いっしょにゴールしようって言ったじゃない!
短編です
はぁ、はぁ、はぁ・・・。
息が苦しい。足が重い。喉が痛い。
マラソンなんて大嫌いだ。苦しいだけで何も徳がない。私は足が速い方じゃないし、運動がそもそも嫌いなのだ。しかし学校という檻は冬になると、学生たちを走らせたがる奇妙な場所だ。
毎年の“マラソン大会”が苦痛で仕方なかった。何が大会だ。マラソン苦行の方がまだわかる。
あぁ、いやだ。マラソン大会に向けて、体育の授業はすべてマラソンになる。ただひたすらに時間いっぱい走らされて、寒いのにジャージを取り上げられて、疲れたからと歩くとなぜか怒られる。
トラックを10周できるまで走り続けなければならない。これが苦行でなくて何だと言うのだろうか。先生が楽をしたいがための授業であるとしか思えない。
でも友人たちは、痩せていて、走るのも苦じゃない様子で、私を置いて走って去って行く。私はいつも周回遅れ、先生には「もっと頑張ろうな」なんて言われるけど、先生、私の限界はココなんです。と言ってしまいたい気持ちに、毎度かられていた。
そんな最中に、少しふっくらした転校生がやってきた。
変な時期に編入するとあって、かなり話題になった。席が私の隣になったことで、少し話すようになると、同じアニメが好きだとか、そんな理由で、私たちはとても仲良くなった。
しかも、彼女、私と一緒で体育が苦手なのだ。マラソン大会の直前に編入してくるなんて、かわいそうにと思ったけど、これでビリを二人で取ることが出来る。そんな少し邪な感情を持っていたのは確かだ。
この年のマラソン大会は、初めて私はビリじゃなかった。始まる前に「一緒にゴールしようね」と約束して、約束通り一緒にゴールした。先生には呆れられたけど、私はもう誰にも後ろ指をさされることは無いと思っていた。
でも、学年が上がると、体型を理由に、彼女を虐める勢力が出てくるようになった。
私は変わらず仲良くしていたけど、幼い子供たちのいじめはかなり残酷で、偶然にも標的じゃなかった私は、彼女を助けることが出来なかった。
いつしか彼女は、卒業を待たずに、転校していってしまった。
私はまた一人ぼっちになった。
数年後、私はほとんど体型も変わらず、相変わらず運動の嫌いなまま成長し、大学では、同じようにふっくらとした友人と仲良く食堂でランチをしていた。体型を気にせず一緒にご飯を食べられる友人が出来てよかった。
すると、食堂に見慣れない美人が入ってきた。
その子は食堂を見回すと、私のいる方に笑顔を向けて歩いてきた。え、誰?
「あの・・・」
「○○小学校に通ってた、□□ちゃん?」
「え、うん・・・」
「あぁ!やっぱり!あの時と変わってない!会えてよかった!」
彼女は私に急にハグしてきて、いい匂いがするな、なんて思っていると、彼女は、あの子の名前を出した。
「私、△△!」
・・・・へぇ!?
あの頃のふっくらとした姿は見る影もなく。身長はあの頃より高くなっていて、服が彼女に合わせているような、そんな美人さんになっていた。
かたや私は、今もあの頃のまま、なんなら、あの頃より、数倍は大きくなってる。食べることにばかり執着していたから、ソレも仕方のないことなのだが。
「あれから私ね、いじめに対抗するために、ずっと一人で走っていたの!私、ずっと□□ちゃんに会いたかったの!!あの時仲良くしてくれてありがとう!!私あの後すぐ転校しちゃって、・・・」
彼女は私を置き去りにして、歓びを語り続ける。私の心にはもやもやとした黒い感情が渦巻いていた。
——いっしょにゴールしようって言ったじゃない!——
一緒にゴールしようねぇ!絶対だよ!!




