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Scene06: コンタクト
あがいても自力脱出は困難。
救いの手が必要だった。
俺は自室の窓に向けていた視線を、左側へ移す。
何メートルか離れた壁に、同形状の四角い窓がある。
となり合っている妹の部屋の窓だ。
カーテンは閉じ切られているが、隙間から室内の明かりが若干こぼれている。
「あいつ、電気つけたまま寝落ちしてたりしないよな」
耳をすましてみると、テレビの音だろうか、複数の人がいっせいに笑う声が、隣部屋の壁からわずかに聞こえている。
大方、バラエティ番組のオーディエンスの声なのだろう。
そしてその歓声にまじり、「イヒヒヒヒッ」という妹の特徴的な笑い声が重なっていた。
よかった。まだ起きている。
「できることなら、あいつの手は借りたくないけど」
できないんだから借りるしかない。
俺は押し殺した声で、でも、なるたけ声を張って、妹の名前を呼ぶ。
「お~い、ユイ! ユイ~!」