13. 古代術式解析部
「ようこそ、古代術式解析部へ!ボクは部長のハーディ・コンセル。ロイドくんの話と噂は聞いているよ!」
「はじめまして、ロイド・D・アーチャーです。本日は見学を快く歓迎していただきありがとうございます」
チーム対抗戦の後は待ちに待った部活動見学だ。トーイに案内してもらい、部室へ向かうと迎えてくれたのは解析部の先輩方一同。
部長のハーディ先輩は薄灰色の髪にピンクの目をしたエルフ族で、にこにこと笑みを浮かべて椅子を引いてくれる。部員である先輩達もにこにこと紅茶を淹れてくれた。
「ロイドくんはクッキーは好き?このクッキーはボクのオススメなんだ。この紅茶とも良く合う」
「そうなんですね」
勧められたクッキーは甘さ控えめで確かに出された紅茶と良くあった。というより紅茶はやや渋めだったから僕の口には合ったけどトーイは一口飲んで自分で別の紅茶を淹れていた。多分これは……僕の好みに合わせてくれたんだろうか。一学生の僕に?
「古代術式解析部には新入生はトーイくんしか居なくてね。ロイドくんが入ってくれると……とっても。そう、とぉっても有難くてね」
「それにアーチャーくんは学年主席でしょ?その魔法のセンスも術式の組み方も素晴らしいって聞いたよ」
「さっきの一年生合同試合も見てたよ!あんなに早く展開できて、的確な魔法は見たことないよ!」
口々に先輩達が僕を褒める。僕だって褒められて嫌な気はしない。えー、へへ。ありがとうございます。と照れ隠しに紅茶を飲めば目の前に出されたのは入部届。気が早すぎない?
「それにアーチャーくん、図書室に隠された秘密扉の暗号を解いちゃったんでしょ?」
紫の髪の先輩がそう告げれば、ハーディ先輩はそれは初耳だったらしくピンクの瞳をぱちぱちと瞬かせた。
「図書室の秘密扉って……七不思議の一つかい!?本当にあったんだねぇ!」
「学園に七不思議があるんですか?」
僕だって14歳の子供。怪談や七不思議と聞いてワクワクしない訳がない。それに図書室の隠し通路が七不思議の一つなら、魔法学園の七不思議には魔法関連のことも沢山あるだろう。
僕が七不思議について身を乗り出すとハーディ先輩はトーイや先輩達と目配せして、頷く。「ローイド」とトーイは甘い声をして僕にペンを握らせた。にこにこと笑みを深めたハーディ先輩は入部届を僕の目の前に滑らせて「興味、あるよね?ロイドくん」と綺麗な目を細めた。
つまり七不思議について詳しく知りたければ入部しろ、と。まぁ僕もそのつもりだったからと入部届にペンを走らせる。紫の先輩は僕が書き上げた瞬間に紙を取り上げ、提出する為に小走りで出て行ってしまった。万が一にでも訂正させないつもりかな。何というか、囲まれたなって感じで乾いた笑いが出た。
「ロイドと同じ部活で俺は嬉しいよ!これで先輩達から猫可愛がりされる時はロイドも一緒だ!」
「ちょっとトーイ、もしかして生贄を探してた?」
「そんなことないよ!ロイドが同じ部活に入って嬉しいのは本当!」
「……そういうことにしておいてあげるよ」
「あはは!君たち本当に仲がいいね!」
からからと先輩達が笑う。
「改めて。ようこそ古代術式解析部へ!主な活動は古代術式を見つけて暗号を解いたり、試したり、または新しい術式を生み出したりと“古代術式解析”と名を打っているものの魔法の研究が主になっているよ」
「そ。それに七不思議とか四つの怪奇……通称四怪とかオカルト関連の謎を解決しようって遊びもしてるよ」
「遊びだけじゃないよ!ちゃんと最低年に一回、最高研究機関である学院に解析した術式の論文とか、新しく作った術式の報告とかしていてね、二年前には名誉賞を頂いた先輩もいるんだよ!」
活動実績もちゃんとしてるのか!ハーディ先輩やトーイの説明を聞きながら、なかなかいい部活に入ったんじゃないかと頷いた。
「説明ありがとうございます。僕も今日からよろしくお願いしますね」
それで、あの……。と七不思議の話の続きを促せばトーイも知りたかったらしく「オレも七不思議の詳細を知りたいな」と声を出す。
「学園の七不思議だね!学園の七不思議、というか創造都市の七不思議って言った方が良いかな?
曰く、古城には地下第12層以上に層があるとか、創造都市は古代術式によって誕生したとか、忘れ去られた第八植物園があるとか、都市の下には地下迷宮が広がっていて最新部には神が作った宝があるとか、そんな感じだよ。図書室の秘密扉はその地下迷宮の入り口だとか、そのヒントがあるとか言われてたんだ」
「へぇ。図書室の調査が終わったらみんな集まりそうだな!ロイド、一緒に行くか?」
「僕はもう行ったからいいかな」
「そりゃあそうか!」
図書室がまた解放されたら秘密通路に色んな生徒がごったかえすと思うし、人混みは苦手だし他にやりたいこともあるから遠慮しておく。
その日は先輩達の自己紹介と雑談で終わった。
たったそれだけだったけど七不思議や四怪、解析された術式の話だとか面白い話ばかりだった。
「みんな良い人そうでよかった」
寮への帰り道、ご機嫌そうなトーイに話しかける。グラディアス先生からの誘いとはいえ、きっとトーイが居なかったらもう少し悩んでいただろう。
「みんないい先輩達だったろ?あーあ、でもロイドが来ちゃったから今度からお菓子の山は独り占めできないか!」
「何時ぞやに“先輩達が部活に来るたびに山程お菓子くれるから太る”って言ってたんだからそれが分割されて嬉しいと思ってるくせに」
「違いねぇや!」
まぁ、僕が食べるとは一言も言っていないけれど。
「ーーーーーーーーー」
「うーるる、ひゅ?なぁに?トーイ今なんて言ったの?」
「ロイドが俺の親友でよかったって言っただけさ」
竜の言葉はわからなかったけれど、そうなんだ。と僕は気にしなかった。
うーるるいひゅーるい。『利用価値のある人間だ』。そうトーイは呟いた。人間にはわからない竜の古代語で。




