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この復讐は俺のもの  作者: 桜ジンタ
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090 天蒼、天翔の姿が見えないんだが、何処に居るのか知らないか?

 清明武林祭が終わり、一ヶ月と四日が過ぎた、四月上旬の黄都は、強い日差しに照らされていた。

 華界では、四月上旬は立夏りっかと呼ばれる、夏に分類される時期なのだ。季節は春から夏に、移り変わったのである。


 強い日差しに炙られ、熱気に満たされた午後の黄都の中央……黄極城の中では、簡素で涼し気な、夏用の宮廷服に身を包んだ雷元王が、娘である天蒼の部屋を、訪れていた。


「天蒼、天翔の姿が見えないんだが、何処に居るのか知らないか?」


 風通しの良い、二階にある自室で、天蒼は護衛の海燕と、会話を楽しんでいた。

 窓際に置かれた椅子に、向かい合わせに腰かけて。


 天蒼は会話を中断して、父親の問いに答える。


「天蒼なら、青霞と共に、封神山に向かいましたよ」


「また東掌門に、会いに行ったのか。此処の所、毎日通っているではないか」


 東掌門というのは、封神門の掌門である、迅雷の事だ。


「一カ月もの間、東掌門は眠っていたも同然の状態でしたから、天翔も青霞も、色々と積もる話があるのでしょう」


 天蒼は続ける。


「二人共、雷山に戻る予定を先延ばしにしてまで、東掌門に時間の余裕が出来るのを、待っていた訳ですし」


 封神決戦氷獄圈の結界から出た後、迅雷は天翔達の治療を受け、何とか命を長らえ、意識も回復した。

 だが、あくまでも死を免れただけであり、瀕死と言える程に、ボロボロになっていた迅雷の身体は、凄腕の治癒功の使い手達が治療を行っても、簡単には治らなかった。


 故に、黄国政府に所属する、治療の専門家達は、特殊な治療用の結界術を、使用する事を決めた。

 仙術を由来とする、超高度な治療術が仕掛けられた霊廟を使用し、迅雷を徹底して治療する事になったのである。


 迅雷は霊廟内の結界の中に隔離され、一人で一カ月の時を過ごす事になった。

 結界内で治療を受けている間、迅雷は意識を失うので、「一カ月もの間、東掌門は眠っていたも同然の状態」と、天蒼は表現したのだ。


 治療は一カ月で終わり、意識を取り戻した迅雷は、結界……霊廟の中から、姿を現した。

 その時には、身体に負った全ての損傷が治療され、迅雷は元通りの身体に戻れたのである。


 無論、元通りとは言っても、子供の身体になった状態であり、本来の年齢通りの身体に、戻れた訳ではない。

 凶焔鳳凰が封印されても、呪いが解ける訳ではないので、子供になったままの身体は、そのままなのだ。


 ようやく話せるようになった、迅雷の元に、天剣は青霞と共に通い続け、様々な事を話した。

 話題は様々だったのだが、主な話題となったのは、迅雷が意識を失っている間に起きた、様々な出来事についてであった。


 今年の清明武林祭では、多数の重軽傷者は出たが、死者は素華の他には出なかった事。

 天翔と青霞が、昨年の事件に関する真実を、雷元王と政府に伝えた結果、迅雷に対する指名手配が、正式に取り消された事……。

 そして、行方不明になっていた、彩雲についての話など、話題には事欠かなかったのだ。


 彩雲は、清明武林祭の決勝当日の夕方、素華が麗虎の名で借りていた家の、地下倉庫で発見された。

 七星封縛とは次元が違う程に解除し難い、封神門の縛身点穴により、身体の自由が奪われていた彩雲は、地下倉庫を調べた、黄武十二聖の一人……紫萱しけんによって発見され、救出されたのだ。


 麗虎と名乗っていた素華と決闘し、敗れた彩雲は、素華に縛身系の点穴で、身体の自由を奪われ、監禁されていたのである。

 かなりのダメージを負っていたのだが、彩雲は治癒功を駆使して、自分で身体を癒した。


 治療を終えた彩雲は、清明武林祭の本選に参加した、他の武術家達から数日遅れて、黄都を後にした。

 結局、受付の者を除いて、何者にも素顔を見せる事無く、彩雲は去ったのである。


 清明武林祭の優勝という栄誉は、運営規則上は、決勝に進んだ天翔が、天剣という偽りの名と身分で、受ける筈だった。

 だが、己が若手武術家最強を名乗るには程遠い事を、自覚していた天翔は、優勝を辞退した。


 昨年に続いて、今年も清明武林祭は、優勝者無しという結果で終わった事なども、天翔は迅雷に話した。


「積もる話があるというのは、分るのだが……」


 雷元王は、気まずそうに言葉を濁す。

 年頃の娘が、命の恩人で身体が子供とはいえ、本当は十八歳の少年……もしくは、青年と言える年齢の、迅雷の元に通っているのだ。


 雷元王も父親として、色々と不安に思ってしまうのである。


「大丈夫ですよ、父上。東掌門が女性としての興味を持つのは、胸の豊かな女性だけだと、聞いていますから」


 父親としての雷元王の不安を、察している天蒼は、父親の不安を取り除く為の言葉をかける。

 そんな親子の様子を、海燕は微笑みながら、見守っていた。



    ×    ×    ×





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