第十二話 君、私が持つただ一つのもの
ぱちゃり、ぱちゃりという音が聞こえて、はっと目を覚ました。
額にじっとりとテルの服が張り付いている。
こんな状況で、気絶していた自分に愕然とした。
水音がもうかなり近い。
同時に金属音も着実に大きくなってきている。
追手。
弱音を吐きそうになる自分を叱咤した。
手をついて体を起こそうとするも震える腕はもう思ったように動かない。
近づいてくる明かりがもう、すぐそこに見える。
光の奥に男の人影が揺れている。
シャランと音がして、男の足取りが止まった。
そのカンテラのような明かりが闇に慣れた目にはまぶしすぎて、涙が目に滲んで。
私の覚悟はもう決まっていた。
私はテルの小さな体を強く抱きしめる。
私の体の奥底から、冷え切った体をいじらしく温めようとするように、じわり、じわりと熱が広がっていく。
私がテルに寄りかかっていてはダメだ。
私が。私が守らないと。私以外に誰がルーを守るんだ。
そう、自分に言い聞かせた私は体からそっと手を放し、テルを背にかばって光を見上げた。目の縁の残っていた涙が頬を伝う。
グッとこぶしを握り締める。ギリッと歯を食いしばる。
「わたしの、ルーに―――」
私はけほっと一つ咳をしてから、まばゆい光に目を細めて、ゆっくりとこぶしを構えた。
「手ぇ。出すんじゃねえ!!」
喉奥から声にならない声を漏らして、私はそいつにとびかかった。




