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旭日の西漸 第5部 魔法と科学篇  作者: 僕突全卯
第5章 戦いの後
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極東国際法廷 参

8月9日 第6回公判 被告人質問


 ナガハチロウの証言によって終わりかけていた裁判に波乱が生まれた。ルヴァンの罪状を追及する為には、彼女自身が殺意を持っていたことを証明しなければならない。日本最高の法曹の場にて、およそ1ヶ月半の急スピードで続いた国際法廷は、早期解決を望む日本政府の意思も相まって早々と佳境を迎えていた。

 証人と物的証拠の全てを提示した後、裁判は被告人質問へと移る。証言台の上には実質的に主導的役割を担ったミャウダーの姿があった。


「・・・では、今回の事件を策略したのは、全て貴方方四幹部であるというのですね」


「はい、間違いありません。全ては我々が企て、実行したことです。ルヴァン様は御皇族という立場である以上、我らの王として立たれましたが、実際は傍観されていたに過ぎません」


 ミャウダーは計画立案と実行に対するルヴァンの関与を強く否定する。検察団の代表である中岡は一瞬だけ眉を顰める。


「ルヴァン氏を庇っているのではないですか?」


「・・・いいえ、真実を述べているだけです。我々は帝国復活の象徴として殿下を仰ぎましたが、“侵入者の排除”を除いて、殿下ご自身が何かの指示を出したことは無いのです」


 どうやら四幹部の意思はルヴァンを無罪、もしくは減刑に導くことで一致している様だ。そう確信した中岡はそれ以上の質問を止めてしまう。その後もルガール、ヒス、キルルと四幹部を構成していた者たちに対して順番に尋問を続けたが、同じ様なことしか言わなかった。


〜〜〜〜〜


8月31日 第8回公判


 被告人質問は3回に渡って行われた。四幹部以外の末端の構成員である6名については、上の指示に従っただけ、命だけは助けてくれ、と懇願するだけであり、情状証人が居ない彼らにとってはそれらは全て無駄に終わった。そして迎えた第8回公判の日、最後の1人であるルヴァンが証言台に立つ。


「ルヴァンさん・・・貴方は特殊作戦群の隊員たちを殺害する意思を初めから持って、彼らの前に現れたのですね?」


「いいえ、違います。最初に2人のニホン軍人が渡り廊下から落ちたというのも、私は気付いていませんでした」


 ルヴァンは中岡の問いかけをきっぱりと否定する。


「しかし、貴方は隊員に向かって“排除しに来た”と言ったそうですね? それは即ち“殺しに来た”という意味にも取れますが?」


「私は“艦から降りて貰う”という意味でそう言っただけです」


 「ラスカント」の中に居た当事者である者たちからすれば、ルヴァンの言葉が如何に詭弁であるのかが一目瞭然だろう。だが、あの巨大な艦の中で何が起こったのかは、当然ながら物証による立証が一切出来ない為、裁判においては証言に頼る他無いのだ。


「では何故、隊員を殺害したのですか?」


「銃を向けて来たからです。もしかしたら1人は脅しのみで発砲する気は無かったのかも知れませんが、気が動転していました」


「しかし、生存者である隊員の証言から見える貴方の高飛車な様子からは、とても動揺や混乱をしていた様には思えませんが?」


 顔を隠しながら証人として出廷した鮫島一曹は、自分たちと対峙したルヴァンの様子について事細かに証言していた。4人の隊員を無慈悲に殺害し、それを意に介す事無く不敵な笑みを浮かべ、「ラスカント」による殺戮と虐殺をショー、エンターテインメントと例え、テラルス人をサルと罵った彼女の言動については、此処に居る者たちは全員が知る所となっている。だが、彼女はそれを否定する様な証言を繰り出したのだ。


「・・・彼らからはそういう風に見えたのかも知れませんね。でもそれはあの兵士の主観の問題でしょう? 私はあくまで自己の身を守る為に行動しただけです。艦を落とされては私も死んでしまいますからね」


 ルヴァンは最初から特殊作戦群への殺意があったことを否定し、彼らの目の前に現れた目的はあくまで彼らを下船させる為だったと主張する。


「では、実際に銃を発砲した4人目についてはともかくとして・・・旋風に巻き込まれた1人目と2人目については過失、そして3人目の殺害については過剰防衛であったと認めますか?」


「1人目2人目が渡り廊下から落ちたところを、私は見ていないので何とも言えません。そして過剰防衛という概念が私には良く分かりません。軍人に銃を向けられたからには、応戦しなければ命は無いと思いました」


 ルヴァンは3人目と4人目の隊員を殺害した理由について、攻撃の意思を見せたのはあくまで向こうが先であり、彼らへの攻撃はそれに対する自己防衛だと述べた。


「しかしその後、貴方は残った特戦群の隊員たちを残らず殺害する様に、部下達に命じていますよね? これに関しては殺意があったことは明白だと思われますが」


「・・・機関を破壊した彼らが、そのままにしては次に何をするのか分かりませんでした。艦の被害を抑える為にそう命じたことは確かに事実です。しかし、それはあくまで自己と部下たちの身の安全の為です」


 ルヴァンは検察の追及に対して、弁護士からの指示を思い返しながら答えていく。


「では最後に・・・貴方自身の考えについてですが、貴方には四人の幹部たちと同様にテラルスを蹂躙する意思と意図があったのではないですか? 世界への宣戦布告と降伏勧告を行ったのは、間違い無く貴方ですよね? それに特戦群の隊員たちに向かって貴方が口にした“全ては天空に支配される”、“私がテラルスの神になった”といった言葉には明らかに侵略の意図が介在している」


 ルヴァンはレーバメノ連邦のサクトア、そして幕照の上空にて、空中に投影された画面を介して世界に向かって宣戦布告と降伏勧告を行った事実がある。これについては数多の目撃者が居り、歪めようの無い事実だ。もし彼女自身にテラルスに対する侵略の意思が無ければ、この様な布告を自ら行うことは無いだろう、検察団の代表である中岡はそう問いかける。


「・・・例え滅びた国であっても、国家の皇族として生まれたからには、例え自らの意思に反することでも、民が望むことを行わなければならないこともあります」


 ルヴァンの答えは直接的な表現は無くとも、自身にテラルス侵略の意図は無かったかの様なことを示唆するものだった。


「・・・それでは答えになっていません。貴方自身にテラルスへの侵略の意思はあったのですか? 証人となった隊員が証言した、殺戮と虐殺をショー、エンターテインメントと例え、テラルス人をサルと罵った貴方の発言内容からは、到底それが無かったとは思えませんが?」


「・・・黙秘します」


 中岡のまくし立てる様な追及に、ルヴァンはそれを躱す返答を思いつくことが出来なかった。その後、弁護士からの反対尋問を経て全ての被告人質問が終了したのである。


〜〜〜〜〜


9月11日 第9回公判


 そして開廷からおよそ2ヶ月半が経過していた国際裁判は、被告人質問を終えて遂に「論告・求刑」という段階に達していた。検察団の代表である中岡が立ち上がり、法壇に座す判事団に向かって求刑を告げる。論告とは検察官が事実や法律の適応について述べることを言い、求刑とはその際に具体的な刑罰の適応について述べることを言う。


「この世界に対する侵略の意思、及びこの惑星に住まう全ての人命を殲滅させる意思を明確に示し、民間人や軍人の区別無く3000万の人民を殺害した事実、さらに円盤を稼働させる為、およそ20万人をこえる大ソウ帝国人を非人道的な手法で円盤内に収容し、彼らを“生ける燃料”として扱い、その尊い人命を弄んだ悪辣非道さを考慮し、“人道に対する犯罪”及び“集団殺害犯罪”、“戦争犯罪”の諸事項によって、11名の被告人全員に有罪判決を下すことが適当であると考えます。

主導的役割を担ったルヴァン=プロムシューノ、ファウスト=アレストニー、ルガール=メジル、ヒス=オルストラ、キルル=メルトウォーカーの5名については死刑を、末端構成員であるボルカ=ザンダ、ザリア=ヘルマ、ダークィ=リージャ、バン=プレーデッド、シャドー=プルート、インカスノー=ヘヴィーメルダーの6名については終身禁錮刑を求刑します」


 検察側が求刑したのはほとんどのメディアが予想した通りのものであった。国際刑事裁判所ローマ規程には有れども、日本の刑法には規程されていない“終身刑”の単語が発せられたことで、傍聴席に集っていた報道陣が少しざわつく。1947年以来、この刑罰を課せられた者は日本の歴史上に存在しない。

 検察の求刑が終わった後に、弁護側が立ち上がって弁論を始める。弁論とは検察側の視点から述べられる論告に対して反対意見を述べたり、また情状酌量の余地について裁判官にアピールするためのものだ。弁護団の代表である篠原が立ち上がって裁判長の方を向いた。


「ルヴァン氏はあくまで・・・担ぎ上げられただけの象徴的存在であり、今戦いを計画、立案、そして主導したのは、その下に付いていたミャウダー氏、ルガール氏、ヒス氏、キルル氏の4人であります。それは本人たちの証言からも明らかであり、戦争行為への責任は彼らにあります。また特戦群の隊員に対する傷害致死についても、状況からは正当防衛を適応するのが適当と考察され、これらから総評するに彼女は無罪とするのが妥当だと思われます。また、彼女以下四幹部と呼ばれる4人についても、西方世界には日本政府が発表した国際人道法の概念が伝達されておらず、それで彼らを裁き、死刑を言い渡すことには疑問符が生じます。他の6名についても同様です。特に彼らは上の命令に従わざるを得なかった末端構成員に過ぎず、例えテラルス侵略の意思は無くとも、それに反抗することは出来ませんでした。事実、彼らはテラルスへの侵略へあまり積極的な姿勢を有していませんでした・・・」


 弁論を終えた篠原は席に着く。双方の言い分を聞いた笹淵裁判長は被告人へ視線を向ける。


「・・・以上で審理は終了とします。被告人は最後に言いたいことはありますか? 何かあれば右からどうぞ」


 刑事裁判の終わりは被告人の最終陳述で締めくくられる。これは刑事裁判の中で、初めて被告人に自発的な発言が認められるものである。ルヴァンが最初に立ち上がって口を開く。


「我々の愚行によって失われた3000万の尊い人命に対して、深い哀悼の意を示します」


 ルヴァンは淡々とした様子でそう口にすると再び席に着いた。その後、他の者たちが順番に立ち上がって最終陳述を述べていく。


「1500年前に潰えた筈の無謀な野望を追いかけ、多くの人命を蹂躙してしまったことを深く反省しています」

「我々は間違ったことはしていない。この惑星のサル共が高貴なエルメランドの配下に下るのは自然の摂理であり、それを体現しようとしただけだ」

「私はミャウダーに言われるがままにしていただけです。全ての責任は彼にあります」

「特に何も言うことはありません」

「私は・・・」


 彼女と同じく己の行為を反省する言葉を見せる者、罪を認めずに自らの行為を正しいと断じた者、責任を別の者に押しつけて情状酌量を狙う者、特に何も言わない者、11名が最後に告げた言葉は様々であった。予め指示していたことを言わない者が思いの外多く、弁護団は苦々しい表情を浮かべる。

 斯くしてこの日、全ての証拠調べと証人喚問、論告・求刑、弁論、そして被告人による最終陳述を経て国際法廷は結審し、事件内容の巨大さに反して2ヶ月半という急スピードで行われた審議は終了した。検察団と弁護団、そして11名の被告人たちは、およそ1ヶ月に訪れる予定の判決期日を待つことになったのである。


〜〜〜〜〜


9月12日 東京都千代田区 首相官邸


 ルヴァンが最後に述べた言葉は、敵の首領が「深い哀悼の意」を示したとしてメディアに大きく取り上げられた。だが各社共に、ルヴァンが告げた謝罪の言葉に対しては、傲慢な侵略者が情状酌量を狙った誠意の無いものと論ずる記事がほとんどで、世論の反応も冷淡なものであった。


「これで一先ずは終わりか・・・」


「ええ、思えば『9月11日事件』から始まっておよそ1年・・・長い戦いでしたね」


 首相官邸の総理執務室にて、首相の伊那波と法務大臣の陽原武市が話をしている。テーブルの上には裁判の様子を伝える新聞記事が置かれていた。


「しかし、時々思うんだ。もし・・・皇民党が主張していた様に、魔法研究にちゃんと力を入れていたら、飛行戦艦の捜索を断念せず、根気強く続けていたら、今回の悲劇をもっと違った形にすることが出来たんじゃないかと・・・」


 伊那波は今回の一件について後悔の念に囚われていた。特に、飛行戦艦「扶桑」の存在については、2031年に公安警察によって既に判明していたのにも関わらず(第4部)、信憑性も定かでは無い“未来の遺物”を探す為に予算や人員を割くことを渋った内閣府の判断で、捜索事業が早々に打ち切られたという経緯があったのだ。

 もし、あのおぞましい“都市円盤”が出現する前に「扶桑」を見つけ出し、その力を自分たちのものに出来ていたら・・・3000万の犠牲を出したのは日本政府の怠慢の所為ではないか、そう考えると堪らない気持ちになるのだ。


「『もし』とか『たら』とか『れば』とか・・・歴史に対して、それほど無意味な言葉はありませんよ。そんな思いには囚われず、この先をどう生きていくかが大切です」


 後悔の念に駆られる首相に対して、法務大臣の陽原はこの先進むべき道を諭す。




同時刻 東京都千代田区 ホテルニューオータニ東京


 その頃、東京のホテル御三家の一角に当たる“ホテルニューオータニ東京”のスイートルームから、ワイングラスを片手に夜景を見下ろす人物が居た。


「何度見ても美しい・・・。この夜景を持って帰ることが出来たらな・・・」


 遠き西方世界から証人として召喚されたエドワスタ=テュダーノヴは、眼下に広がる東京首都圏の目映いばかりの夜景にため息をついた。彼の故郷であるスレフェン連合王国の首都ローディムの姿も、この景色に比べればただの片田舎に思えてしまう。


「父王は・・・この様な国を敵に回したのか。つくづく我々は愚かだったな」


 一度東京を訪れたテラルスの人々は、この都市の夜景を宝石の輝きに例え、東京は“宝石箱の都”、または“ダイヤモンドの都”という異名で知られる様になっていた。


「・・・一時はどうなるかと思ったが」


 およそ3ヶ月前、日本政府によって証人として召喚され、極東の辺境へ向かう羽目になった時には、まるで死にに行くかの様な心地がしていた。どんな魔境が待っているのだろうか、もしかしたら日本の民の前で見せしめにされるかも知れないという考えが、彼の脳裏を支配していた。だが敗戦国の代表である自身に拒否権は無い。彼は意を決して日本へ向かうことにした。しかし、日本は彼の想像を大きく覆す超大国であったのだ。

 億を超える人口、国中を編み目の様に繋ぐ交通機関、そして地方都市でさえも他の列強の首都を大きく越える繁栄を遂げている。そして首都“東京”は正に次元が違う大都市だった。見渡す限り広がる建造物と天を貫くほどに高い建物が林立する光景に、彼らは思わず息を飲んだのだ。果たしてこれが人のなせる業なのかと。


「日本との交易が本格的に始まれば、スレフェンの臨時政府も考えを改めるだろう」


 エドワスタはワインを飲み干すと、カーテンを閉めてベッドへと向かう。


・・・


千葉県船橋市 とあるマンション


 「名を明かせない10人の英雄」・・・「ラスカント」撃墜に最大の貢献を果たした10名の特殊作戦群の隊員のことを、メディアはそう呼んだ。ナガハチロウの存在が明かされたのは、裁判が始まった後のことである。世界の西端に位置する鎖国国家の正体が、エルメランド人の末裔が作った国であることが明かされた時には、世界に大きな衝撃が走り、これによって「イナ王国」は最早、辺境の小国として軽視できる存在ではなくなってしまった。


(ナガハチロウは・・・何時国に帰るんだろうか)


 習志野駐屯地から自宅へ帰っていた島崎一尉は、「イナ王国」について綴られた夕刊の記事を眺めながら、遠き異国からやって来た戦友のことを思っていた。アサカベ・ナガハチロウ・ヨシフミ、本来の“ミャウダー”である彼は、まだ日本国内に滞在している。


「・・・あ、その記事、私も読んだわ。宇宙人の船を落とす為に、その宇宙人のかつての仲間が自衛隊の隊員に協力したって。ちょっとびっくりしたわね」


「・・・ああ」


 妻である凌子の言葉に対して、島崎は適当な相づちを打つ。彼自身もナガハチロウがかつて敵の仲間だったことを知った時には驚いていた。


「でも・・・不安だわ。その『イナ王国』って国も、いつか“なんとか帝国”って人達と同じことをしでかすんじゃないかって」


 凌子が抱いていた不安は多くの日本国民が、そして世界が感じていた不安である。だが、ナガハチロウと共に戦った島崎は、それが杞憂に過ぎないことを十二分に分かっていた。


「そんなことは無い・・・絶対ね」


「・・・?」


 島崎はそう言うと、読んでいた夕刊を閉じて風呂へと向かう。

 斯くして人々は、世界を混乱と悲劇に陥れた亡霊たちへの裁きが下る日を、思い思いの感情で待っていたのである。


〜〜〜〜〜


10月21日 判決期日 最高裁判所 大法廷


 裁判の開始からおよそ4ヶ月後、ついに世界が待ちわびた日が訪れる。数多の報道陣が傍聴席に詰めかけており、弁護団や検察団、そして11名の被告人たちが、判事団の入廷を待っている。そして午前11時、法壇の後ろにある扉から世界10カ国より集った判事たちが大法廷へ現れた。彼らは各々の席に着き、裁判長を勤める笹淵は法廷内をじっと見渡す。


「では・・・判決を言い渡します」


 笹淵はそう言うと、判決文が書かれた書類を広げて一呼吸置き、再び口を開く。その場に居た全ての聴衆が、彼の言葉に耳を傾ける。


「被告人らが起こした事件は悪逆非道極まりなく、その非人道的な破壊行為によって軍民問わず全世界でおよそ3000万人の犠牲者を出した。これは国際刑事裁判所ローマ規程に違反する重大な犯罪行為であり、テラルス人を絶滅、破滅させる明確な意図を以て世界の諸都市を無差別に攻撃した事実は集団殺害犯罪、人道に対する犯罪、そして戦争犯罪に定められる数多の事項に違反する行いであり、到底情状酌量の余地を残すものではない」


 笹淵が読み上げる文章は、弁護側の主張を棄却するものであった。端からやる気の無かった者も多かった国選弁護士たちの中は、苦笑いを浮かべるだけで特に気に留めていない様子の者も居たが、弁護団の代表を務めた篠原は、悔しそうな表情で項垂れていた。


「主文・・・被告人11名のうち、ボルカ=ザンダ、ザリア=ヘルマ、ダークィ=リージャ、バン=プレーデッド、シャドー=プルート、インカスノー=ヘヴィーメルダーの6名を無期禁錮刑、ファウスト=アレストニー、ルガール=メジル、ヒス=オルストラ、キルル=メルトウォーカーの4名を死刑とする。尚、以上10名の一部の者については、刑罰の確実な執行を条件に被害を受けた各国へ引き渡すこととする」


「・・・!!」


 四幹部に対する死刑、そして末端構成員の6名に対する終身刑が宣告される。最後まで許しを乞うていた6名は一斉に顔を青ざめた。


「尚、ルヴァン=プロムシューノについては4人の幹部と並んで主導的立場に居た証拠が乏しいことは認められる為、死刑の求刑を棄却する。だが、世界に対する宣戦布告を自ら行うなど協力姿勢が見受けられること、主導はせずとも戦いそのものを望んでいたと思われること、また戦闘を終結させる権威を有していたにも関わらず、それを行わなかったことから、彼女がテラルスへの侵略に賛同していたことは明白だと思われる。よって被告人を懲役30年の実刑とする」


「懲役刑・・・!?」

「死刑は棄却だって!?」


 敵の王とされた人物に死刑判決が下されなかったことで、傍聴席は大きなざわめきを見せる。その後、法廷は閉廷となり、判事たちは扉の向こうへ戻って行った。

 判事たちが去った後、11名の被告人たちも刑務官に連れられて大法廷を後にする。その時、ルヴァンは隣を歩くミャウダーに小声で話しかけた。


「お終いね・・・何もかも」


「ええ、シャルハイド帝国は終わった」


 これが2人が交わした最後の会話となった。斯くして「密伝衆」・・・即ちエルメランドの亡霊たちのうち、幹部4名は死刑が決まり、彼らの王として祀られていたルヴァンについては、残虐行為を主導していたことを示す状況証拠が乏しいと判断された為に死刑の求刑は棄却されたものの、戦争に加担していた事実は歪められないこと、また特戦群隊員に対する傷害致死を加味して懲役30年の実刑判決、他6名の末端構成員については、実行犯として終身禁錮刑が言い渡されたのだった。

量刑については兎角前例が無いので、私自身の目分量です。

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