なんという神ポジション 2
タイトル納得いかない・・・
次の日起きると部屋にはずいぶん多くの人間が私を囲んでいた。そいつらは私が起きると口々に何か言ってきたが、主人がぴしゃりと全員を抑えると、料理が運ばれてきた。だが、普通の朝食とは程遠い。この寂れかかった旅館のどこから集めたのだろうか。豪華な食品がズラリと並んだ。
そして、食膳を持ってきた仲居たちは昨日の人とは明らかに違う。主に顔が。スタイルが。若さが。そんな美人な仲居たちは私の口に箸を運ぶ係、私の肩を癒す係、私のグラスに酒を注ぐ係、それ以外は私の前で舞を舞う係に配置された。仲居というよりは最早舞妓に近いが。
まるで一国の主のような朝食を取り終わると、私の食事中ずっとひれ伏していた主人が、顔を上げ、
「あの、そろそろ神子様、神事の方をお願いしたいのですが」
私は酒や料理やなどでいい気分だったところに水をさされてむっとした。
「嫌だね。酒が足らん。」
「すみません。すみません。どうかお許しを・・・」
「そうそう。分かったら、早くよこせ。」
私の命令通りに周りの人間は動き出す。私が気分を害したため、女どもがご機嫌取りをする。私が、私が世界の中心にいるようだ。なんとも居心地の良い。私は気持ち悪くなるまで、酒を飲み続けた。
主人のお願いを聞いた頃にはもう日が赤く染まろうとしていた。私が千鳥足のまま部屋から出て神事を行う村の神社につくまでの道中、村人たちは私は見ると、直ぐにはいつくばり、ありがたや、ありがたや、と呪文のように唱える。たまに、握手を求めようとする人間を私を先導する主人が無礼だ。下がれ。と拒む。そんな時、まあまあと私が主人を抑えて、そいつの手を握ってやる。そいつはうれしさのあまり泣き出した。
今度は自分が大名行列の中心の殿様に思え、悦に浸った。
しばらく歩くと神社に着いた。ずいぶんと古ぼけていてなんとも趣きのある場所だ。なぜか、十字架が混ざっているが、そういう文化なのでございます。この村は。と主人が言った。
この地域は閉鎖されているに近いから訳の分からない宗教が生み出されいても不思議はないと私は思った。
「お越しいただいて誠に光栄でございます。神子様。」
「あ・・・ああ。大儀であった。」
神主が土下座で迎えるがその光景に私はもう驚かない。
「どーせ、この紙切れがひらひら着いた棒を適当に振ればいいんだろう。おい、神主。」
「いいえ、神子様に最初にやっていただくことはそれではございません。」
「服を着替えろとか、そんな屁理屈か。」
「いえ、確かに着替えは必要でございますが・・・」
「祭りの主役ならやってやるぞ。酒がまだ足りねぇんだ。」
「そのような事でもありません。」
「じゃあ、何をやれってんだ。あぁ、この・・ハゲ神主」
「神子様にはまず、転生をしていただきます。」
「それから、神事をやれと。」
「左様にございます。神子様はまだ、神の子のままです。正真正銘の神になっていきたいのです。その後神事を行っていただきたいのです。」
「ほぉ。んで。転生とはどういう事だ。」
「神子様の魂を別の場所に移動していただきます。」
「・・・あんだって。」
「神子様の魂を霊界に移動した後、戻っていただくと申し上げたのです。」
「お前、超能力者か、なんかか」
「そういうものでしょうかね。この神社の聖火で神子様のお体を包ませていただきます。」
「はぁ?俺に死ねって言うのか。」
「普通の人間とってはそうですね。ただ、神子様の魂は戻って来ます。」
少し不安が頭をよぎったが、私は神子様。死ぬわけがない。
「ではいきます。」
神主がそう言うと、それを合言葉に主人を含め、付いて来た村の男どもが私の体を持ち上げ少し厚い木の板に縛り付けた。そして、私の両手に杭を打つ。私は悲鳴を我慢出来ない。
「もう少しの辛抱でございます。神子様。」
「ふざけるなぁあああ、神主ぃぃぃいい」
そして、火が放たれた。暑い。熱い。そんな感情しか起こらない。
「神とは死んでから蘇るものですよ。神子様。お帰りを心よりお待ちしています・・・」
そんな神主の言葉が、必死に抵抗しようとする私に聞こえた最後のものだった。
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