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導きは



 ばちり、と音がしそうな勢いで目蓋を開いたら、真っ白な砂が一面に広がっていた。


 いったいこれはどういうことなんだろう。と首を傾げてみれば、きちんと傾げらる。

 それに、目で見て、肌で風を感じて、湿っぽさを感じない乾いた風の匂いが分かることに安堵する。


 あの神様といた空間は意識しかなく私の存在を安定させてはくれず、不安がきえなかったから。

 今いるここに私はちゃんといる。

 息をして、地に足をつけてここに存在している。



 

 自身の存在を改めて確認できたのはいいのだが、「信じる者は救われる」とは本当だろうか。

 全く救われるどころか、砂漠の中に1人ぼっちにされて恐怖しかないのだけれども。


 神様から永遠の豊かさと永遠の命をあげよう的な話があったと思ったら砂漠の中に放り出されてる。

 これが神様的には普通なのだろうか。

 

 なんの説明もなしにジリジリと太陽が照りつけるなか、ヒラヒラとした薄い何層かの真っ白な布が重なりあったワンピースを着させられて、裸足でいる。

 絶対に普通じゃない、少なくとも私は絶対に普通だとは認めない。



 ジリジリと照りつけていた太陽に影が差したら、どこからか声が降ってきた。



「おお、ダフネ。やっときたか。これで世界も安心じゃな」



 その巨体に見合わず、さしたる音もさせずに私のそばにゆっくりと着地したのは、フィクションの世界でしか見たことのない、美しい純白のドラゴンだった。



「は?え?え?どういうこと?」


「ん?もしや…聞いてきておらんのか?」


「えっと、たぶん、はい。」



 はあ〜と人間臭くため息を吐きつつ、やれやれなんて肩を竦めて小さな手と首を揺らしたドラゴンはなんだか面白くて、ドラゴンという未知の存在を目の前にして少しだけ強張ってた気持ちが緩んだ。



「仕方ない。わしから説明してやろう。お前とわしとあとはいくつかの奴らがこの世界を守る為にここにある。わしらがここにあるだけで世界が世界として存続するための力が安定する。」


 私が想像していた説明より遥かに素っ飛ばしてるというか雑な説明が始まった。

 

 正直自己紹介から始まって徐々にこの世界についてだとかから始まるもんだとばかり思っていた。

 私自身の説明?も有難いけれど少しばかり不満である。


「はあ…」


「そして、ダフネ。お前は特に重要だぞ。世界が永遠である為にお前はここにある」


「え?どういう?え?てか、ダフネってわたし?」


「本当に何も聞いておらんのか…。ダフネはお前の名前じゃて。まあ安心せい、お前はここにあるだけで世界が安定するのだから何も気負う必要ないぞ。」


 ため息つかれても…という気もするが、そんなことよりもどうやら私にはもう既に新しい名前があるらしい。

 

 31年生きてきた名前は愛着がない訳ではないけれど、何故だか新しく呼ばれた「ダフネ」という名前の方が妙に耳に馴染んでしっくりきている。


「あの、名前は分かったんですけど、ここにあるだけでいいって…。もしかして……この砂漠にですか?」


「おお、そうじゃ。物わかりがよいの。」


「え?この砂漠にずっとですか?この何もない砂漠に?」


「ああ、まだ知らんのか。わしらは理に近いからな、望めばそれが形となる。お前がここに家を望めばここに家が形となる。ただ望みは理から外れてはならないぞ。」


 なんだそれ、めっちゃ便利じゃんそれ。

 そんな素晴らしいことあるの?望んだら手に入るとかこの世界すごいな。

 

 さっきまでは神様に非常識レッテルを貼ろうかと思ってたけど、もうただただ素晴らしすぎる。

 一生足を向けて寝れないや、死なないらしいから一生の使い方が合ってるのかわからないけれど。


「あと忘れちゃならんのが、この世界に生まれた生命体たちへの接し方だな。生命体たちはわしらのことを精霊や神と呼ぶ。生命体たちによって呼び方が変わるが概ねそんな感じじゃな。だからわしらに力を求めるが簡単に貸してはならんぞ。」


「神様だからですか?」


「うーむ、惜しいな。わしらは理に近いから望めばある程度叶えられる。だが、それは世界を世界と足らしめる為に必要な世界が支払うわしらへの対価なのだ。それを関係のない生命体に使うにはちと、膨大過ぎる。そして世界の理に反する場合もあるしな。」


「はあ。そうなんですね。」


「ふはは、全く分かっておらんだろ。まあ簡単に言うならば、力が大きすぎるから簡単に貸すべきではないってことじゃ。」


「へえ。じゃあ頼まれても何もしなくていいんですか?」


「いや、時には助けてやることもある。あるにはあるが、世界規模で考えなくてはならん。それが世界にどう影響するか、助けた方が世界がより良くなるならば助けた方がいい」


「でも、それぞれの視点によって何がより良いかなんて変わりません?」


「いや、変わらん。わしらは感覚でわかる、それが世界にとって重要かどうか。世界とわしらはある意味運命共同体じゃ。どちらかが倒れれば、どちらも存在し得ない。だからわしらがそう判断したのならば、それが世界にとって良くなることだ。」


「…なんだかすごいですね。私にもわかるのかな?」


「ダフネの方が分かるじゃろうて。お前はこの世界の根本だからな。永遠を司ってるお前は一番世界と繋がりが強い。だからお前の判断は世界の判断そのものじゃ。」


「ええぇ、めちゃくちゃ責任重大じゃないですか。やです。そんな怖い。流石に世界とか背負えないです。」


 純白のドラゴンの話を聞いていたら少し緩まった強張りが戻ってきたどころか、体全体を蝕もうとしている。


「安心せい。本能で分かることだから何も間違えたりせん。それに暫くは生命体は簡単にわれらに接触はできん。お前がきてやっと本当の意味で世界が安定したばかりで、生命体も淘汰されてまた新しい文明ができたばかりだしな。」


 がははは、と豪快に少しのけぞりながらドラゴンは教えてくれたが、生命体たちは高度な文明を作ったりしてるけれど、この世界が私が来るまできちんと安定してなかったらしい。


 そのせいで何回も滅んでは誕生しての繰り返しで、特に私たちにお願いしにくる生命体の中心である人間はこの間、滅んだばかりでまだ誕生してないらしい。


「まあ、まずはお前の住処づくりじゃな!」



 ドラゴンて表情わかるんだ…なんてニカリと音がしそに笑いながら歩き出したドラゴンを見ながら思った。





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