8. 紙魚退治は適度な魔力で
植物園の冒険から数週間。僕ら三人のチームに新たに一人、メンバーが加わった。迷子だったコタローくんだ。
突然クラウドから「チームに一人、メンバーを加えてもいいか?」と打診された時はすごく驚いた。確かに、チームメンバーとあまりにも馬が合わない場合は他のチームに混ざることができる。新たなメンバーをそのチーム全員が受け入れ、書類にサインをすれば迎え入れることができる。チームは最大五人まで組めることになっているので三人から四人に変わるのは特に問題はない。誰が加わるのかを聞けばコタローくんだという。「寝坊とかサボりとかこれからしなければ大丈夫だよ」と言えば「あいつはサボりたくてサボったんじゃない。授業に行けなくされたんだ」と返された。なんのことだかわからないけれど、何かしらの事情があるようで僕は受け入れる事にした。
ルルドは「いいんじゃない?」と二つ返事で受け入れた。彼は新しいメンバーのことよりも学園の植物学の先生に掛け合ったり、管理者に手紙を書いたりと第八植物園の再稼働のことで頭がいっぱいで正直あまり関心を割いていないようだった。それでも授業はしっかりと聞いているし予習もしているから流石である。
僕はといえば、クラウドの魔力制御を見たり、魔法実技のグラディアス先生と新たな魔法術式の開発を議論したりと充実した日々を送っていた。
先日、やっと魔力制御を覚えたみたいだったから試しに魔法を使わせたらグラウンドを抉りやがった。なんで初歩魔法でそんな高出力するんだよ。修復が大変だったし先生には酷く叱られた。とんだとばっちりだ。
それ以外はもっぱら魔鉱石学のエラルド先生の元で魔鉱石についてを学ばせて頂いている。今もいくつかの魔鉱石の本を抱えて、エラルド先生のもとへ向かう途中だ。図書室へ向かう途中、同じく図書室の方向へ向かっている女生徒に呼び止められる。
「ロイド、これ、エラルド先生から借りた本。アタシ読み終わったから渡すわ」
「ありがとう、ソニア」
エラルド先生の元で仲良くなった女生徒。隣のクラスのソニア・W・イオン。艶やかな黒髪に褐色の肌、ラピスラズリのような瞳のエルフだ。初めて会った時は長い耳が気になって「触っても良い?」と聞いて「アンタ、エルフの耳を触る意味知ってる?」と逆に訊ねられた。エルフの耳は家族や伴侶しか触らないし、エルフの求愛行動はピアスまたはイヤリングを送ることだと教えられた。あの時彼女にビンタされなかったのは彼女が優しかったからに他ならない。
「ソニア、これから図書室に行くの?それなら一緒に鉱石の本の整理を手伝って欲しいな。エラルド先生から頼まれたんだよね」
「いいわよ。それにしても、亜族相手にそんな雑用頼んでくる人族なんて先生以外じゃロイドぐらいよ。亜族なんて人族からすれば畏怖の対象じゃない」
亜族はこの世界のトップと言っても良いくらい強い存在だ。人族の序列は最底辺に近いので亜族に対しては敬うような態度であり、雑用を頼んだりなどは殆どしない。仕事で相手より上の立場ならまだしも、同じ立場なら人族はなかなか亜族に何かを頼んだりしないだろう。
「確かにソニアは亜族だけど……学園内の立ち位置は対等じゃない?それなら亜族に対する敬いも最低限のラインを超えなければいいかなって」
「アンタのそういう考え、嫌いじゃないわよ。そういえばアンタの周り、亜族多いわよね……アタシしかり、黄の竜しかり、あの問題児しかり……」
「え?」
黄の竜……は友人のトーイのことだとわかったけれど、問題児はよくわからなかった。
「あの銀色の問題児。こないだも魔力出力失敗してグラウンドを抉ってロイドが怒ってたじゃない」
「クラウドのこと?彼亜族だったの?」
「え?……あ〜でも気付きづらいわよね。ごめん忘れて」
わかった、とは言ったものの、引っ掛かりを少し覚えた。亜族だからあんなに魔力量が膨大なのかもしれない。世間話をしているうちに図書室へと着く。ソニアと二人、鉱石のブースへ向かうと本棚から殆どの本が出され、地面に積み上がった沢山の本と、その中心で唸るエラルド先生がいた。白髪混じりの灰色の髪の彼はズレたモノクルを指でずらし、僕らを呼んだ。
「ロイドくん、ソニアさん……手伝いに来てくれたんですね」
目を細めた先生はそのまま「困ったことが起きまして」と苦笑を浮かべた。理由を聞くと彼はそこらにあった本を無造作に掴み、僕らに渡した。パラパラと本をめくると違和感を覚える。ページを開き、しっかりと読むと違和感の原因がわかった。文字が欠けていたり、読みづらい程に薄くなっていたりしていた。「何よこれ」とソニアが呟くので彼女の本を見ると、そこにあったはずの文が無くなっており、白い紙だけになっていた。一面まっしろなページもあるのだ。数ページに渡ってまっしろな紙な本があるとはおもわなかった。一体これは何なのだろうか。
顔を上げて先生を見ると、苦笑を浮かべたままの先生が話出す。
「紙魚が沸きまして」
「紙魚……?」
「ええ、紙魚です」
先生の説明によると、ただ紙を食べてしまう紙魚ではなく、文字を食べてしまったりする紙魚……別名活字喰が沸いたようだった。この紙魚は魔法動植物の一種で、何処からか沸く、呪印付きだと言われている。しかも植物なのか生物なのか、細菌なのかもはっきりとわかっていない謎の魔法動植物。
呪印付き……と舌の上で転がす。数週間前、古城に現れた合成獣も呪印付きだった。
「本来なら……君たちに本の整理をして欲しくて呼んだのですが……今は別のことを頼みます。呪印付きの紙魚の拠点となっている本があるはずです。それを見つけて欲しいんです」
「見つけたら先生に渡せばいいんですか?」
「はい。私から解呪学や呪印学の先生に届けます」
「ちなみに、放って置いたらどうなるんです?」
ソニアが聞くと先生は笑みを消して言った。
「学園中の本から文字が消えます」
それは大変な事だ。隣り合った本から本へと紙魚はうつり、文字を食べては数を増やしている。拠点となった本の紙魚に女王がいるらしく、その女王に封印の魔法を掛け、解呪の魔法を使うと食べられた文字も戻ってくるらしい。しかし、文字は食べられてから時間が経てば経つほど戻りづらいという。紙魚を見かけたら早急な処置が必要のようだった。
「私は先生方に協力要請を出してきますので、先に二人で始めていてください。本から紙魚の追い出し方はこう……本を一冊ずつ持って魔力を流すと……」
先生が本に魔力を流すとぼたぼたとなにか黒い粒が数個落ちた。「こうやって紙魚は出てきます。拠点の本はこんなの目じゃないくらいに出てくるのですぐわかると思います」と追い出し方を教えてくれた。
「処理した本は再び紙魚に食べられないように別の場所……できれば隣の教室まで運んで欲しいです。すれ違った生徒にも声を掛けておきます。では、お願いしますね」
そう言って先生は早歩きで職員室の方へと向かって行った。
僕とソニアはぐるりと図書室……一万冊以上あるであろう本の山を見上げた。目を合わせるとにこり、と苦笑いを返された。僕もにこり、と苦笑いを返す。そうして二人、足元に落ちている本を拾うと魔力を本に込める。ぽと、と一匹紙魚が落ちた。応援がくるらしいから、今は僕らで出来ることをしよう。
地道に本に魔力を込め、紙魚を落としているとちらほらと生徒が集まり出す。僕とソニアを主体に紙魚の説明と、追い出し方を教えると生徒たちはそれぞれ紙魚の処理を始めた。処理した本を運ぶ生徒もおり、少しずつだが処理のスピードが上がり始めた。僕とソニアも魔力切れを起こさないように適度に休憩を入れていると生徒の楽しそうな会話が聞こえてくる。
課題のこと、流行りの小説のこと、音楽、新しい服、アイドル、ペット……さまざまな話題は聞いているだけで楽しい。その中、突然無理だよ!という声が聞こえてきた。その言葉に反応を返した声は聞き覚えのある声だった。
「ヴィンセントくん、む、無理だよ……!」
「やってみないとわかんねぇだろ。本運ぶのも飽きてきたし」
「で、でも……!ロイドさん、居ない、から……」
「これでも結構、魔力制御出来る様になった方なんだぜ?」
たったそれだけの会話で事態を察した。ソニアに断りを入れてその会話の方へ近付くと、案の定、本に手を当てている……先日、グラウンドを抉ったクラウドが居た。
「なにを、しようとしてるの」
僕が声をかければ二人は肩を揺らした。僕と目を合わすとコタローくんは慌てて頭を下げて謝った。彼にはどうにもこうにも怯えられてしまっていて、事あるごとに謝罪をされる。別に彼、悪いことしてないし僕も怒ってないし、謝らなくてもいいのに……。優しそうな顔とはよく言われているが、彼の様子を見ると怖い顔をしているのかもしれない。そんなに怖い表情をしているのだろうか。
「アーチャーか。紙魚の処理の仕方はどうやるんだ?」
「その本、絶版された貴重な物なんだけど、君は消し炭にするつもり?」
僕の言葉に彼は本を見た後そっと戸棚に戻した。素直になったなぁ。彼が戻したのを見てクラウドの手を掴む。軽く魔力を流せば静電気の様にパチリと自分たちの手を弾いた。
「っいって!……なにすんだ!」
「今くらいの魔力を流すの。君は実際に感じたほうがわかりやすいでしょ?最近の様子を見る限り」
最近の魔力制御の仕方を見るに、まぁ……数回コツを掴めば出来そうな気がする。その数回で本をダメにされたらたまったもんじゃないが。彼は目で見てもわからないから今までの出力の感覚から教えたほうが早いと思い軽い魔力だし実際に感じてもらった。
「魔法石を作る時の半分くらいの魔力を流すの。扉は…数センチ……3センチくらいしか開けない気持ちで。魔力回路を開きすぎたら君はこの図書館を吹っ飛ばしかねないから慎重にね。じゃあやってみなよ」
と自分の手を差し出す。念のため《強化》と《盾》を手にかける。クラウドが恐る恐る僕の手をとり、魔力を流し込む。ばちり、と強めの衝撃が走り眉をしかめる「下手くそ。その三分の一でいい」と言えば次に流された魔力はぱち、と弾くぐらいだった。まぁ及第点かな。
「……いいんじゃない?飲み込みが早くて結構」
「どうだ、俺の成長を見たか」
「初等部三年ってところかな」
「ぐ……」
初めて会った時は5歳児とか思ってたから大分成長した方だ。ぱっと周りを見て本棚から比較的新しめの教科書をとり、クラウドに差し出す。これならまぁ在庫もあるし、買い替えも効くから消し炭にしても謝れば大丈夫だろう。
「やってみなよ」
「わかった」
「えっい、いいの……?」
思わずという様に声を上げ、不安そうに僕とクラウドを見るコタローくんに「いいんじゃない?なんか有れば僕が修復するし、下手に止めてやらかされるよりはマシ」と言えば「お前は俺を問題児だと思ってるな」と返された。問題児だよ。まごうことなき。
クラウドは差し出された教科書を持ち、深呼吸をして気合を入れた。僕は咄嗟に持っていた生物学の教科書で彼を叩いた。
「っ!なっ、にすんだよ!」
「何気合入れてんの!明らかにさっき以上の魔力を流して燃やそうとしてる奴を止めないほど僕は馬鹿じゃないよ!」
「あ、やべ」
「ロイドさん……馬鹿じゃ、ない、けど……」
「知ってる」
「あ、ごめ、なさっ」
僕に注意されてしまった、というような顔をするクラウドと、僕にフォローを入れて肯定したら何故か謝るコタローくん。彼にはどうしてこんなに怯えられるのかわからない。「怒ってないよ、謝らなくて大丈夫だよ」と言えばすみません、とまた謝られた。どうして。
気を取り直して、と再びクラウドが魔力を流すとぼとぼとと数匹紙魚が出てくる。と、同時に端が燃えた。クラウドが驚き慌てて手を離す前に《水》と魔法をかけて鎮火すれば濡れた教科書が残る。
「消し炭って、言葉の綾じゃなかったのか」
「ちょっとでも強く魔力を流したら燃えるからね。君は黄の魔力だから紙である本に魔力を流すのはちょっと相性が悪い」
「赤、と黄……は、“火炎魔法”、だから……」
「なるほど……そういうことなのか」
コタローくんの補足を聞いて頷き、「じゃあ緑なら……」とか言い出すので「緑の魔力の訓練してないんだからそれこそ図書室吹っ飛ばすでしょ。いきなり成功させるほど魔力制御うまいと思ってんの?自己評価高すぎない?」と返す。「二言多い」と言われる。君が馬鹿なこと言い出すからだよ。
濡れた教科書を貰い、持っていた生物学の教科書を渡す。目で促せば魔力を使い、紙魚を追い出す。端が燃えたから水で消す。数回繰り返せば燃やさずに紙魚だけを追い出せるようになった。
「まぁまぁかな。じゃあ僕あっちに行くからコタローくんはクラウドを見てて。クラウド、くれぐれも教科書の倍以上の暑さの本に手を出さないように。やりたくなったら僕を呼ぶこと。じゃあね」
「あ、ありがと、ござますっ!」
「わかった」
辿々しい言葉でお礼を言うコタローくんが微笑ましい。教科書だけでも数百冊はあるからクラウドが別の本に手を出すには時間がかかるはずだ。その間に僕は図鑑の処理をしようとその場を去る。濡れた本は後で赤系の先生に乾かしてもらうことにしよう。
本を返してソニアの元に帰ってくれば図鑑の半分が終わっていた。亜族だからか魔力切れは無さそうだ。
「大変ね。お疲れ様」
「全くだよ。早く使いこなしてもらいたいな」
「あら、彼のこと嫌ってるんじゃなかったの?」
「成長しようと努力する子は嫌いじゃないよ」
「大人ね」
「子供だよ」
図鑑の処理をしながら雑談する。ソニアは僕を大人だと言うが僕はまだ14だし考えもまだ浅慮だ。それに遊んでいたいし、子供だよ。
「さっきの、止めることもできたでしょ?少ないリスクで成長できるように促せるのはすごいと思うけど」
「ありがとう。クラウドは無理に止めたら僕の見てないとこでやって図書室吹っ飛ばしかねないから僕の見てるところでやらせただけだよ」
ソニアは目を見開いた後、美しく笑った。くすくすと笑う彼女はとても美しくて、綺麗で見惚れてしまう。……次の言葉が無ければ。
「仲良しね」
「どこが!?」
本当に、いったいどこが仲良しに見えたのだろうかと悩んでいると、コタローくんが僕を呼びに来た。少し慌てた様子の彼に、あぁ、クラウドが何かやらかしたのかと思った。どうしたのかと問えばあまりこちらの言葉が得意ではない彼は言葉が見つからないようで途切れ途切れの言葉を紡ぎながら僕の袖を引っ張る。
「ろ、ロイドさんっ!ヴィンセ、ヴィンセントくん!き、きえっ!消えて!」
怯えながら僕を引っ張り連れて行こうとする彼を宥めながら向かうとソニアも付いて来てくれるという。とりあえず、クラウドが何かをやらかしたのは確実なのだろうか。ただ、コタローくんの錯乱の仕方を見るにそれだけでは無さそうだった。
クラウドたちがいた教科書の棚の辺りに行ったが、クラウドの姿はどこにも無かった。悪ふざけが過ぎると眉を潜めるとコタローくんは本棚のある壁をばたばたと叩き出す。「ヴィンセントくん!ヴィンセントくん!」と半ば泣きながら叩く様子を見ると悪ふざけなんかではなく、想定を超えた何かが起こっていることがわかった。コタローくんに断りを入れて本棚に耳を当てると小さなクラウドの声と、“黒”の魔素の気配。
本棚の本を全て取り出すといくつもの窪みが現れた。ぺたぺたと壁に備え付けの棚を触る。黒の気配を辿って隣の部屋への鍵を見つけようと神経を注ぐ。窪みはいくつもある、正しい手順は……黒が色濃い場所は最後の方だろう。薄い方から窪みを押していく。
「ろ、ロイドさ、ヴィンセントくん、大丈夫?どう、しよ……っぼく、ぼくがっ、どうしよう!ど、どうしよ……せ、先生!?呼ぶ!?どうしよ、ど、どうしよう!」
「黙って」
気が散るから。そう言えば彼がびくりと肩を揺らしたのがわかった。壁に仕組まれた複雑な魔法回路を紐解いていく。この仕組みは一度発動したらまた一からやり直さなければいけない物だ。おそらく長年いろんな人が入れ替わり立ち替わりこの棚の本を取ったり抜いたりを繰り返していて、鍵が開いて行ったのだろう。そして、最後の鍵を偶然クラウドが開けてしまったのだと考えられる。窪みに記された模様は魔法語で書かれた暗号だ。
右、下、右、魔力を注いで、左、下、上、上、左、最後に一番黒が色濃い場所を押しながら魔力を注ぐとガチリとハマる音がした。ゆっくり本棚を押せば本棚が扉のように開く。
「隠し扉……!そんなものがこの学園にあるなんて……!偶に生徒が行方不明になる事件が起きるの、こういう隠し扉も関係してるのかしら」
「なにそれ?」
「去年の新入生……つまり今の2年生なんだけど、亜族が一人行方不明になってるのよね」
つまり、その先輩は間違ってこういう隠し通路に入って、出られなくなり、そのまま……ということなのだろう。思わず苦い顔をした僕とソニアは頭を振ってクラウド捜索に切り替える。
「コタローくん、照明魔法は使えるよね」
「は、はい……!」
通路に入り、近くの魔素を辿ってもクラウドはいない。というより、落ちた可能性が高い。迷路になっているようだしこの隠し扉の奥にもいくつか隠し扉が隠れている。
「《黄魔法》《提灯》」
コタローくんが照明魔法を展開すると不思議な形の小物が現れた。木に紙を貼った物で中に光が入っている物の様だ。見たことがない形だから黄の国特有の魔法なのだろう。
隠し通路に入ると扉は閉まった。二人が慌てて扉をぺたぺたを触るのを見て「開き方はわかってるから帰りも開けられるよ」と告げればほっとしたようだった。
「ヴィンセントくん!いる!?」
「コタローか!?ここだ!」
次にコタローくんがクラウドに呼び掛ければ下の方から声が聞こえた。
「コタローくん、その照明魔法は君から切り離して……クラウドに渡せる?」
「え?あ、はいっ!できます!」
「じゃあ一回僕に渡してくれる?」
「は、はいっ《提灯》」
コタローくんが展開したチョーチンを貰うと《黒魔法》《人形》と小さな黒い人形を作りチョーチンにしがみつかせた。そしてクラウドがいるだろう下にチョーチンを落とした。
「クラウド!いまからそっちに向かうから動かないでよね。余計な事はしない事!」
「しねぇよ!……!?明かりか!?コタローありがとう!」
チョーチンにしがみつかせた人形がクラウドのポケットに潜り込んだのを感覚で確認してから僕は動き出す。階下へ向かう階段はあっち側にあるのがわかる。正直、あの問題児が大人しくしているとは思えないから早く合流した方がいい。
僕らは歩き出す。多分ここに長居するのはまずい気がする。なんとなく嫌な予感がするあの合成獣と同じ様なものを感じている。