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この復讐は俺のもの  作者: 桜ジンタ
59/91

059 どうやら、ようやく本気を出さないと勝てない相手に、出会えたようですね

 闘技場の中央で、二人の謎の武術家達が、同時に身構える。

 清明武林祭に参加する武術家には、自らの門派の看板を背負い、参加する者達もいれば、そうでない者達もいる。


 身構えている二人は、そうでない者達の方だ。

 学んだ門派を伏せているどころか、門派を悟られるような技の使用も、これまでは避け続けて来た。


 つまり、本気を出さずとも、準決勝まで勝ち抜ける程の、ずば抜けた実力者だとも言えるのだ。

 そんな二人は、試合が始まる時が来た事を、既に察している。


 二人が身構えた数秒後、少し離れた場所に立っていた審判が、試合開始を宣言し、花火が青空に打ち上げられる。

 観客達は二人の武術家達の為に、大歓声を発する。


 試合開始から数分の間、両者はこれまでの試合と同様に、門派を悟らせない戦い方を続ける。

 武術家を名乗る者なら、どの門派の武術家であっても使えるような内功や外功で、戦い続ける。

 しかし、そのような戦いにおいては、両者の実力は互角であり、勝負は一進一退のままであった。


「どうやら、ようやく本気を出さないと勝てない相手に、出会えたようですね」


 戦いの途中で突如、彩雲が嬉しそうな口調で、麗虎に語りかける。


「黄国において、最強の若手武術家を決める大会の割りには、正直言って物足りない相手ばかりだったもので……退屈していたんですよ」


 そう言いながら、彩雲は仮面に手で触れる。

 すると、白い無地の仮面が、一瞬で猿の顔が描かれた面に変わり、白い功夫服が、猿の身体のようなこげ茶色に変わる。

 外見を一瞬で変化させた彩雲の身体は、仄かな光を放っている。

 何等かの内功を使っているのだ。


 猿の仮面を被り、猿の如き色合いの功夫服を身に纏った彩雲は、猿のような身軽かつ素早い動きで、麗虎に襲い掛かる。

 軽功を発動している麗虎ですら、かわし切れない程の素早く変則的な動きで、彩雲は麗虎の身体を引っ掻く。


 胸元を引っ掻かれた、麗虎の功夫服が切り裂かれ、血が噴き出す。

 単に指先で引っ掻かれただけなのに、刃物で切裂かれたかのように、負った傷は深い。

 麗虎は苦痛に顔を顰めながら、経絡を流れる気を操作して傷口を塞ぎ、出血を一時的に止める。


「この技は変臉功へんれんこう! まさか実在する技だとは……」


 麗虎は驚いたような口調で、呟く。


「ご存知でしたか、変臉功を。流石は私に本気を出させるだけの事はあって、失われた技に関しても、造詣が深い方のようですね」


 再び、彩雲は仮面に手で触れる。

 すると、今度は面が虎の顔となり、功夫服も虎の身体のように、黄色と黒の虎縞模様に変化する。


 彩雲は四つん這いになると、虎が吼えるような叫び声を発しながら、地を高速で駆け、右前脚……では無く右手で麗虎に攻撃を放つ。

 彩雲の指先の爪は、まるで虎の爪のように伸びていて、麗虎の功夫服を紙切れのように切裂いてしまう。


 麗虎は内功を硬功に切り替えていたので、身体を切裂かれはしなかったのだが、彩雲の右手による攻撃には、爪で引っ掻く以外にも、打撃としての強力な攻撃力があった。

 麗虎は硬功を発動したまま、五十メートル程吹っ飛ばされる。


 彩雲の打撃の強烈さと、奇妙な外見の変貌に、闘源郷の観客達は騒然とする。



    ×    ×    ×




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