表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この復讐は俺のもの  作者: 桜ジンタ
44/91

044 まさか、あいつら……王族なのか?

 清明武林祭の運営委員会の係員が、本選進出を決めた八人の武術家達に、明日から始まる本選についての伝達事項を伝え終わった頃、既に日は沈んでいた。

 実は、色々なトラブルが重なり、時間が遅くなってしまったのだ。


 闘源郷を後にした天剣と天華……そして迅雷は、黄都へと向かった。

 栄えている首都である黄都の繁華街は、夜中にでもならない限り、闇に包まれる事は無い。


 迅雷は天剣や天華と共に、繁華街の甘味処で、空いていた腹を軽く満たした。

 その後、明日の健闘を誓い、迅雷は天剣達と別れた。


 天剣と天華が夕食をとらず、甘味で軽く腹を満たしただけで済ませたのは、実家で家族が夕食の準備を整えて、待っているからである。

 迅雷と別れた天剣と天華は、昨夜と同様に、黄都……というよりは黄国の中枢である、黄極圏に向かって、夜の街を歩き始めた。


 迅雷の方は、天剣や天華と別れ、一度は二人から遠ざかった。

 だが、すぐに二人の方に近付いて行き、密かに尾行を開始する。


 天剣と天華には、色々と気になる点が多いので、二人の素性を調べる為に、迅雷は尾行する事にしたのだ。

 天剣と天華の二人は、迅雷が尾行しているなどとは、夢にも思ってはいない。


 夜にしては明るい黄都で、天剣と天華の後を、迅雷は追い続ける。


(黄極圏に入るとこまでは、予想の範囲なんだけどね)


 黄極圏の外周部……官吏や軍人が居住する地域に足を踏み入れた、天剣と天華を眺めながら、迅雷は心の中で呟く。

 繁華街から黄極圏の中心に向かって伸びている、大通りに面した建物の上から、大通りを歩く天剣達の様子を、迅雷は窺っているのだ。


 闘源郷への凶焔鳳凰の持ち込みを、何等かの特権で成し遂げたり、雷聖門が応援を送り込んでいない筈の、昨年の清明武林祭決勝を観戦していたりと、迅雷にとって天剣達は、謎が多い存在となっている。

 凶焔鳳凰の持ち込みを助けてくれた事もあり、天剣達を敵となる存在では無さそうだと、迅雷は判断している。

 しかし、不確定要素は取り除くに限ると考えた迅雷は、天剣達を尾行して、正体を掴もうと決意していた。


 天剣達と別れた迅雷は、夜間の隠密行動の際に使用する、擬装用の黒い布を被り、天剣達の尾行を開始したのだ。

 この一年の間、隠密行動を取る機会が増えたので、そういった擬装用の布を、迅雷は功夫服の懐に、常に忍ばせている。


 黒い影となった迅雷は、石造りが多い建物の屋根の上を、身軽な動きで移動しながら、天剣達の後を尾行。

 誰にも気付かれる事無く、黄極圏の外周部に辿り着いたのである。


 無論、夜間に身体を光らせれば目立つので、迅雷は軽功を使っていない。

 身軽な迅雷にとって、屋根の上を渡って行く程度の体術は、軽功無しでも余裕で可能なのだ。


 凶焔鳳凰の持込の際、天剣や天華が口にした内容と、行使した特権から、二人が黄国の中枢にいる者達の娘である事は、迅雷にも分っていた。

 それ故、天剣達が黄極圏に足を踏み入れた事までは、迅雷には予想出来ていたのである。


(あとは、あの二人の家が、何処かという事なんだが……)


 家が分れば、天剣達の親が誰なのかが分り、天剣達の正体も分る。

 警備兵達や天剣達に見付からないように、迅雷は気を付けながら、屋根伝いに尾行を続ける。


 現在の黄都は、何処でも厳重な警備体制が布かれているのだが、黄極圏は他の地区よりも、遥かに厳重に警備されている。

 二十メートルおきに三人組の警備兵達が、配置されているような状態となっているので、並の人間であれば、簡単に警備兵達に見付かってしまう。


 だが、こういった隠密行動に慣れている迅雷は、並の警備兵達になど気付かれずに、尾行を続けられる。


(おいおい、この先は政府や軍の施設で、居住区じゃ無いぜ!)


 迅雷は心の中で、驚きの声を上げる。

 天剣達は官吏や軍人が住む居住区を越えて、政府や軍の施設が並ぶ地区に、足を踏み入れてしまったのだ。


(この先で人が住む場所なんて、王族が住む黄極城しか無いってのに……)


 政府関係施設に面した大通りを、談笑しながら歩く、天剣と天華の様子を窺う迅雷の頭の中に、これまでは考えもしなかった可能性についての考えが、浮かんでくる。


(まさか、あいつら……王族なのか?)


 天剣達が行使した特権から考えれば、天剣達が王族だというのは、有り得ない話では無いなと、迅雷は思う。

 そして、あの特権を行使する直前、天剣が受付の女性に、何かを見せた上で、身体を仄かに気で光らせていたのを、迅雷は思い出す。


 天剣の身体の陰だったので、それが何かは分らなかった。

 だが、もしも天剣達が王族であるなら、あの時に天剣が、受付の女性に見せた物が何であったのか、迅雷にも予測がつく。


(雷珠か……)


 天剣が見せたであろう物の名を、迅雷は心の中で呟く。

 雷珠とは、黄国の現王家である、雷家の者である事を示す、身分証明用の装飾品である。

 首飾りや腕輪などにして、王族は常に雷珠を身につけている。


 雷珠は、鶉の卵程の大きさがある、黄色を帯びた半透明の宝石の中に、雷家の紋章である稲妻を象った金属板が、埋め込まれている物である。

 雷家に伝わる秘術により作られる雷珠には、それぞれ王族が一人だけ登録されている。


 登録された唯一の王族だけが、気を流し込み、雷珠の中の金属板を、輝かせる事が出来る。

 つまり、雷珠を盗もうが王族だと偽装するのは不可能なので、黄国において雷珠を持ち、光らせる行為は、王族である事の完全な証明となるのだ。


 この雷珠の性質の為、王族は武術を嗜まずとも、雷珠を光らせる程度の、最低限度の気を操る技術の修得が、義務付けられている。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ