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この復讐は俺のもの  作者: 桜ジンタ
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056 流石はオリハルコン、双衝打破程度じゃ、籠手すら崩せないか!

 リオが身構えたのを目にして、迅雷も身構える。

 その直後、二人から少し離れた場所に立っている、審判を務める礼服に身を包んだ初老の男が、嘯による大声を使って、試合開始を宣言。


 蒼穹に花火が、続け様に打ち上げられる。

 試合開始を知った観客達が、これまで以上の歓声と声援を、二人の武術家に送る。


 先に仕掛けたのは、リオだった。

 レーゼ・アクセルを発動させたリオは、一瞬で迅雷を間合いに捉えると、手にしたリディル・モラルタで、迅雷に鋭い突きを放つ。


 迅雷は突きを、紙一重の間合いでかわしながら、両掌に気を集める。

 そして、リオの懐に入り込むと、ガルグ・ガルヌに守られていない顔面を狙う。


 だが、リオは瞬時に、右手だけを引き戻し、籠手で顔面を守る。

 籠手による防御のせいで、顔面を狙い難い状態になる。


 それでも、他の部分よりは、防御能力は低いだろうと考え、迅雷は攻撃を続行。

 リオの籠手に、両掌で掌打を打ち込みながら、気を放つ。


 つまり、迅雷は双衝打破を、ガルグ・ガルヌの籠手に放ったのだ。

 しかし、只の気を放つ双衝打破の威力は、ガルグ・ガルヌには通用しない。


 迅雷の放った気は、籠手に弾かれて消え失せ、リオの顔面には届かない。

 打撃による威力でも、リオのガードは崩れない。


 掌打の威力を籠手が殺いだ上、上手く後方に身体を流したので、リオのガードは崩れなかったのだ。

 双衝打破による攻撃を受けても、リオはノーダメージと言える状態である。


(流石はオリハルコン、双衝打破程度じゃ、籠手すら崩せないか!)


 普通の籠手であれば、迅雷の双衝打破は、一撃で粉砕出来る。

 だが、リオにも籠手にも、一切ダメージは与えられなかった。


 オリハルコン製の武具の強度を、迅雷は改めて思い知る。


(だからといって、こんな人目につく状況で、封神門の技を使う訳にはいかないし……)


 続け様に、鋭い斬撃や突きを放ってくる、リオの攻撃をかわしながら、どうやってリオを倒すか、迅雷は考える。


(中々、見事な剣さばきだ。華界の武術家相手に、予選を勝ち抜いただけの事はある……って、感心してる場合じゃねえや!)


 リオがリディル・モラルタを振りかぶり、迅雷に向けて振り下ろす。

 迅雷は左にかわしたので、リディル・モラルタは地面を打ち、土砂を吹き飛ばしながら、宗厳が狼牙棒で穿った以上の大穴を穿つ。


 当然、土煙が舞い上がり、迅雷とリオの身体を、観客達の目線から隠してしまう。


(今なら封神門の技を使っても、気付かれないんじゃないか?)


 土煙に隠れている間なら、観戦席からも特別観戦席にいる武術家達からも、使った技を正確には、把握され難い。

 それならば、封神門の技を使っても、大丈夫なのではないかと、迅雷は考えたのだ。


 無論、封神門しか使わないような内功や、迅雷しか使えない神域軽功などは、この場面でもリスクが高いので、使う気はない。

 あくまでも、他の門派でも使う、普通の内功を使用した、封神門の強力な技に限られる。


 迅雷は即座に膨大な気を費やして、大抵の門派で扱われる、炎撃功を発動する。

 迅雷の両掌から、気で作られた炎が溢れ出る。


 迅雷は、高速移動の為に、レーゼ・アクセルを発動し続けている……気を使っている、リオの気配を察して突撃。

 炎をまとった両掌を突き出し、リオの胸部……ガルグ・ガルヌの胸板辺りに、掌打放を打ち込む。


 今回は、ガルグ・ガルヌ自体を破壊するつもりなので、頭部を狙う必要はない。


炎帝双掌打えんていそうしょうだ!)


 炎撃功で発生させた強烈な気の炎を、掌打を直接相手に打ち込みながら、掌から放つ、炎撃功の掌打放が炎帝掌打えんていしょうだ

 それを両掌で放つ場合、炎帝双掌打えんていそうしょうだとなる。


 封神門独自の技なのだが、似たような炎撃功の技なら、他門派にもある。

 故に、迅雷は炎帝双掌打を、選んだのである。


 炎帝双掌打を食らったリオは、火達磨となって土煙の中から飛び出して来る。

 炎帝双掌打は、凄まじい気の炎による攻撃だけでなく、掌打による強烈な打撃攻撃も兼ねていて、その威力は双衝打破より数段上。


 しかも、今回は視界が悪く、リオは迅雷の攻撃に対し、上手く身体を流す事が出来なかった。

 故に、リオは掌打の強烈な威力に、身体ごと吹っ飛ばされたのだ。


 両掌から放たれた、凄まじい気の炎は、並の金属製の鎧でも、一撃で完全に破壊する事が出来る。

 しかし、オリハルコン製のガルグ・ガルヌは、流石に強固であり、胸板辺りが砕け散る程度のダメージしか、受けてはいなかった。


 ガルグ・ガルヌは殆ど無事とはいえ、炎帝双掌打を食らって吹っ飛ばされ、火達磨に焼かれたリオの方は、無事では済まない。

 意識を失ったのだろう、リオは身動きすらせず、仰向けに倒れたままである。


 誰がどう見ても、既に勝負は着いていた。


「勝者、無名!」


 審判は、土煙の中から出てきた迅雷の勝利を、嘯による大声を使って、会場中に宣言する。

 会場からは、割れんばかりの拍手と歓声だけでなく、勝負が決する大技が放たれた瞬間が、土煙で見えなかった事に対する不満の声が、少しだけ上がる。


 救護班の者達が、負傷して意識を失っているリオの元に駆け寄り、即座に治癒功を使って、治療を始める。


(死なない程度に、威力は抑えたとはいえ、少しやり過ぎたかな?)


 リオの身を案じた迅雷は、そんな事を思いながらも、観客達に手を振りながら、青龍門の方に歩いて行く。



    ×    ×    ×




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