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タイトル一文字。 同音異字から連想する物語、あいうえお順に書いてみた。

「ち」 ‐血・恥・治‐

作者: 牧田沙有狸

た行

恥ずかしいことを突如思い出したとき、その場に生きていることが歯がゆくなる。

なんであんなことになったのかという過去への後悔と、何で急に思い出したのよという現在の苛立ち。

表面的にも共有できる悲しい感情の方があとあとの処理は楽だし、今が幸せなら笑い飛ばせる。 

恥ずかしい思い出は他人に話したら、微笑ましい出来事だろう。

他人に話せるぐらい捨て身になっていれば、その時点で恥ずかしいことではなく人を喜ばせるエッセンスとなってプラスに働く。人に話すのもはばかれる、地球規模の悩みを抱えたかのように一人で夜中突然布団の中でもだえ苦しむ「恥ずかしいこと」への対処法は「忘れる」ことだけだ。 

だけど、自分が忘れていても「アノ人が覚えているかもしれない。いつ話題にされるか分からん」という仮定法が根底にあり、ビクビクしながら自己弁護が始る。


小学校の授業中、なんの前触れもなく鼻血をだして授業を止めたこと。 

だって、あれはさ、あたしの席ものすごく陽が当たっててのぼせちゃたのよ。

別にエロい想像とかしてたわけじゃないし。ってか女子がそんなことで鼻血でるのか。

別に鼻ほじってたわけでもないんだけど、それに対する証人がいわるわけでもないし。

  

修学旅行でシーツ汚したことが好きな男子にまで知られてしまったこと。

あれは、しょうがないよ。ってか、思春期の乙女にとっては恥と言うよりショック。

でも、悲しいよりやっぱ恥ずかしい。もう、なんで、なんで。ああ。

夜用のガード固いやつにしておけば!とか自分なりの対処法が全くなくもないので、

ある意味救われない。本当に後悔後悔。もう一度前の晩に戻りたい。


キスしたら歯茎から出血してて、拒否されたこと。

いろんな意味で言い訳できないから辛い。

結局、食生活とか酷かったから口内炎とかできまくってたわけだし。

なんか、女捨ててブサイクなのにチューしてって言ってた自分、殴り飛ばしたい。

歯に海苔よりも痛い。相手があたしの友達にネタとして話したことを間接的に知った。

一体どこまで伝わってるんだ。


緊張のあまり駅で派手に転んで、膝から出血しながら面接を受けたこと。

面接官の視線が何かを聞きたそうにしていた。

それが判断基準じゃないけど、不採用だったし。

芸人オーディションや、テレビドラマのシンデレラストーリーじゃあるまいし、

それが印象深くて採用なんてことにゃーならんのだ。

ただただ、注意力のない人と思われ、影で笑われていただろう。

転んだ時もスゴイかっこだったからパンツ見せちゃっただろう。

 

あれ?

なんだか、血にまつわることばっかり。

あたしの中で血は恥なのかな。どっちも「ち」


そんな発見にあたしは笑った。

そして、あたしは駅前の献血ルームに入った。

涙の代わりに血を出そうか。

突然鼻血をだして、シーツを汚し、歯茎や膝から出血。

そんな思い出たちと同レベルにして、夜中に思い出してもだえ苦しむさ。

この別れを。

無駄に慰められても、自分の過去を汚されるようで、誰とも話したくない気分だから。

相手を傷つけなきゃ自分が救われないような言い方をしてしまいそうだから。

あいつに夢中になってた自分を恥じて、そして時々思い出して、

そんな自分がいたから、今があると顔を真っ赤にしてもだえ苦しもう。 

それも、意外と幸せかもしれない。

共有できない分、言い訳は自分の中だけだから、失敗を繰り返さないように学習できるさ。

なんて無理やり前向きになってみたけど、血を見るときはいつだって傷ついた時だ。

子宮の話は別として、鼻の内側の皮膚も膝も歯茎も傷から出血。

ココロの傷は見えないから、献血でもして傷ついている自分を知りたかったのかも。

きちんと傷つかないと、再生しないから。

ズルすぎるあいつは、自分を守るためにあたしを傷つけてくれなかったから。

 

血は治かもしれない。どっちも「ち」




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