お友達は脳の中
結構悲しい題名ですよね……。
ヒッキー(ひきこもり)ではありません。ただ人と接するのが苦手な隆史君なのですよ。
「予知夢っ?」
「そう、58,179…の確立でな」
そう言い放ったのは、コイツが俺の脳内に現れて向かえる朝だった。――それは、俺が規則正しくない寝息を立てている……そう、深夜4時くらいの事。
まるで真実かのような、リアルな夢をみた。
登場人物は俺、兄、母。
単に喧嘩して怒られると言うものだったが、その後叩かれる痛みが、起きた後、妙に残った。よく何かにどこかをぶつけた痛みと言うものがあるが、俺はそうじゃなかった。
その時。痛みに耐え切れず目を開けた時。
俺は布団の上で正しく寝ていた。家具とか、針とか鉄鋼とか、そんな武器のような物は一つも近くにはなく、むしろない方がおかしいようなものまでなく。
そして先ほど。メリーに説明を受ける少し前。
夢が現実になる。
一言で言えば、正夢。だ。
「昔、まだ着物の時代だった頃。私は一人の男の脳に憑いた。その男は予知夢を良い事に、商売を始めた。予知師と言う物だったわ。一つの予知は高く売れ、男はそれはそれは儲かった。だけどある日の晩、彼は死んだ。自分の首をぎゅぎゅっとしてね」
「縄か?」
「手」
「手?」
「……手。漫画やアニメでよくあるでしょ? 指で掻き毟ったり、手に刃をもってきったり、そういう物」
「……絞めたのか? 自分で。首を。」
「そうよ」
平然と、なんの震えもなく。
彼女は、まるで慣れているかのように……。
「――まさか、お前にとり憑かれると、いつか……その、自分で首絞めて、死ぬのか?」
「……」
ANSWER.
メリーは何も答えなかった。
俺は恐怖に襲われる。身の毛もよだつ、……そんな感じ。
「身勝手だ」
「何故」
「当たり前だ。幽霊や化け、人間も。みな身勝手。だけど一番身勝手は、亡くなった奴が、この世に自分の居場所を求め、逃げ。写真に写ったり、声に映したり、はたまた人を脅かし。何をそんなにアピールしたいのか。早く成仏すればいいものを……。お前も早く成仏しろ、俺の道連れは止めろ」
「随分言ってくれるね。いつか私のお友達があなたをすぱっとか、ぼかっ…とか、しに来るわ。絶対に」
「それは困る。ごめんなさい」
「いいえ、許さないわ」
メリーは笑った。ふふっと、妖しく。
俺は安心して目を閉じた。きっぱり『許さない』とは言われたが、何故だか、メリーの友達が俺のとこに来ないと思ってた。
だってコイツ、友達がいないと思われる。
「隆史」
「なんだ?」
「あなたにも、友達はいないのよね」
「……」
――友達、いないよね。
……だからどうしたというんだ。友達にでもなろうってか?
――えぇ、そうよ。
……そうか。じゃあ、断わる事はできない。
およそ友達と呼べるものが、俺にはいないから。『友達になろう』といわれて断わるほど、俺には余裕はない。
――悲しい子。いいわ、隆史。あなたに夢をあげる。 私の夢、アナタニ託スワ。