初対決 エルメランドVS日本国
2月1日 日本国 首都東京 首相官邸
クロスネルヤード帝国の首都であるリチアンドブルク、そして日本にとってジュペリア大陸における最大の拠点であったミケート・ティリスが崩壊したことは、日本国内でも大々的に報道され、テラルスの主要都市を焦土としながら東漸を続ける“都市円盤”は、日本国民にとっても恐怖の対象となっていた。テレビでは連日、円盤と自衛隊の交戦を想定したシュミレーションが展開され、国民たちはそれらに釘付けになっている。人々は来るべき決戦の日に怯え、眠れぬ夜を過ごしていた。
内閣は友好国であるクロスネルヤード帝国が大打撃を被ったことを受け、既に数回目となる緊急事態大臣会合を開催していた。議長である伊那波孝徳首相や宮島官房長官の他、防衛大臣の倉場や外務大臣の来栖、統合幕僚長の長谷川海将/大将などが集まり、ゆっくりと日本列島への接近を続ける“都市円盤”について話しあう。
「リチアンドブルク、ミケート・ティリスに続いて、エフェロイ共和国の首都であるリンガルが壊滅しました。都市円盤は北上を続けており、次なる目標は『ロトム亜大陸』かと思われます」
倉場は都市円盤の動向について説明する。天井からぶら下がっているスクリーンには、円盤の軌跡を描いたテラルスの世界地図が映し出されていた。
「クロスネルヤード帝室を含む彼の国の避難民団は、2日後に日本本土へ到着する予定です。他、アルティーア帝国のサヴィーア1世陛下、セーレン王国のヘレナス2世陛下より、避難活動への協力要請が届いています」
外務大臣の来栖は、まだ円盤の被害を受けていない友好国から、避難民の受け入れを求められていることを伝える。
「先日中央洋に派遣した、第3護衛隊群はどうなっている?」
首相の伊那波は都市円盤を迎え撃つ為に派遣した艦隊の動向を尋ねた。
「第3護衛隊群と空母『あかぎ』を主体とする『都市円盤迎撃艦隊』は、ウィレニア大陸の北方を抜けて中央洋へ向かっていました。しかし、都市円盤の目的地がレーバメノ連邦であることが判明した為、進路を変更して同地へ向かっています。
また、スレフェン連合王国の首都ローディムを攻撃する為にサグロア基地へ派遣されていた『西方世界遊撃艦隊』は、円盤迎撃戦に合流する為に中央洋へ向かっていますが、未だジュペリア大陸の北方を航行しており、間に合いそうにはありません」
防衛省は都市円盤を迎え撃つ為、第3護衛隊群を主体とした艦隊を西へ派遣していた。同様に、元はローディムを攻撃する為に西方世界へ派遣していた、第1・第4護衛隊群を主体とする別の艦隊についても、急いで東へ引き返させていた。
「・・・都市円盤を操る者たちから、何らかの声明はあるのか?」
「いえ・・・今のところは何もコンタクトがありません。彼らが何者なのか、テラルスで破壊の限りを尽くす行動原理が何なのかも謎のままです」
現時点において、日本政府が超巨大都市型円盤「ラスカント」について知っていることは、ローディムの地下から現れた規格外の破壊兵器であるということだけである。彼らは未だ、それを操る者が悪しき異星人の末裔であることを知らない。
「あの円盤はテラルスそのものを滅ぼそうとしている。事態は最早・・・国の問題ではなく惑星規模の危機だ! 日本に到達する前に、あの円盤を何としても撃ち落とせ!」
「はい!」
首相の伊那波は自分たちが最後の砦であることを自覚していた。斯くして、自衛隊とラスカントの激突は決定的なものとなった。
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2月3日・早朝 ロトム亜大陸 レーバメノ連邦沖合 旗艦「あかぎ」
それから2日後、日本本土及び屋和半島東部のアメリカ合衆国から派遣された「都市円盤迎撃艦隊」は、ロトム亜大陸のレーバメノ連邦の沖合に停泊していた。
その中で第3護衛隊に属するヘリコプター搭載型護衛艦の「ひゅうが」は、レーバメノ連邦に住んでいた日本人住民を乗せて日本へとんぼ返りしており、此処には「ひゅうが」を除く第3護衛隊群と空母「あかぎ」、そしてアメリカ海軍より派遣された駆逐艦などが展開していた。
本来は中央洋の洋上へ向かう予定だったのだが、円盤の軌道がロトム亜大陸へ向かう方向に変化した為、この地で迎え撃つことになったのである。因みに、アラバンヌ帝国から急遽此方に向かっていた空母「あまぎ」と第1・第4護衛隊群からなる「西方世界遊撃艦隊」については、未だジュペリア大陸の北方を航行中であり、戦闘には間に合いそうに無かった。
そして今、旗艦「あかぎ」の艦内にある多目的区画にて、艦隊の幹部たちによる作戦会議が行われていた。進行役を務める「あかぎ」艦長の益田時影一等海佐/大佐が、現在の状況について説明を行う。
「スレフェンの首都ローディムの地下から現れた“都市円盤”は現在、崩壊したミケート・ティリス市から北東へ2500kmの海上を進み、真っ直ぐこの『レーバメノ連邦』へと向かっています。これまで破壊された都市の数は20を超え、恐らく彼らの次なる目標はこの国の首都であるサクトアでしょう」
彼は大型ディスプレイに映し出された衛星写真を指し示しながら説明を続ける。それにはジュペリア大陸の東側を北上する都市円盤が写っていた。
「飛行速度はおよそ27ノット、形状は円形で直径は14.48kmにもなる巨大な飛行物体です」
「ラスカント」の動向はJAXAによって常に監視されている。それはロトム亜大陸まであと1000kmというところまで近づいていた。
「50年くらい前のSF洋画で、こんなの見た様な気がするなあ」
「俺はどちらかというと、あのアニメの彗星型都市を思い出すね」
写真に収められた円盤の姿を見て、2人の男が思い思いの感想を述べる。「あかぎ」に搭載される第41航空群第1飛行隊隊長の加藤真三二等海佐/中佐と、同じく第2飛行隊隊長を勤める山下明雄二等海佐/中佐である。
「そう言えば・・・ロトム亜大陸と言えば、あの“妙なレポート”の舞台じゃないか?」
加藤二佐は8年前に少しだけ週刊誌を騒がせた“ある事件”を思い出していた。
「ああ・・・8年前、資源調査の為に極寒地域を訪れた日本人が、クレバスの中で神の使徒と名乗る女の“幻覚”を見たってやつか」
山下二佐は彼と同じことを考えていた。それは2027年5月にロトム亜大陸にて行われた金鉱山探査にて、クレバスに落下したにも関わらず奇跡の生還を遂げた“ある民間企業員”に纏わる話である。
当時、日本政府は大手非鉄金属メーカーの「三波マテリアル」の社員だった村田義直という男を「極北資源調査団」の団長に抜擢し、レーバメノ連邦との共同開発という名目の下、金鉱山の鉱脈を目指して、彼らをロトム亜大陸の極寒地域に派遣したことがあった。
結果としては金鉱山の発見に成功したのだが、その資源調査の過程において余りにも不可解な証言や体験談が多発した為、マスコミはこの資源調査が“呪われた”ものだと騒ぎ立て、資源開発を進めることを不安視する声さえ出た。特に、調査の途中で一時的に行方不明になった村田が書き記した“極北レポート”は、その内容の突飛さ故に“空想小説”扱いされ、外務省を除いてそれに目を向ける者は居なかったのである。
「その後・・・開発が本格化した時に地下が調査され、村田という男が落ちたというクレバスの奥底には実際に“大空洞”が発見されたらしいが、その内部の調査は到底困難ってことになったと聞く」
加藤二佐は語りを続ける。レーバメノ連邦に住まう日本人のほとんどは、その時に開発された金鉱山の採掘事業に従事する者とその家族たちであった。
「・・・行動開始は今から15時間後、第41航空群を先行して出撃させて空対空ミサイルによる攻撃を加え、海上からは海軍統合火器管制-対空によるスタンダードミサイル6の攻撃を加える。・・・以上だ」
「はっ!!」
艦隊司令を勤める上野彦栄海将補/少将が最後に口を開いた。会議の終了後、隊員たちは来るべき戦闘に備えてそれぞれの持ち場へと戻る。
・・・
<都市円盤迎撃艦隊>
司令 上野彦栄海将補/少将(第3護衛隊群司令)
副司令 十返章貞光一等海佐/大佐(第3護衛隊司令)
海上自衛隊/日本海軍
航空母艦「あかぎ」
護衛艦「あたご」「あしがら」「まきなみ」「すずなみ」「みょうこう」「ゆうだち」「ふゆづき」「むつ」
輸送艦「くにさき」
補給艦「たざわ」
アメリカ合衆国海軍・第7艦隊
ミサイル駆逐艦「マスティン」「マイケル・マーフィー」「レナ・H・サトクリフ・ハイビー」
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15時間後 レーバメノ連邦沖合 上空
戦闘開始の時間を迎え、甲板で待機していたF-35C戦闘機が発艦を開始する。蒸気カタパルトの力によって、33機のF-35Cは次々と大空へ飛び立って行った。加藤二佐は山下二佐と共に飛行隊を率いて、都市円盤が飛行する南方へと向かう。そして数十分後、それは彼らの視界に姿を現した。
「目標発見・・・!」
加藤二佐は目標を目視で確認したことを旗艦へ伝える。パイロットたちは唖然とした様子で「ラスカント」の姿を見ていた。
『何だこれは・・・』
第3飛行隊に属するパイロットの1人が正直な感想を漏らす。
「・・・戦闘準備! 第41航空群第1飛行隊、攻撃を開始する!」
加藤二佐は唖然とする部下たちに戦闘開始命令を下す。パイロットたちは酸素マスクを装着した。加藤二佐はミサイルの発射装置に手をかける。各機には中距離空対空ミサイルのアムラームと短距離空対空ミサイルのサイドワインダーが装備されていた。
「シェパード1・・・発射!」
『シェパード3・・・発射!』
『シェパード7・・・発射!』
符丁のコールと共に、中距離空対空ミサイルのアムラームが群れになって飛んで行く。横一列に並ぶそれらはマッハ4の飛行速度で「ラスカント」へと向かって行った。
ド ドン ドン ド ド ドン!!
だがそれらは都市円盤に到達する前に爆発してしまう。同時に円盤を覆う透明な膜が姿を現した。
「・・・バリア!?」
加藤二佐は驚愕の声を上げた。だが彼はすぐに気を取り直して部下たちに通信を入れる。
「シェパード2から6までは当機に着いて来い。至近距離よりサイドワインダーにて攻撃を行う!」
『了解!』
飛行隊長の命令に従い、5機のF−35Cが隊長機に附随して円盤へ急速に接近する。
・・・
都市円盤「ラスカント」 艦橋
急速接近するF−35Cの姿は「ラスカント」からも見えていた。艦橋にて戦闘の指揮を執るのは、ミャウダーと並んで密伝衆の四幹部を勤めていたルガールという男だ。
「フフフ・・・そんな軟弱な攻撃でこの箱船を覆う“魔法防壁”を突破出来るものか!」
この船の用途は“脱出用の移民船”なので、脱出時に敵対国の移民船や戦闘艦にはちあわせた場合に備えた、自衛用の“わずかな兵装”しか施されていない。だが、それでもテラルスを蹂躙するには十分過ぎる力を有していたのである。
「魔力光子連射砲、前方の砲門発射!」
ルガールの命令を受けて、密伝衆に属するシャルハイド帝国の末裔たちが計器を操作する。そして円盤の前方に設けられた、主砲とは別の“連射砲”がその砲門を開く。
「連射砲、発射開始!」
砲雷の操作員が連射砲の発射スイッチを押し込んだ。
・・・
レーバメノ連邦沖合 上空
6機のF−35Cは加藤二佐に率いられて「ラスカント」へ急速接近する。パイロットたちはサイドワインダーの発射態勢に入っていた。その時、円盤の縁にある小さな砲門が緑色に輝き出したのだ。
「・・・っ! 下降退避!」
『・・・え』
危機を察知した加藤二佐は各機に命令を下した。だが、パイロットたちはその命令にすぐに反応することが出来ない。さらにその直後、開かれた砲門から緑色の細かい光線が連続で発射された。
『うわっ!!』
加藤二佐が操る隊長機と他の2機は間一髪のところで光線を回避したが、残り3機のF−35Cはその光線を食らって炎上してしまう。
「くそっ!」
加藤二佐は撃墜された仲間の姿を見て憤慨する。他のパイロットたちも友軍機が撃墜されたことで、一気に警戒態勢に入っていた。加藤二佐が操る隊長機を含めた3機のF−35Cは、パルス光線を下降回避した後に円盤の下方に入り込む。
その時、彼らは円盤の下方から数多の黒い飛行物体が放出されていることに気付いた。それらの正体は「9月11日事件」で九十九里浜沖に襲来した小型円盤の群れだったのだ。
「シェパード1・・・発射!」
加藤二佐はそれらの内の1機に向かってサイドワインダーを発射した。だが予想通り、小型円盤を覆うバリアがサイドワインダーの爆発を防いでしまう。
「あれ1機1機だけでも相当厄介だぞ! それがあんな無数に!」
九十九里浜沖に襲来した小型円盤は21機であった。あの時は此方が2倍以上の戦力で対処した為に迎撃することに成功したが、目の前に現れた小型円盤の群れは軽く100機は超えていた。おまけに速度や機動力も以前のデータより明らかに上回っている。
『シェパード3・・・発射!』
『シェパード4・・・発射!』
他2名のパイロットも敵機に向かってサイドワインダーを発射した。だが先程と同様に小型円盤を覆うバリアによって防がれてしまう。
「・・・退避!」
分の悪さは一目瞭然であった。加藤二佐は戦闘空域からの退避を命令する。だが時すでに遅し、撤退する彼らは小型円盤に包囲されていた。
「うわあああ!!」
小型円盤の砲門から緑色のビームが放たれる。それらは容赦なく3機のF−35Cを撃ち落とした。下部格納庫から放出された小型円盤の大群は、残す27機の敵機を撃滅する為、一気に展開していく。
戦闘空域より100km離れた高空
戦場から離れたところに、早期警戒機のホークアイが飛行していた。機体の上部に位置する円盤状のレドームから、周辺空域の監視を行っている。
「報告します! 突如100機を超える飛行物体が出現しました!」
レーダーの監視を行っていたオペレーターが、戦場に起こった異常事態を報告する。「ラスカント」から放たれた小型円盤の大群が、ホークアイのレーダーに捉えられたのだ。30機ほどの友軍機はそれらの円盤と壮絶な空中戦に突入する。
「・・・3機、被撃墜!」
レーダーに映し出される友軍機の反応が1機また1機と消えていく。彼我戦力差は余りにも膨大であり、まともな空中戦闘が不可能であることは明らかであった。
・・・
旗艦「あかぎ」 戦闘指揮所
早期警戒機のホークアイが捉える情報は、戦場からおよそ200kmほど離れた場所に陣を構えていた旗艦「あかぎ」にもリアルタイムで届けられていた。
「残り12機です!」
交戦開始からおよそ1時間半後、33機のF−35Cは既にその3分の1ほどにまで減っていた。強固な魔法防壁と彼我戦力差の為に、敵の攻撃を受けない様に逃げ回るのがやっとだったのである。
「もう撤退させろ! 急げ!」
艦隊司令の上野海将補は、これ以上の戦闘は無駄な犠牲を増やすだけだと悟り、生存していたF−35Cに撤退命令を下した。ホークアイを介して司令の命令を受けた各機は、機首をレーバメノ連邦の方へ向けて全速で撤退を開始する。
「スタンダードERAM発射用意! 都市円盤に向かって攻撃開始!」
上野海将補は艦隊からの攻撃を指示する。その命令は各イージス艦に伝達されて行った。
ミサイル護衛艦「あたご」 戦闘指揮所
共同交戦能力に対応しているイージス艦である「レナ・H・サトクリフ・ハイビー」「マイケル・マーフィー」「むつ」、そして「あたご」と「あしがら」の5隻に、リモートセンサーとして高空を飛行しているホークアイからの情報がリアルタイムで共有される。
「対空戦闘用意!」
「ミサイル垂直発射装置準備!」
都市円盤の位置情報を受信した各艦は、スタンダードERAMを発射する為に、甲板上のミサイル垂直発射装置を開いて行く。円盤そのものは未だ水平線の向こう側に居る為に、艦固有のSPYレーダーでは見えない。
因みに「あたご型ミサイル護衛艦」については2018年にベースライン9への改修を受けた後、「たかお型ミサイル護衛艦」の就役後に海軍統合火器管制-対空へ対応する改修を受けていた。
「スタンダードERAM、発射!」
「あたご」のミサイル・セルからスタンダードERAMが発射される。他の4隻からも次々と発射されていた。各艦から発射されたそれらはホークアイからの中間誘導を受けて、破壊神たる「ラスカント」へと向かって行った。
・・・
レーバメノ連邦沖合 上空
旗艦からの命令を受けて撤退するF−35Cを、3機の小型円盤が追撃している。既にミサイルは全弾を撃ち尽くしており、最早戦う術は持っていない。そんなF−35Cに対しても、小型円盤の群れは攻撃の手を休めることは無く、それらの追撃によって第41航空群は残り2機まで減っていたのである。
「くそっ! 振り切れない!」
第2飛行隊を率いていた山下二佐は、音速を超えて全力で逃走する。だが、小型円盤は彼らの背後にぴったり追尾していた。
艦隊から発射されたスタンダードERAMの群れは、必死の鬼ごっこを続ける彼らのさらに上空をすれ違う様に飛行し、マッハ4の超高速で都市円盤へと向かう。そして目標の付近に迫ったところでアクティブ・レーダー・ホーミングに切り替わり、「ラスカント」の上部構造へと突っ込んで行った。
・・・
「ラスカント」 玉座の間
女王のルヴァンとミャウダーの2人は、何時もの様に空中に投影されたスクリーンで戦闘の様子を眺めていた。
「おお、あれが『ニホン国』か!」
ルヴァンは今までの敵とは明らかに違う勢力の出現に興奮していた。今まで抵抗の意思を見せて来た敵は、艦載機を放出してからものの数分で全滅していた竜騎兵ばかりであったが、今回現れた敵の航空戦力は、小型円盤の大群相手に1時間以上粘り、未だ全滅していない。
「あれがニホン国の“戦闘機”です。名称は“エフ35”と言うそうです」
ミャウダーは敵航空機について説明する。しかし、当のルヴァンは彼の話を聞いているのか否か、艦載機が送る映像に釘付けになっていた。それは母艦へ戻ろうとする山下二佐を追撃していた小型円盤が捉えていた映像である。
「そうだそうだ・・・逃げろ逃げろ! キャハハ!」
ルヴァンは自軍の艦載機ではなく、必死になって逃走を続けるF−35Cに応援の声を向けていた。彼女はまるで未知のものに触れた子供の様な、純真無垢な笑みを浮かべている。
ド ドン ドン ド ド ドン!
「!?」
その時、突如として上方から連続した爆発音が聞こえて来た。同時にその衝撃が「ラスカント」本体にも伝わり、強固な魔法防壁に覆われている筈の巨大円盤がわずかに揺れたのである。
「どうした!? これは何事だ!?」
ミャウダーは声を荒げながら、信念貝を介して艦橋に状況を尋ねる。
『敵艦隊からの攻撃です! 恐らくは例の“空飛ぶ槍”の中でも大型のものが、円盤の上部に襲来しました!』
艦橋の通信員が答える。それはイージス艦から発射されたスタンダードERAMによるものだった。
「くそ・・・お遊びは此処までだ。主砲の長距離射撃で敵艦隊を滅せよ!」
『了解!』
ミャウダーは主砲を発射する様に命じる。その後、円盤の側面に位置する“主砲”が、都市円盤迎撃艦隊が展開する北の方角へ向いた。“動力室”から伝達される膨大な魔力が各主砲へ収束されていく。そしてその直後、奇妙な砲撃音と共に艦隊へ向かって魔力ビーム砲が発射されたのだった。
次回、ついに“あれ”が登場する予定です




