8:27\起床
初めて話すが、後一週間程度で、俺の冬休みは終わる。充実していたと聞かれてみれば、まぁ、していないのだろうが、そこはもうどうでもいい。
大事なのは、始業式から春休み前までの学校生活。
話してあるように、俺にはおおよそ友達と呼んでいいものがない。昼休みも、授業中も、俺は誰かに話しかけられないと、喋れない状況にあるのだ。
勘違いしてほしくないのが、俺はいじめられっ子ではないということ。
都合のいい事に、俺のクラスにはがき大将のような大きな体格をした……いわゆるデブがいじめられっ子となっている。
俺は、そいつの影に潜むだけ。いじめっ子がそいつに飽きれば、次は多分俺がいじめられっ子。
そして次はいじめっ子がいじめられっ子になるだろうな。
俺が思うに、クラスというのはそうやって構成されていくのだ。
俺はこんな感じだから、いつも勉強している。いわゆるがり勉。あ、学校ではしていない。冬休みの宿題の、最後の書き初めも終わり、残りを優雅に過ごすつもりだったのだが、こいつが現れて、『あぁ、俺の冬休みはもう終わったのか』と、改めて実感している。
とうとう来たのだ。本当の悪夢。
俺には到底たどりつけないと思っていた能力。そんなものに、うなされている。
*
メリーは、自分の事が分からなかった。本当の名前も、自分がどうして存在しているのかも。だから人の脳にとりついて、自分のいる記憶を探す。そして、消すのだ。
自分のいない記憶を持った人間を。
メリーは、猿の時代から存在している。
「じゃあ、メリーは猿なのか?」
そうではないらしい。
メリーいわく、もとは人間と同じ格好をしていた……と。ていうか、その時点で幽霊ではなく神的感じだというのは、どうなのか。
そう、夢から目覚めた俺は不思議に思ってた。
「…今日も……見たのか? 夢」
「ん…あぁ」
「ごめんね…」
「違うんだ、今日はお前、謝んなくていーんだよ」
「え?」
「お前の夢見たんだ。予知夢じゃくて、お前の昔の夢。…お前が、人間の脳に入って必ずやっていること」
それにしても、不思議な夢だった。
「必ずやっている事? 私は必ず、何してるの?」
「脳を覗いて、その脳にある昔の自分を探してんだよ」
「? よく分からない、だって、その人は私見たいに、猿の時代から存在しているわけじゃないじゃん」
「でもお前は探してる。無意識のうちに……」
なんでだと思う?
そう、心の中で呟くと、やっぱり気付いたのか、メリーはうぅーん…と、首を傾げた。
「隆史は…理由……分かるのか?」
「……分かるわけないだろ」
「そぅ…」
理由なんて…、わかってたまるかよ。