プロローグ 6
「それが私が笑ってなかった理由。よし、この話はこれで終わり!」
「あんなに話すの躊躇った割には呆気なく終わったな」
「嫌な話ほど早く終わらせたいということわざあるでしょ?それだよそれ」
「そんなことわざ聞いたことがねぇよ」
もしかしたら俺が知らないだけであるかもしれないので「そんなことわざねぇよ」ではなく「そんなことわざ聞いたことがねぇよ」にしておいたのは内緒の話。
「......話す話題が無くなっちゃったな~。なにか話題ある?」
俺はフルフルと首を横に振る。
「うーん。なにか良い話題......っとそうだ!」
考えるポーズをした三秒後、焔木はすぐさま姿勢を正した。
因みに余談だが焔木が考えるポーズをしている間、俺の視線はその組んだ腕に乗しかかる胸の方向に向いていた。
いや、男なら分かるよね?この気持ち。
「あなた、さっき初めて私と会ったとき転生したいって言っていってたよね?」
「やめてくれ恥ずかしい」
俺は焔木の胸から慌てて視線を外しながら答えた。
あんな中二真っ盛りみたいな台詞を掘り返されるのは流石に恥ずかしい。
「ん?何が?転生したいってことが?別に恥ずかしがるようなことでも無いと思うんだけどな。したくないと思っている人の方が日本では少ないでしょ。というか、私は転生したくないとホントに思っている人はいないと思うのだけどね」
「そういうものなのか?」
「そういうものでしょ。私があなたの立場だったとしても転生させてくださいって言ったと思うよ?この世界つまらないしね」
ころころと笑う焔木。
会う前はクールの人なんだろうと思っていたが、こう実際に合ってみると小動物みたいな人だなと思う。
あれだな。やっぱ、人を印象で決めつけてはダメなんだな。
今時中学生でも知っていることを再確認した俺であった。
「まぁ、あなたの場合は異世界に転生とかは考えてなさそうだけどね」
「あぁ。俺は普通の生活が送れれば......今よりマシの生活が送れればそれでいいんだが」
「やっぱりな!」
何が嬉しいのか、焔木は感が当たったと、パチンと指を鳴らしながら喜ぶ。そして彼女は言った。
「ここであなたに朗報です。あなた、人生をやり直してみませんか?」