兄という存在から俺へ~着信
兄再び。
やっぱり、偶然なんてのは驚きですね。
味付きのりから大まかな話しの書かれたノートを渡されて見たときは、『また出てきた。』って、思いました。(笑)
さらばメリーですね。
……メリーは今どこにいるんだろうか…。
この小説に一番重要なメリーがいないので、…今はメリー編ではなくて☆編ですね。
あ、読めない人の為に訳します。
『天使によって化け物、黒星に転生されてしまった元白星銀を助けるべく、血の繋がらない白星弟凪が下僕:隆史を従えて銀を探し旅をしていく編』です。
……嘘です。ごめんなさい。
ちなみに、☆編つーのも嘘です。
どういう話編にしていいか分かりません……。
切実な悩みだょ……。
オレタチβακα..._φ(゜∀゜ )アヒャ
白星弟、凪の兄。
黒星兄に、俺は顔を半潰しにされた。
何が嬉しくてそんな奴を探しまわらなきゃいけないのか……。
「……で? 何処にいるか、目星はついているのか?」
「うん、一応。これでも隆史を助ける前にもいろいろ探し回って情報を集めていたんだ」
凪の兄、銀は、天使の裁きによって黒星に転生されてしまった。
「大体はこの町を拠点として町を徘徊している」
「この町って言っても……そりゃあ地図から見たら小さいかもしれないけど……ここは広いぞ?」
「大丈夫だよ、適当に過ごしてたら会えるから。確信はもてるぞ」
「? なんでだよ?」
「さっきも言っただろう、君は神的存在なのである。」
俺は黙った。
小生より天使より、君は大きい存在。
凪は嬉しそうにそう呟く。
「違う、凪、俺は一般人。普通の人間だよ。お前と会ったのも、銀に顔潰されたのも、全部偶然に等しい」
「ふふっ」
何が面白かったのか。
何がつぼに入ったのか。
凪は不気味に口角を上げた。
「……何だよ…」
「嬉しくないのかい? 自分が神みたいに言われて」
「嬉しくなんかないよ。そういう性格なのか、記憶喪失でそんな性格になってしまったか知らないけど。……だって、神的存在ったって不死身でも能力者でもなんでもないんだからさ。意味ないだろ? それに、ここは地球だぞ? 『俺は神だぞ』って言って、誰が信じる? こんな未成年一般男児が神なんて、イエス・キリストを侮辱するなって言われるぞ」
「イエス…? 誰だそれ」
知らないのか。
キリスト信者に抹殺されちまえ。
「地球に存在していた神みたいな人だよ」
「へー、過去形なのか。もしかしたら天界で天使をしているかもな」
あんなおじさんが天使?
やめてくれ、俺の想像する天使のイメージをこれ以上壊さないでくれ!
「……現世で違う奴に生まれ変わっているかもしれないし」
「現世?」
「人間には前世と前々世がある。昔を生きた人間が死し、天使を卒業し、そして人間に生まれ変わる。現在を生きる人間。隆史は、神だったのかも」
「馬鹿言うな。俺は普通に天使でいい……そういうお前はどうだったんだ? 凪。天使だったのか?」
凪から笑顔が奪われた。
足の動きが止まり、前を向いていた凪の顔が、下を向く。
俺って今……触れたらいけないやばい事いっちゃった?
K.Y?
空気読めてなかった?
「小生は天使になんかなった事はない。小生は死んでからずっと星として生きてきたからな。何度天使に追われた事か。……その度に同じ星の仲間を犠牲にしてきたのだ」
「何でそんなこと…」
「いいかい隆史。確かに仲間は大事だ。だがね、仲間の命を気にしていたら、いつか自分が殺されてしまうのだよ」
「星って、いつもそんな事を考えるのか?」
「小生だけかもね。星は追われる身だから仲間意識が妙に強い」
俺が今一番に感じ取ったこと。
『凪』という星は、この世に写る星の何より誰より、一番強そうな流れ星より流星群より、冷血で最悪で危険なものなのだ。
可愛い顔したって、どうせ男。
ごつい性格で、がたついた生き物。
「そんなお前はどうして、銀を探す? ていうか、探し出してどうするんだ? 黒星が白星に戻る方法はないんだろ?」
「銀は小生の兄だ。血は繋がっていなくとも、生まれた所が違くとも、小生は銀を兄と思う。思い想うよ。だからこそ、小生は銀を殺す」
「え……?」
殺す?
兄を?
思い想うんだろ?
あれあれ、言っている事が矛盾している。
「混乱しているのか? まぁ、その気持ちは分かるが……星が天使に殺されるという事は、この上ない恥なのである。しかもそれが天使によって無理矢理に黒星にされた星であるとすれば、もうそれは『恥』の一言では済まされない…『罪』である。だからこそ、小生は小生の手で銀を殺してあげる。……少しでも銀を恥から解放さあせてあげたいのだ。……わかってくれるかい? 隆史」
こいつは、もしかして、兄想いのいい奴なのか。
凄い男らしい考え方。
「……一匹狼なんだな」
「?」
俺は足を踏み出した。
「隆史…一匹狼とはどういう意味なのだ?」
「そんな事もしらないのか…」
「小生、日本語は大嫌いなのである。あとは納豆」
「納豆はいいよ、…一匹狼ってのは――……」
一匹狼について説明しようとしていた時だった。
ピロロロロと、何か音がした。
シンプルな。
耳に響く。
元から携帯のフォルダに入っている着信音の音。
そうだな、着信音2か3くらいの奴。
「隆史……これは携帯の音かい? 君はいい成長期を迎えた年頃なのに、まるで電化系の取り扱いが分からないお年寄りみたいだね。もしかして、本当に携帯の使い方が分からないのかい? だからこんな着信音しか設定できないのかい?」
すこし引き気味に聞いてきた凪がむかついた。
「記憶喪失なのに分かるわけないだろ」
「ほら、早くでないと切られるよ」
「分かってるよ……」
ダウンジャケットに入っている、見覚えのない自分のであろう携帯を取り出し、おずおずと画面を開いた。
兄と一言表示されていた。
「凪、これお前のじゃん。兄って書いてるぞ、銀からだろ」
「小生は携帯など便利なものはもっておらぬ。それに、もし持っていて銀の番号を登録するのなら、表示名はちゃんと銀とつける。それに、格好いい着信音を使おうと思う」
「……うるさいなー」
苛立ち、手に力がはいり……。
不意にボタンを押してしまった。
「やばっ、押しちゃった」
「隆史っ?! お前今どこにいる?! 俺から逃げられると思うなよ!」
怒鳴り声が聞こえてきた。
「何、俺って逃亡者?」
「知らぬ。早く返事をしなきゃ」
何なんだ俺の兄って……。
ピュア・ホワイトみたいな奴だなぁ。
「もし……もし?」
耳に近づけたら大声で耳の鼓膜が破けそうなので、あらかじめ少し離して返事をする。
あっちには少し小さめの声で聞こえているだろうか?
「おい、隆史! 白状しろっ! お前いつも誰と話してる?!」
は?
何言ってんのこいつ。
いつも誰と喋ってるかって?
「えとー……?」
「あぁ?!」
「母さんか…父さんか……い、…妹とか?」
俺って結構挑戦者な性格なのかも。
俺に妹がいるかも分からずに、でも本当にいるのだとしたら、結構、少し。記憶を取り戻しているのかもしれない。
電話越しから、ぶちっと音が聞こえてきた。
「ふざけるなよっ! お前母さんとも親父とも仲悪ぃじゃねぇか! それに! お前にいつ妹なんて出来たんだ?! 名前言ってみろ!」
「……さいあく」
「あぁ?!」
「な……何でもありません」
答え、記憶はコレっぽっちも取り戻してはいなかった。
俺、こんなのが兄ちゃんだったんだ。
……まぁ、大体の兄弟、姉妹関係に置いて、仲が悪いのは普通なのだろう。
「まぁ、いい。早く帰って来い。もう外まっくらだろ」
時間の話しは何一つしていなかったが、今は夜6時を迎える頃だと思われる。
「帰って来いって……」
「ん?」
帰って来いって言われたって……帰る所が分からない。
まさか記憶喪失を自分の兄ちゃんに晒すわけにもいかないし、どうしたらいいんだよ。
「…隆史」
横から、凪の声。
救済の声だった。
あれ……本当に救済の声なのか?
何か目がキラリンと鋭い。
「? 隆史、誰かと一緒にいるのか?」
「あ、いや。と、友達!」
「友達いないの知ってんだぞ」
あぁ、そうだ。
俺友達いないんだった。
……確か、友達いないっつー嫌な事だけは覚えてたよな、俺。
都合の悪い記憶喪失だな。
「いやぁ、さっき……意気投合しちゃってさー…」
「そんな都合の良い事があるか馬鹿。変質者か? ……隆史、携帯代われ」
代われって言われても……。
凪とアイコンタクトをする。
じーっと、まじめにこちらをみる凪。
……まて、そのまじめな目は、何を表している?
「…隆史? 早く代われ」
「……」
何だその目。
やだ、嫌だぞ。
代わるとかないぞ、お前、何言おうとしている。
「……」
黙って、俺の携帯に手を伸ばした。
「おい、大丈夫なのか? 仲の悪い兄ったって、俺の身内だぞ」
「隆史? お前何言って……」
やば、聞こえてしまった。
小さな声で言ったつもりなのに……地獄耳かこいつ。
「こら、凪っ!」
凄い馬鹿力で、物凄いスピードで、凪は俺の携帯を取り上げた。
「あー、もしもし? って言うんだったか……」
「あ? 誰だお前」
終わった……。
俺、もし記憶もどっても、家に帰れない。
……恥ずかしすぎるぜ…。
「隆史の友達の、凪という…いいます」
凪、棒読みはやめてくれ。
「今日は小せぃ……僕の家に泊まるので」
「はぁ?! 聞いてねぇよ」
「当たり前です、今初めて言ったのですから」
「……喧嘩売ってんのか? 買うぞこの野郎!」
馬鹿か! 買うなー!
「では、コレにて御免」
少し低いトーンで。
おそらく本人はちょっと格好つけたのだろう、俺を見ながら笑みを浮かべた。
そして、混乱している俺の兄を差し置いて、俺に携帯を返したのだ。
携帯の通話を切る所が分からないから消せと。
もう、命令だったのだ。
「……お前っ」
「早く、格好がつかないだろう」
一指し指をそっと伸ばし、切るボタンを強く押した。
プツっと音がして、プーっプーっと音がした。
「…格好つかないなら最初から変な真似するな」
「はて? 変な真似とは何ぞや?」
あくまでしらを切るつもりか。
「身内に、『息子さんは預かった』風な感じな電話をするな!」
「隆史は甘えん坊なんだな、生意気小僧なだけかい? ……あぁ、今の隆史は反抗期時代突入しているんだったかね?」
「ぶっ殺したい」
そして、また都合の良い悪い所で携帯が光り鳴った。
着信表示は兄。
「またかかってきた」
「着信拒否と言う機能があるのだろう? それだ、それしよう」
「……警察に通報されるかもよ?」
「警察? ふふっ……そんなもんは知らん。小生の辞書には載っていない」
「載せとけ」
意味不な着拒。
そしてムカつく凪野郎。
「ほら、行こう。探そうぞ、銀を」
「……あぁ」
気が進まなくなるうちに、足を進める。
「ていうか、今日はどこで寝て、どこで食事を取るつもりですか」
重大な疑問だった。
あのまま凪の住む家に帰っても、ピュア・ホワイトやその応援の奴等が待ち伏せしているかもしれないし…。
「未成年は無駄な心配をしないことだ。将来すぐにハゲてしまうぞ」
「……」
「小生、こう見えても銭は沢山もっているほうなのである……金貨や銀貨などではないぞ? れっきとした日本銭なのだぞ!」
「あー、うん。そう願ってるよ」
台詞棒読み。
「隆史、利口にしないと外で寝かせるよ」
凪が苛立った。
……本当に、内面と外面の差が激しい奴だな、こいつは。
「殺す気かっ?!」
いっただろう、…この世に偶然等と言う物も必然と言う物も奇跡等も、人間の想像を遥かに超える程あるのだと。
偶然には偶然がかさなるもの。
である。
一つ目の偶然は、凪に出会ったことなのだろう。
そしてもう一つの偶然。
それは、こいつ。
「隆史っ!」
……。
「お前、何着拒なんかしてんだよっ! 馬鹿野郎!」
俺が着拒した相手。
「……」
俺の、兄ちゃん。
「あ……あぁ」
だけではなかった。
口がまわらねぇ。
「……どうした?」
体全体が混乱している俺に加え、目を見開いて脳だけを混乱させる、凪。
そして凪が口にする名前。
「……銀」
充血した目をぎょろっとこっちへ向けて、大きな口をあけてヨダレを垂らしているのが伺えた。
紛れもない、あいつ。
記憶をなくす以前に俺が最後に見たと思われる。
こいつ。
「…なんで……」