出会い
━━4月頭。
期待に胸を膨らませながら、わたしは大学への道を歩いていた。
初めての大学。そう、今日は入学式である。
地元の大学ではなく、県外の大学へ、わたしは通うことにした。
一人暮らしである。
緊張のためか低血圧のわたしでも朝は早くに目が覚め、入学式開始の時刻よりも1時間早く大学に向かっている。
家にいてもすることがないので、大学を見に行こうと思ったのだ。
大学の手前の信号待ち。そこでわたしはある人物と出会った。
というか、ぶつかった。
「いったーい、もう、遅刻しそうで急いでるってのに、なんでこんなとこで突っ立ってるのよー!」
ぶつかってきたのは向こうだ。信号待ちしているわたしに横から体当たりしてきた彼女は、立ち上がりながらわたしに文句を言っている。
信号待ちしていて、「なんで突っ立ってるんだ」なんで言われること、普通ないよね。
「なんでもなにも、その人はただ信号待ちしてただけだろ? お前が勝手にぶつかって行ったんじゃねーか。
わりーな、こいつ、ちょっとわがままなとこがあってよ。悪意はねーんだ。許してやってくれないか?」
そう言って、彼女のやってきた方向から歩いてきた男性は、彼女の頭に手を置く。
随分顔形の整った2人組。周りの人たちもみんな彼らを凝視していく。2人はそんな環境に慣れているのか、全く周りの目を機にすることなく振舞っている。
そして、信号が変わるや否や女の子の方は駆け出して信号を渡り、男の子の方はわたしに向かって微笑みながら一礼した後信号を渡って行った。
すごく綺麗な2人。あんなに綺麗なんだから、きっとあの2人は彼氏彼女なんだ、うん、間違いない。誰もが憧れるお似合いのカップルなんだ。
いや待って、なにこの状況!?ていうかあの2人のせいで信号渡りそびれたし!
そして仕方なく二人の行く先を見守っていると、二人は目の前の大学の中へと入って行った。
え? なに? うちの大学!?
あんなお似合いのカップルが、うちの大学の人だなんて…。大学ってほんと、いろんな人達がいるんだな〜。
そんなことを考えながら、わたしは次の信号を渡って大学へと向かった。