Scene01: 午後9時、屋根の上に
「さてと、そろそろ頃合いかな」
夜9時をまわろうかという頃、俺は自室の窓を開けた。
エアコンの暖房でぽかぽかしていた室内へ、屋外から冷たい空気がどっと流れ込んでくる。
季節は冬で、12月下旬。
今年は暖冬だといわれているが、それでもやはり東北の冬は冬だ。
日中はそれほどでなくとも、日が暮れればめっきり気温が下がって底冷えしてくる。
「う~、寒っ! ……やっぱり下も、もうちょい着込んだほうがいいか?」
部屋着のスウェットに、ダウンジャケットを羽織った格好だった。
手袋を嵌め、頭にはニット帽もかぶっているため、上半身のガードは上々である。
ジャケットの内胸のところには、ホッカイロも貼り付けてある。
しかし下半身が甘かったらしい。
冬物のスウェットズボンだけど、外気に触れた途端からスースーしてきた。
一旦、窓際を離れて、クローゼットへ移動。
ゆったりめのジーンズをひっぱり出す。
スウェットズボンの上から重ね穿きし、防寒対策を向上させた。
少々動きづらくはなるけれど、べつに運動しようというわけではないので、問題はない。
俺は準備万端、窓枠をつかんで身をのりだす。
「ではでは、あらためまして、レッツゴー!」
屋根の上に足をのせた。