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この復讐は俺のもの  作者: 桜ジンタ
26/91

026 まぁ、普通は……そう考えるだろうね

「ーー話を聞いた限りでは、東少侠は呪仙闘機を封印せずに、亡くなったんですよね?」


 天華の問いに、迅雷は頷く。


「封神界にある呪仙闘機は、兄貴から秘伝書を受け継いだ俺が、秘伝書に記されていた方法を使って封印したんだ。主無き呪仙闘機を封印するのは、大した手間はかからないんで、すぐに終わったんだが……」


「主がいるのといないのでは、封印の手間が違うものなのか?」


 今度は、天剣が迅雷に問いかける。


「主のいる呪仙闘機を簡単に封印出来るのなら、一年前の闘いの時に、兄貴は窮奇を封印しているさ」


「それは、そうだな……」


 迅雷の返答に同意するかのように、天剣は呟く。


「ーー事前に封印用の大規模結界を準備して、その結界の中に、機動大仙と化した状態で追い込んだ上でないと、主のいる呪仙闘機は封印出来ないらしい。凶焔鳳凰と共に、兄貴から受けついた神仙闔封によるとね」


 迅雷の語った通り、神仙闔封によれば、主がいる呪仙闘機は、封印用の大規模結界の中でしか、封印される事は無い。

 しかも、封印する者も仙闘機と融合して、機動大仙と化した上で、膨大な気の力を費やさなければ、封印出来ないのだ。


 人間が発する事が出来る気の量では、機動大仙と化した呪仙闘機の封印は、不可能なのである。

 人間を遥かに上回る気の力を発生させる、機動大仙とならなければ、呪仙闘機を封印する事は出来ない。


「そんな大規模結界に、素華が追い込まれるとは思えない。窮奇の封印は不可能だな」


「まぁ、普通は……そう考えるだろうね」


 天剣の言葉を聞いた迅雷は、意味有りげな表情を浮かべつつ、曖昧な言葉を口にする。


「ーーそれで、お前は兄上……東少侠や、同門の者達の仇を討つつもりなのか?」


 天剣に問われ、迅雷は頷く。


「しかし、黄国の警衛刑部が総力を上げても、見つけ出す事が出来ない素華を、どうやって探すつもりだ? 見付けられなければ、仇討ちどころでは無いだろう」


「素華師姐は今年も、清明武林祭の決勝の場に現れる。王族連中を殺戮する為に」


 確信しているが故に、そう断言した迅雷の言葉を聞いて、天剣と天華の表情が凍り付く。

 少し躊躇いがちに、天華は口を開く。


「根拠は?」


「素華師姐は生きているに違い無いし、王族に対する復讐を、諦めている筈も無い」


 当然だと言わんばかりの口調で、迅雷は続ける。


「そして、この一年間……王族達の殆どは、黄極城の中に篭りっきりだった。幾ら素華師姐であれ、絶界に護られている上、黄国軍により厳重に警備されている、黄極城に篭った王族達を襲撃し、殲滅するのは不可能だ」


 絶界による防御は、外部からの窮奇クラスの機動大仙による攻撃ですら、防ぎ切る事が出来る。

 しかも、黄極城への入り口は、黄国軍により厳重に警備され、不審者が仙闘機である可能性がある武器を持ち込む事など、許される訳も無い状況である。


 黄極城の入り口は四箇所と少なく、それぞれの入り口では、過剰なまでに厳重な警備体制が布かれている。

 それ故、不審者などが進入する事は、不可能なのだ。


「しかし、清明武林祭の決勝が行われる闘源郷は、同じ絶界で護られているとはいえ、黄極城とは違い、多数の観客や武術家が訪れる上、出入り口も多い。厳重な警備を固めたとしても、黄極城と比べれば、かなり侵入が容易であり、王族達を襲撃し易い」


 迅雷の話に聞き入っていた天剣が、口を開く。


「黄極城に比べれば襲撃し易いというのは、その通りかもしれない。しかし、厳重な警備の目を掻い潜って、素華が闘源郷に侵入出来る可能性は、低いんじゃないのか?」


「観客や参加する武術家に扮して、素華師姐が紛れ込む可能性は、高いと思う」


「馬鹿な! 素華の面は割れているのだから、そんな真似するのは不可能に近い!」


 天剣の言う通り、素華の顔は似顔絵が印刷された手配書により、黄国中に知れ渡っている。

 当然、警備の者達や清明武林祭を運営する者達も、素華の外見を熟知している。


(それが、そうでもないんだよね。呪いを受けると俺みたいに、外見変わってる可能性があるんだよ)


 迅雷は心の中で呟きつつ、その事を天剣達に上手く伝える方法について、頭を巡らす。


「ーー呪仙闘機による呪いは、主となった者の外見を、変えてしまうものが多いんだ」


 迅雷の話は、口から出任せである。

 実際は、呪仙闘機により、どのような呪いを受けるかの記録を、迅雷は知らない。


 どのような呪いを受けるかの記録は、実は呂望廟に残されていたのだが、素華が破壊した時に、失われてしまったのである。

 その事は、素華も迅雷も知らない。

 ただ、素華の外見が呪いで変わっている可能性を、迅雷が考慮するのは、妥当と言える。

 迅雷自身が呪いにより、外見が変わってしまっているのだから、同じ事が素華に起こらないとは限らない。


「ちなみに、凶焔鳳凰の呪いは、髪が白髪になってしまう呪いでね、兄貴も死ぬ前、爺さんみたいな白髪になっていたんだ。俺も今は染めてるけど、初めて凶焔鳳凰と融合した後は、年寄りみたいな白髪になってたんだぜ」


「ーー呪仙闘機の呪いって、そういうもんなのか?」


 天剣は訝しげに、天華に尋ねる。


「獣に姿が変わるような例もあるらしいという話を、昔……本で読んだ事があります。髪が白髪になるくらいなら、生易しい方では?」


「禿げてる人が凶焔鳳凰の主になったら、呪われても何の影響もないんじゃないか? 白髪になる髪の毛が無いんだし」


 二人の少女の会話を聞きながら、本当は髪が白髪になる程度の、生易しい呪いじゃ無いんだけどなと、迅雷は心の中で愚痴る。




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