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夜の訪問者

 タイトルでもっと気を引きたいんですけどねぇ・・・

「宇宙人の侵略は始まっているんです。」


 私はその日家に居た。30過ぎの独身男性の一人暮らしは寂しいものだ。いつものように酒を飲んでいると、ドアから手洗いのノックの音。文句の一つもつけようと思ったら、訪問者の青年は宇宙人のなんちゃらとか言い始める。

 迷惑極まりなかったが、どうせ暇で退屈していたところだ。たまには頭のおかしい奴の大逸れた話を聞くのも悪くない。

 

 そう思って、青年を家に入れて自分の書斎に招いた。青年に、飲み物は酒でいいか。と聞くと震える声で、水でいい。と言う。青年はよっぽど喉が乾いていたようだ。水を出すと直ぐ飲み干した。はあはあと息を切らせている青年を落ち着かせるのに私は少し手間取ったが、青年は静まったように見えると私は話の続きを促した。


 「宇宙人の侵略は始まっているんです。」


 ふん。なんとなく予想していた話の筋。適当に話を合わせるか。

 「ちなみにどこの星の人間なのかね」


 「ポロロッカ星人です」


 少し驚いた。どうせ火星人か金星人、もしかしたらバルタン星人とか来ると思いきや全くそんな単語は知らん。けど、ここで終わってはつまらないし、しばらく泳がせて楽しませてもらおう。


 「そいつらはどんな特徴があるのだね」


 青年はそれからポロロッカ星人なるものの特徴を話し始める。身長や筋力など身体的なことや知能指数とか使っている最新型の兵器、おまけにその星の文化まで喋りやがる。

 よほど設定を練ってきたんだろう。私が意地の悪い細かい質問いくつかを投げかけても、青年はその度、筋が通っている受け答えをした。


 「信じてください。今まで言ったことは本当のことなんですよ」

 「しかしねぇ・・・」

 「考えてみてください。あなたは天動説と地動説、どちらが正しいと思いますか。」

 「・・・あたりまえだが、地動説だ。」

 「では、この場で天動説を否定し、地動説を証明してください。」


 私は口ごもった。何か言おうと思ったが、それが世界の絶対的な法則だからとかしか言いようがない。


 「真実は誰の目から見ても明らかなものもありますが、一握りの天才しか説明できないものもあるんですよ。それ以外の人はそのことを聞かれても、そうだから。としか言えないんです。ですから、あなたが僕の話を信用できなくても仕方ありません。」


 青年のその言葉には嫌に説得力があった。だからと言ってそんな妄言を信じたくはない。私は口元を引きつらせていると、青年はなんとか私の理解を得よう熱弁を再開した。あなたが知らないのは政府に洗脳されているからだ。と。

 しかし、酒で思考力が鈍っても、私の奥底で常識がその論理を拒否する。


 ただの時間の浪費は続いた。


 私も青年も一向に進展のない討論に疲れ果てていたところ、またも、ドンドンとノックが・・・

 私はもう青年の話を聞きたくなかったため、しゃべる青年を無視して、席を立ち、本日二度目の来訪者を迎えた。

 

 「夜分遅くに失礼します。この写真の青年はこちらに来ませんでしたか。」

 

 言葉遣いこそ丁寧だったが、私の酔いを吹っ飛ばすほどの威圧感。体格はまるで戦争に生き延びたようながっしりした大男。高級ブランドの最高品質であろう黒服。鋭い眼光。訪ねてきた人物の特徴はこんなところだろうか。

 私が言葉を失っていると男は同じ質問を繰り返した。私が我に返ると、写真に映っているのはなんと今、家にいる青年ではないか。


 私は男にも逆らいたくないし、青年にも早く出てって欲しいため、男を家に上げた。青年は男を見ると、目を見開き、キッと私を睨んだが、観念したように、男に行くぞ。と言うと観念したのか抵抗すること無く命令に従った。


 男は去り際、ご迷惑をおかけしました。と一緒に残したのは包装された小さな粗品。


 いったい、なんだったのだろうか。意味のわからない話と訳の解らん訪問者達。黒服の男は裏業界の幹部か何かなのか。いや、それにしては丁寧であったしなぁ。身だしなみもきちんとしていたし。

 

 青年も青年で、何かに取り憑かれたように宇宙人の説明は鬼気迫っていた。もしかして、ドラックに手を染めていたのだろか。いや、でも。青年の目は座っていたし、言っている事自体はトンチンカンだったが、真面目な青年なんだろうということは話しているうちに、こちらに伝わった。


 そうそう、男が置いて行ったこの品はなんだろう。綺麗な包みの中から時計の秒針の音がする。ひょっとして中身は値段の高い腕時計・・・


 そうだったらこんな妙な夜もいいかもしれない。私はそう思いながら包を開けた。


 しかし、開けるとそうではなかった。実際時計らしきものは入っているが、映画やマンガで見たような・・・

 

 「これは・・・爆弾か?」


 私の脳はこの時になって高速に動き出した。これは私の口を封じるためか・・・男はやはり組関係ではなく、国の手先だとすると・・・青年の話は・・・


 その時、一人暮らしの男性の部屋から爆音が・・・

 「ポロロッカ星人」は宇宙人の適当な名前が思いつかなかったので、「さよなら絶望先生」から拝借しました。m(__)m

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