1の1 山道1
イーストを出発してから早数刻、出発するころにはまだほとんど出ていなかった太陽もすでに真上にあった、輝いている太陽は馬車を降り運動がてら歩いている私の体に降り注いでいた。
「マルディット様はずいぶんアウトドア派なんですね」
リィンに変わり馬車の手綱を握っているバーナードが、軽い口調のまま話しかけてきた。
「ええ、国ではよく鉱山の見回りや、町村の治安維持のためのパトロールなどを行っていました、こう見えて私は結構腕に自信があるんですよ。」
私はバーナードの問いに応えながら腰のレイピアと銃を掲げてみせた。
「へぇ、王族自ら・・・。」
バーナードは私の返事に驚いたように片手で頭を掻きむしっている
「ええ、うちの国は人口が減少してる影響もありまして、私のような王族やその親族であっても、一般的な職を持つのが当たり前なんです。」
たしかに私は、ほかの国のような王族のありかたには少しあこがれている、ただ自分には合わないということも認識しているつもりだ、まるで自分の体には王族の血が流れていないそんな気さえする。
「ところでバーナードさんはどうして傭兵家業を? 積み荷のせいりやその確認などの手際を見ていて思ったのですが、普通に商人としてやっていけそうな気もしますが・・・。
今度はバーナードに私は質問した、率直に疑問でもあったからだ。
「あ・・・うーん・・。 なんというか隊長に・・・・。」
「・・・?」
「そう! 隊長に恩義があるからさ」
少し答えに詰まった後、バーナードはそう答えた。
「恩義・・・ですか?」
「そうさ、以前僕の住んでたまちが戦場になってね、その時に命を救ってもらったのさ」
「なるほど」
話しにくそうにしているあたり、本当は思い出したくない案件であるのを私は感じた、少し申し訳ない気持ちになりつつ、私は話題を切り替えるために、彼に質問を再び投げた・
「ところで今日はどこまで進むのでしょうか?」
「ああ、 今日は宿屋街のイルナってところっす。 この大陸は東南部に山岳が集中していて、大都市であるノエルイーストと南部の商業都市フラムウェストとはイルナを通らないとまともに行き来ができないので、冬場以外はいつも行商のであふれかえっている町っすね」
「私たちの旅の行程はどうなっているのでしょうか? およそ一か月の旅路となっていましたが。」
「帝都にはノエルイーストに回ってから向かいます、ノエルイーストまでは二日間でいきますので明日は強行軍です。」
彼の言葉をしっかり覚えるように頭の中で反芻しながら私は聞き続けた。
「そこからは数日に一度くらいしか宿屋街がないので野宿する日も出てきます、マルディット様は野宿大丈夫でしょうか?」
「はい、よくうちの兵士の野営訓練に参加していたのでたぶん大丈夫です。」
「なるほどそれは心強いですね。」
私の答えを聞いて彼は満足そうにうなずくと、すっと前方に向き直った。
「そろそろ坂や日差しが体にきつくなってくるはず、騎士さまやメイドさんと一緒に馬車の中で休んでください。」
彼にそういわれ、私は額に大粒の汗が浮かんでいることに気づいた、話し込んでいて気づかなかったが、この短時間でだいぶ疲労が出てしまったらしい。
「はは、私体力ないですね、鍛えなきゃ。」
「そんなことはないっすよ、マルディットさまみたいに元気な姫様僕は見たことないです。それに余計なまでに体力や力が必要になってないってのは平和ってことでしょう。」
「そうですね、戦時中で会ったらこんなに悠長な生活は送れませんし。」
「ですです、なのであとは僕に任せてしっかり休んでくださいな。」
「はい、そうさせていただきます」
そういって、私はバーナードにお辞儀をした後、馬車の中に乗り込んだ。
山道はまだまだ続く、私の旅はここからが本番だろう。