……」
……俺の名前は…、えと……。
頭が回らない、名前が…浮かばない。自分の名前だぞ? 大事な大事な、親がつけてくれた…。
「名前…わからないだろ?」
「……うん」
「第三問失格。君は、記憶喪失」
記憶喪失…? 俺があの?
『ここは誰、私は何処?』って、お決まりの記憶喪失?
「俺……俺の名前は?」
「知らないよ」
知らない?
俺をからかっているのか? それとも、本当に初対面の人。
「あんたの名前は?」
「小生の名前?」
ふふ、と。そいつは笑った。
そして、俺の目の辺りに巻かれている包帯を強引に引っ張り、しょきんと、ハサミできったのだ。
暗かった視界が、いっきに明るくなる。
「小生の名前は……」
「……」
「凪」
「……凪?」
凪。
彼は男だった。
女みたいな男。
以上に前髪が短く、後ろの髪が長く、なんとも不安定な髪型だった。それに加えてアニメ声。
TVからアニメの人物が飛び出してきたような感覚がした。
「ていうか俺……だれかに襲われてたような気がするんですが…」
「あぁ、やっぱりね。偶然通りに差し掛かったときに、君が顔の半分潰して倒れていたんだ。小生に拾われていなかったら、君、人間に病院連れて行かれて殺されていたよ……いや、殺されていなくても、元の顔には戻れなかっただろうね」
なんだその、自分はその潰れた半顔を余裕で治せたみたいな。
いや、実際治せているから感謝しているんだが…。
それに、俺には一つ気になることがあった。
「お前、人間だよな?」
今の喋りかたからして、自分は人間ではないって言っているようでならないのだ。
じゃあ、人間ではないのならなんなのか? もうこの際、俺は何も驚かない。何故なら俺はもう、へんな化け物にあっているから。
「小生は人間ではない」
あっさりと。凪はあっさりと肯定した。
しやがった。
「小生は☆だ」
……?
☆?
「小生、青く染まる夜から降り立った☆(ほし)である」
「……星?」
星って、10角形の…?
「星には大きくわけて2つの種類があって、小生のように人間と同じような形をしているのが白星、君を襲った変な奴。人間の姿をしていない星を、黒星という。まぁ、言うなれば、小生達は人間にはない特殊な能力を兼ね揃えている、幽霊だ。何回か死んでいる」
あ、だんだんSFみたいになってきた。
「君を襲った幽霊。あれは小生の兄にあたる」
あの化け物……黒星が?
「…お前達兄弟は、生き別れとか何かつらい経験したからこうも要素が違うのか?」
「そうじゃない、無理矢理だよ。無理矢理、銀は黒星にされた」
銀とは、あの黒星の名前だと思われる。
「白星が黒星になる方法はいくらでもあるが、黒星が白星に戻れる方法はない」
「…じゃあ、その……銀は誰に黒星にされた?」
「天使」
「は? 天使?」
美女とか、可愛い……白い羽に、白い服装に心まで純白で汚れの無い天使?(もはや俺の想像する天使)
「うん、天使。天使は裁くからね。小生達を。……裁いた時に無罪になった者は黒星にされ、その後また裁き、有罪に仕立て上げる。天使達小生達が嫌いなんだ。神等と違って、ふら付いた者だから」
「まて……お前達は何で裁かれる? 悪いことしてんのか?」
「君は幽霊に対して、どんな印象を抱く?」
「……まぁ、あんまり良い印象は持たないな」
「そう、それと同じだ。天使達も小生達を良く思っていない。だから裁いて、消滅させる」
……まて。
同情している場合じゃないぞ。
俺、こいつ等とは何も関係のない、普通の人間だぞ? 記憶喪失の。
こんな話ししてどうすんだ?
しっかりと出来た女みたいな男、白星弟、凪。
反対に、天使によって黒星にされた黒星兄、銀。
「そこでだ……」
「……」
「小生に命と顔を救われた恩だと思い、小生を助けてくれ」
何か悪いことに巻き込まれていくような、そんな不安がすぐ目の前にあった。
「どうせ、記憶もない」