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この復讐は俺のもの  作者: 桜ジンタ
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008 おい、あの小娘は仙闘機、持ってるのか?

「中々に見事な軽功じゃないか。雷聖門の皆伝というのは、嘘では無さそうだな」


 土煙で曇ったゴーグルを外して、着衣で拭きながら、少年は率直な感想を口にする。


「天剣は軽功を、徹底的に修行していますから」


 少年の言葉を耳にした天華が、少し自慢気に話を続ける。


「軽功を駆使した高速戦闘で、雷聖門での門派内予選を勝ち抜いて優勝し、今年の清明武林祭への出場を決めただけの実力が、天剣にはあるんです」


「あの小娘が雷聖門を代表し、清明武林祭に出るのか……」


「一応、私も準優勝しましたので、出場します。私達が黄都に行くのは、清明武林祭に出場する為なんですよ。里帰りも兼ねてですけど」


 清明武林祭への出場は自由であり、国外の者でも参加出来る。

 しかし、基本的に同門の武術家は、二人までしか出場出来ないので、同じ門派に三人以上の出場希望者がいる場合、門派内で予選を行い、代表者を二人に絞り込む慣例があるのだ。


(こんな小娘連中が、雷聖門の代表ねぇ。まぁ、確かに……歳の割りには悪くは無いか)


 そう心の中で呟いた少年の目線の先で、天剣の持つ剣のような武器が、いきなり二つに分離し、二本の刀となる。

 両手に刀を手にした天剣は、次々と盗賊達を薙ぎ払い続ける。


 天剣の武器は、鳳凰刀だったのだ。


「鳳凰刀か! 随分と珍しいもん使ってるな」


 少年は、驚きの声を上げる。

 扱いの難しい鳳凰刀の使い手は、武林では珍しいのである。


「天剣と私にとって、命の恩人であり、天剣にとっては憧れの対象でもあった武術家が、鳳凰刀の使い手だったんですよ。軽功を徹底的に鍛え上げているのも、その武術家が軽功の達人だったからで……」


(鳳凰刀の使い手で、軽功の達人? おいおい、それってまさか……)


 訝しげな顔をしながら、思いを巡らせている少年の顔を見て、天華は何かに気付いたような顔をする。

 今はゴーグルを外しているので、少年は素顔を露にしている。


「そういえば、君は天剣が憧れている人に、良く似てるね。少し女顔な辺りが……」


 天華の話を聞いた少年は、何故か少し照れたような顔で、ゴーグルを装着する。

 そして、戦っている天剣の姿を、少年は眺める。


 天剣は既に、十数人の盗賊達を、倒してしまっていた。

 血塗れになった盗賊達は、生死不明の状態で、荒野に倒れている。


「こいつ無茶苦茶強ぇよ! 俺達じゃ無理だ! 御頭、頼んます!」


 天剣に圧倒される盗賊達が、御頭……青旗團の首領に助けを請う声が、荒野に響く。

 助けを請う声に応え、盗賊達の後ろに控えていた馬車の中から、青い功夫服に身を包んだ大女が姿を現す。


 青い功夫服は、褐色の肌が多く露出するように、加工されている。


「王豹牙か……」


 大女を目にした少年は、大女の名を呟く。


「あれが、青旗團の頭領?」


 天華の問いに、少年は頷く。

 青い功夫服を着た、六尺五寸程の長身を誇る、長い髪を青く染め上げた大女が、青旗團の頭領……王豹牙なのである。


 辺りを見回し、自分の配下の者達が、天剣一人に十人程も倒されてしまった事を知り、豹牙の目が怒りに燃える。


「お前ら、下がってろ! この小娘の相手は、あたしがする!」


 豹牙は背負っている大刀を鞘から引き抜くと、肩慣らしをするかのように、片手で振り回す。

 刀身の刃の無い側……刀背に、狼の牙のような鋸状の刃がある刀は、狼牙刀ろうがとうと呼ばれるのだが、豹牙の手にしている刀は、普通の人間では振り回す事など出来そうにない、巨大な狼牙刀……狼牙大刀ろうがだいとうである。


 狼牙大刀を振り回して、肩慣らしを終えた豹牙は、天剣を睨みつけながら、身構える。

 豹牙の身体は仄かな光を放っている。


 内功を発動させ、体内に気を巡らせているのだ。


「親玉登場って訳か……面白い!」


 雑魚である盗賊達が後退していくのを、追撃しようとしていた天剣は、内功を発動した豹牙の存在に気付き、不敵な笑みを浮かべながら身構える。


「おい、あの小娘は仙闘機、持ってるのか?」


 二百メートル程の間合いを取り、対峙する天剣と豹牙を見て、少年は天華に問いかける。


「持っていません。私達は機功は習得したけど、まだ仙闘機は手に入れて無いので」


 華界武林の有名門派では、機功も修行項目に含まれている場合が多いので、皆伝を受けた武術家には、機功を習得している者達が多い。

 しかし、基本的に仙闘機は貴重品であり、機功を習得した者であっても、簡単に入手する事は出来ない。


「天剣と私には、一族が受け継いでいる仙闘機が有るので、黄都にある実家に戻れば、仙闘機を手に入れる事が出来るんだけど……」


 雷聖門での機功修行の際は、天剣も天華も、雷聖門の所有する仙闘機を借りて、修行していた。

 それ故、仙闘機を所有していなくても、機功の修行は可能だったのである。


「青旗團の頭領……王豹牙の持つ狼牙大刀は、仙闘機だ。仙闘機無しに勝つのは、あの小娘は当然、俺でも無理だぜ」


 少年の話を聞きながら、豹牙を見ていた天華の顔が蒼ざめる。

 手にした狼牙大刀で、自分の身体を傷つけるかのような、機功套路特有の動きを、豹牙が始めたのだ。


「機功套路! こいつ、仙闘機を持っているのか?」


 天剣は舌打ちをし、焦りながらも、豹牙に向かって突撃する。

 仙闘機を持たぬ自分では、仙闘機を機動大仙と化した豹牙には、勝てない事が分っているので、豹牙が機功套路を舞い終えるのを阻止しようと、天剣は考えたのである。


 軽功を発動し、猛スピードで突撃して来る天剣に向けて、機功套路の途中の豹牙は、狼牙大刀を振るう。

 狼牙大刀の刃は青白く輝き、三日月に似た形の青白い光を、天剣に向けて放つ。


 高度な内功と、武器を操る技量を併せ持つ武術家の中には、剣や刀などの刃を持つ武器を媒体として、体内を巡らせている気の塊を、放てる者達がいる。

 刃から放たれる、光り輝く刃の如き気の塊は、刃気じんきと呼ばれるが、剣の場合は剣気けんきと呼ばれる場合が多い。


 気の刃である刃気による遠距離攻撃は、剣や刀による直接の斬撃よりは、威力が落ちる。

 それでも、硬功で身を守っていない人間であれば、殺傷可能な程度の威力がある。




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