プロローグ 13
風が気持ちいい。
いや、全力で走っているのが気持ちいいのか?
そういえば近頃走っていなかったもんな。
最後に走ったのはいつだっけ。
高校一年の頃だったっけ。
まぁいいか、そんなことは。
今は何も考えずただただ走ろう。
◇
「...ぜえ...ぜえ...ぜえ...」
俺は宝くじ売り場の壁にもたれながら息を整える。
バカか俺は。
高校生ならまだしも小学生にすらなってない体で全力で走って体力が持つわけないのに。しかも裸足だぞ!?おかげで途中何度タクシーを呼ぼうと思ったか!焔木の家のコンピュータールームで念のため宝くじ売り場調べておいてホントに良かったわ!調べてなかったら今もどこかで宝くじ売り場を探して走り━━━走るのは無理そうだから、おそらく歩き回っていることだろう。
てか、マジでキツイ。
......吐きそう。
家まで宝くじ売り場までの距離は約四キロほどだが流石にこの体では全てを完走することは不可能だった。まぁ、裸足だということも考慮していれば簡単に分かることだったが。帰りも裸足でこの距離を......と思うと背筋がゾッとする。
よく見ると足の裏は所々から血が出ていて痛そうになってた。実際痛い。マジで痛い。
こりゃ、帰りもキツイだろうな。
思わず泣き言を言いそうになるが後先考えず裸足で駆け出したのは俺なので堪える。
やるべきことはさっさとやって早く帰ろう。
俺は、そう決意して宝くじ売り場の機械を操作した。
確か当選番号は......。
記憶を辿る。えっと、なになに?
━━━と、その瞬間膝に衝撃が走り俺は地面に崩れ落ちた。
「こんにちわっ!」
何が起こったのか理解することが出来ない俺にやけに高い声がかけられる。
振り返って見るとそこには黒に緑を混ぜたような色の髪を肩まで伸ばした女の子がいた。年は同じくらいだろう。この娘をみて感想を言えと言われたら俺は間違いなくこう答えるだろう。『幼女の中の幼女』と。まぁ、俺と同い年くらいの女の子は全員幼女に分類されると思うのだが、この子は何と言うか次元が違う幼女だった。うまく説明できないのがもどかしい。
って、あぁ?
よく見れば女の子もとい幼女の膝がくの字に曲がっている。確証とまでは言えないが、多分俺は膝カックンをされたのだろう。
「...何の用だ?」
見知らぬ相手からいきなり膝カックン(仮)をされて笑って許すほど俺は人間がなってない。例えそれが幼女であっても。普段の声よりかなりトーンを落として威圧するように俺は言った。といっても声も子供の時に戻っているため全然威圧できるようなものではなかったが。
「ようなんてないようっ!あるわけないよっ!はじめてあったひとにようがあったらこわいってっ!」
そう言って何が面白いのか幼女はコロコロと笑った。
「じゃあ俺にちょっかい出すんじゃねぇよ」
俺は吐き捨てるようにそう言い当選番号を思い出そうと記憶を辿「えいっ!(膝カックン)」......。
「てめぇ!」
「おこっちゃやーよってねっ!」
「ちょっかいかけんなって言っただろ!」
「あれぇ?よくみればこれっ!って!たからくじじゃないかっ!」
ダメだ。話通じねぇ。焔木の時もそうだったが、何だ?最近の女子(?)は話が通じないのか?別の種族なのか?
「すごいねぇっ!でで!これなんけたあるの?」
「......七桁だ」
俺はため息をつきながら答える。
「5478525かなっ!」
「は?......ッ!?」
まさか......こいつもなのか!?
今、幼女が答えた数字。それはまさしく俺が未来で覚えてきた宝くじの当選番号と全く同じものだった。
......こいつも、未来から来たのか!?
以前の俺ならありえない話と笑い飛ばしていただろうが、今の俺には笑い飛ばすことは出来ない。理由は単純。俺も未来から来たからだ。
「あれれっ?あんまりおどろいてないねっ!?もしかしてしってたのかなっ!」
なお今も幼女は何が面白いのかコロコロと笑っている。
「お前も、俺と同じなのか?」
「たぶんそーだよっ!」
「!?」
こんな簡単にバラすとは思っていなかったが、やはりこいつも未来から来たらしい。
沈黙が流れる。
「じゃっ!わたしそろそろかえるねっ!ばーいっ!」
長く続くと思われていた沈黙は一瞬で破れ幼女はスキップながらに道を歩いていった。
「何だったんだ、アイツ」
俺は宝くじの番号が分かっていながらも買わなかった謎の幼女に戦慄を覚えつつ、素直に幼女に教えられた(俺も分かっていたが)宝くじを買った。
その頃幼女と呼ばれている少女はウキウキながらに家に帰っていた。
「ただいまっ!」
「あら?どうしたのですか、お嬢様。心なしか嬉しそうに見えますが」
「うんっ!とってもっ!とってもっ!うれしいんだよっ!はじめてっ!わたしとおなじくらいのっ!うんをもってるひとにあえたのっ!」
「お嬢様と同じくらいの運ですか!?それはホントですか!?」
「ほんともほんとだよっ!あのこもいってたもんっ!おれとおなじなのかってっ!だからたぶんあのこもわたしとおなじうんをもってるんだよっ!」
そう言って幼女はやはり嬉しそうにコロコロと笑った。




